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伊藤美佐季「持つ人を限定するようなストーリーのあるモノが好き」【人気スタイリストの「私がずっと好きなもの」】

今だからこそ考える。丁寧に着ることこそ、サスティナブル!

ファッションのプロは、どんなものを大切にし、そこにどんな考えがあるのだろう? 長く、丁寧に服を着ることは、真の意味でのサスティナブルにもつながる。だから、今こそ考えたい。本当に自分が愛おしいと思うものと、それが教えてくれる、自分らしいスタイルの軸について。


PROFILE

ジュエリーディレクター、スタイリスト。フィレンツェに遊学、帰国後スタイリストに。つける人の個性を生かしたスタイリングは、女性誌のほか多くの女優からも支持が厚い。ジュエリーに関する講演も。マリソルでは、菅野美穂さんのジュエリー連載のスタイリングを担当。著書に『そろそろ、ジュエリーが欲しいと思ったら』(ダイヤモンド社)


これは私のところに来るべきというモノは、瞬時にわかる

ジュエリースタイリストの第一人者として数多くの女性誌を手がけ、大物女優からの指名も後を絶たない伊藤さん。実は、スタイリストとしてのキャリアをスタートしたのは、37歳とかなりの遅咲き。アパレルで会社員をした後、一念発起してフィレンツェに遊学。女性誌の編集者だった光野桃さんと出会い、イタリアンマダムのかっこよさを日本で伝えたいと、手探りで雑誌の仕事を始めた。
「イタリアで、成熟した大人の女性の美しさを目の当たりにして、どうしたらあんなふうになれるのかと憧れて。それが仕事でもプライベートでも、私の表現の軸になっていると思います」。しかし、スタイリストを始めて数年は、"全然普通”な自分が、華やかなファッション業界についていけるか自信がなかったそう。
「“あの人誰?”って思われるんじゃないかと心配で、40歳前後のころは、流行の服を鎧として着ていたこともありました。でも、仕事をしていくうちに、だんだんと装いで頑張る必要はないんじゃないかと思えるようになって。それからは、流行やブランドといったものさしではなく、自分が好きと思えるかどうかでモノを選ぶようになりました」

 伊藤さんが惹かれるのは、完成された美しさが自分の気持ちをグッと引っぱり上げて、心地いい緊張感をもたらしてくれるようなモノ。
「誰にでも似合う、普通のシンプルな服はいらないし、着回しがきく便利な服も好みじゃない。モノのほうが、似合う人を選ぶような存在感があるものが好きなんです。そういうモノには、必ず背景につくり手の想いがあって、モノとしての物語がある。それに私がどうやってめぐり合ったのか、その思い出まで含めて、"ストーリーのあるモノ”が、結局残っていると思います。長くパートナーになるものは、"あ、これは私のところに来るべきものね”とひと目でわかる。だから、絶対的に好きなものは、迷わないですね」



好きなのに、似合わない…年齢の「波」は必ず来る

例えば、女優のティルダ・スウィントンのような、知的で少しマスキュリンな香りのする、成熟した大人の女性像が理想という伊藤さん。しかし、自分が好きなテイストでも、いざ着てみると似合わない……そんな悩みも経験してきた。
「40代半ばくらいから、年齢というすごく大きな波が来て。もともと好みの幅が狭いこともあり、自分に似合うと思えるものが全然見つからず、落ち込んだ時期も何度かありました。でも、そこで歳だからとあきらめるんじゃなく、"じゃあ髪を切ってみよう”とか"友人のアドバイスを聞いてみよう”とか試行錯誤しながら、同じテイストだけれど選び方を変えていく工夫をしてきた気がします」。
いつも仕事をしているモデルの森星さんから、「美佐季さんにはこういうのも似合うんじゃない?」と教えてもらったモードなミュールが、思っていた以上にしっくりきて、おしゃれのバランスが変わるきっかけになったことも。信頼する審美眼をもつ人がくれた、"自分にはない視点”で選んだモノにも挑戦しつつ、たくさんの失敗もしながら、時間をかけて、自分好みのモノを集めてきた。そんな中で、伊藤さんが痛感しているのは、"好きなものは、変わらない”ということ。
「たまに浮気したりもするけれど、やっぱり結局は、好きの軸に戻ってくる。だから、本当に好きなものは"いつか買おう”じゃなく、今買うこと。"こんな素敵なものと過ごせて気分がいいわ”って、使うたびにちょっと幸せに思える。人生で、そんなふうに思えるのが、長ければ長いほどいいですよね」



■ゴールドのバングル

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イタリアンマダムのバングル使いをお手本に

伊藤さんといえばバングルというほどのアイコン的存在。長い時間をかけて少しずつ集めた手もとコレクションは、手前が震災当日に手に入れて以来お守りとしてつけているブシュロンの「セルパン」、ほかの3つはすべて海外で買ったヴィンテージ。「ジュエリーは少し毒のあるデザインが好き」


■セリーヌのジャケットコート

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好きなものの幅が狭いからこそ、気に入ったら色違いで

黒→紺→グレーと、シーズンをまたいで買い足していったというセリーヌの「クロンビー」。「自分好みのデザインで、かつ似合う服って実はほとんど出会えないもの。だから、着てみていいなと思ったものは色違いでそろえていくことも多いですね」


■ロエベのバッグ

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経年変化が楽しみなレザーのカゴバッグはひと目惚れで即決

日本に4個しか入荷しなかったというレザーのカゴバッグは、昨年、ひと目惚れで購入。「これはインテリアにもなるし、アートのようでもあるたたずまいに惹かれて。レザーがアメ色に変わっていくのも楽しみです」


■エルメスの「ケリー」と「コンスタンス」

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数十年ねかせた後、ようやく特別扱いせずふだん着に持てるように

40代前半に手に入れた時は"特別なバッグ"のように思っていたが、使う機会がなく、最近になってようやくバッグのローテーションの仲間としてデイリーに使うように。「特別な日って実はあまりない。好きなものは毎日使うのが一番です」


■ブラミンクのジレ

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ゴージャスにならずデイリーにはおれるジレタイプのファー

昨年出会ったのがリバーシブルのジレ。「ミンク×ムートンでコートの下に着てもいい。ファーについては、いろいろな考え方があるけれど、私は艶と奥行きのある風合いが好きで。パンツに合わせてマニッシュに着ます」

【Marisol8月号2020年掲載】撮影/加藤新作 スタイリスト/中里真理子 構成・文/湯澤実和子 撮影協力/バックグラウンズファクトリー

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