コロナ禍で売上3倍 に!「売れないエシカル」への挑戦状|Forbes JAPAN

従来の経済指標では測れない新しい豊かさとは何か。資本主義や民主主義を問う声が増すなかで、人々が共感できる「新しい価値」が重要になってくる。
この記事は2021年1月27日にForbes JAPAN Webサイトに掲載された記事を一部編集したものです。Marisol ONLINEとForbes JAPANはメディアパートナーとして相互提携を行っています。

人の欲求に寄り添うという意味で社会貢献もビジネスも本質は同じ。営利企業でアパレルブランドを展開し、収益をNPOに回す「循環型ビジネスモデル」が切り開く未来とは。

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筒型のバスケットにエコファーの持ち手。内側から覗くのは色鮮やかな柄の巾着型ポーチ。斬新な素材の組み合わせとモード感あふれるデザインに、思わず足を止めたくなる。ハイブランドやポップカルチャー系の店舗が並ぶ東京・渋谷の「RAYARD MIYASHITA PARK」にあるアパレルブランドCLOUDYの店頭には、そんなバッグや小物が所狭しと並んでいる。

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渋谷「RAYARD MIYASHITAPARK」内にあるポップアップ様式の常設店舗。ブランドのキーカラーの黄色が目を引く。

「おしゃれ」「かわいい」。そう言って手に取る消費者の多くは、これらの商品を買うことがガーナの人々の支援につながるとは想像もしていないだろう。店舗にはアフリカの写真も、エシカルやフェアトレードを謳う商品にありがちな「いいことをしているから買ってください」と支援を呼びかけるメッセージもない。人々の善意に訴えるのではなく、「欲しい」と思わせる商品力でアフリカを支える。これこそが、CLOUDYを率いるDOYA社長・銅冶勇人の狙いだ。
  
CLOUDYは、ファッションを通じてアフリカの課題解決に取り組むブランドだ。2015年にゴールドマン・サックス証券出身の銅冶が立ち上げた。
  
「日本にはまだ、社会貢献に関心がない人のほうが圧倒的に多いです。マーケットのパイは限定的と言わざるをえません。だからこそ、まずはアパレルブランドとして商品を気に入っていただき、買っていただき、その後に『社会的にもいい活動をしているんだ』と気づいていただくことでファンを増やす。このやり方のほうが数字をつくっていけるし、支援の継続性を高めることにつながります」
  
アパレル業界で考えれば普通のことが、「途上国支援」という冠がついた時点で置き去りにされる。そのことに銅冶は疑問を投げかける。
  
初めてのポップアップストアを伊勢丹新宿店のモード服売り場に出したのも、セールや安売りをしないのも、トレンドを反映させたデザインにこだわり「アフリカらしさ」よりも日常への取り入れやすさを重視するのも、すべてビジネス上の計算があってこそだ。

 

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左) エコファーやフェイクスエードなどの素材と組み合わせてデザインされたバッグ。右) 生活に取り入れやすい小物も取り扱う。PCケースのファスナー部分もエコ素材。

その取り組みが的を射ているかどうかは、数字に如実に表れている。新型コロナウイルスの感染拡大でアパレル業界が苦境に立たされるなか、CLOUDYの2020年度の売上高は前年比3倍の伸びを見せた。「メッセージではなく、商品に徹底的にこだわる。この1年で、自分たちの取り組みが間違いじゃなかったと確信できた」と銅冶は胸を張る。
 
ユニークなのは商品だけではない。ビジネスモデルもまた独創性に富んでいる。実は銅冶、営利企業であるDOYAのほかにNPO法人「Doooooooo(ドゥ)」の代表も務めている。営利と非営利を両輪で回す循環型ビジネスを成立させているのだ。
 
具体的にはこうだ。まず、アフリカの女性や障がい者を直接雇用し、ガーナに5カ所ある自社工場で商品をつくってもらう。それをCLOUDYブランドで展開し、売り上げの10%をNPO法人に還元する。

 

その資金を主にガーナの公立学校の建設や健康支援に回すことで、子どもたちの可能性を広げていく。教育を受けた子どもたちは将来、希望すればCLOUDYの工場で働くことができる。そこで生まれた商品をアパレルビジネスとして展開し、数字をつくり、再びNPOの活動資金に充てる。
 
計算されたビジネスモデルのように思えるが、「NPOを始めた当初は、アパレルビジネスをやることになるなんて想像もしていなかった」と銅冶は言う。現場に足を運び、そこで暮らす人たちと対話を重ね、「彼らにとってベストな支援のあり方」を問い続ける──。CLOUDYが生まれた背景には、試行錯誤の日々があった。

 

「持続的な支援」の本質は何か

 
きっかけは大学の卒業旅行で訪れたケニアのスラム街・キベラにあった。悪臭が立ち込める劣悪な環境で暮らす人々。学校も仕事も、満足のいく食事もない。それでも、出会った人たちの顔や手には必死に生きてきた証しが刻まれていた。「この人たちのために、一生をかけて何かやろう」。そう誓った。

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西ガーナのアブイ・チタイ村に学校を建設。学校がなかった同地域だが、NPOの名前にちなんでDoooooooo Schoolと名付けられ、300人を超える子どもが通う。

ゴールドマン・サックス証券に入社し、激しい競争環境下で戦いながらもアフリカの光景が脳裏を離れることはなかった。2010年にNPOを創設し、アフリカに学校をつくるという思いをかたちにしていく。だが、「教育の機会を提供しても、収入を得られなければ生活は良くならない」ことに気づく。それは、途上国支援の本質を学んだ瞬間でもあった。
 
現地の人たちの文化や習慣を生かしつつ、数字を作れるビジネスは何か。その解を探すなかで目に留まったのがミシンを踏む女性たちの姿だった。
 
「布を使ったモノづくりは現地のライフスタイルに根付いているし、ファッション性もある。アパレルビジネスとして、いけるんじゃないかと思った」

 

だが、ここからが想定外の連続だった。そもそも、教育を受ける機会がなかった人たちだ。「布を5cmに切って」と伝えても、モノを測るという感覚が伝わらない。それでも、トレーニングの段階から収入が得られるようにしたい。そこで思いついたのが、無地のTシャツに民族衣装の布で作ったポケットを縫い付けた「AFRICAN PRINT T-SHIRTS」だった。これならオリジナリティがあるし、布を切る練習で生まれた端切れを商品に使うことができる。
 
「とはいえ、最初のころは100枚つくって90枚がダメでしたけどね」

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CLOUDYの原点とも言えるAFRICAN PRINT T-SHIRTSのポケットは、リベリア内戦の難民が暮らす難民キャンプ内の工場でつくられる。一点一点が、手動ミシンを使った手作業。

そう苦笑いする銅冶だが、粘り強く実践を重ね、TシャツはいつしかCLOUDYの看板商品の一つになった。白いカードを文字の形にくりぬき、後ろから端切れを貼った斬新なカードもよく売れた。昨年からは現地調達したアフリカンファブリックのほかに、ガーナ人デザイナーによるオリジナルデザインの生地を商品に取り入れている。

 

「大切なのは、現地の人たちのスキルを考慮したうえで、売れる商品のアイデアを考え抜くことです。売って、数字をつくって、雇用を増やすことが僕たちの本質的な目標なので」
 
本質。それは銅冶が最も大切にしている言葉の一つだ。
 
ここ数年、SDGs(持続可能な開発目標)やサステナブル、エシカルといった言葉が頻繁に取り沙汰されているが、銅冶は「日本では、言葉ばかりが一人歩きしている」と指摘する。
 
「多くの企業や組織が、ビジネスを通して途上国支援をしていることを前面に掲げています。でも、その活動が本当に必要なのか、持続性があるのか、フェアなのか。深く掘り下げてみると、本質をとらえた活動ができている例はとても少ないのが現状です。僕たちは常に本質を追究したい」
 
銅冶の挑戦は社会課題の解決法に対する問いかけであり、エシカル消費やフェアトレードのあり方を含めた旧来型の価値観へのアンチテーゼなのだ。

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消費文化への挑戦を続ける銅冶は「商品をつくる過程で生まれたB品(不良品)のブランドをつくりたい」と構想を語る。

どうや・ゆうと●DOYA代表取締役社長。2008年慶應義塾大学経済学部を卒業。ゴールドマン・サックス証券に入社し、2010年にNPO法人Dooooooooを設立。2015年にDOYAを設立。

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