フェンディ家3代目女性当主が挑むイノベーションとは|Forbes JAPAN

新たなブランドバリューを打ち出す、フェンディ家3代目のシルヴィア・フェンディにインタビュー
この記事は2021年2月13日にForbes JAPAN Webサイトに掲載された記事を一部編集したものです。Marisol ONLINEとForbes JAPANはメディアパートナーとして相互提携を行っています。
シルヴィア・フェンディ
シルヴィア・フェンディ

2025年に創業100周年を迎えようとしているフェンディ。Nothing is impossible(不可能はない)をモットーに掲げて進化し続けるブランドは、ファッションの新しいFun(楽しさ)を教えてくれるようだ。

そしてそのFunをLuxury(贅沢)な体験に昇華させるのが、エキサイティングなクリエイティビティを確かな品質で裏打ちする、イタリア・ローマに受け継がれてきたCraftsmanship(職人技)だ。

創業者の孫にして3代目当主のシルヴィア・フェンディはそうしたブランドの強みを受け継ぎながら、新たにブランドバリューを打ち出した。FRIENDSHIP(友情)、CRAFTSMANSHIP(クラフツマンシップ)、FAMILY(家族)、DARING CREATIVITY(唯一無二な創造力)の4要素の紐解きに重ねながら、彼女が率いるイノベーションへの道について聞いた。

フェンディ家2代目を率いた5人姉妹と故カール・ラガーフェルド(中央)。
フェンディ家2代目を率いた5人姉妹と故カール・ラガーフェルド(中央)。

──昨年、カール・ラガーフェルドというファッション界の巨星を失ったことは、ショッキングな出来事でした。

1965年にフェンディのデザイナーに就任した当時、彼はまだ無名の若者でした。でも鉛筆を手に、白紙の上にあっという間に見たことのないようなデザインを描いていく様は、まるで魔法使いかと思ったわ。彼は気難し屋と思われていたけれど、優しかった。一緒に過ごした仕事以外の時間も、美しい思い出になっています。

──世界はコロナ禍に見舞われていますが、何をし、何を考えましたか?

3カ月間を自分のためだけに使って、心の要求や感情に耳を傾けました。母や友人たちが無事だとわかると、仕事にも向き合いました。そして2021年春夏コレクションが生まれたの。いまは物事を違った観点から見て、ポジティブな進化を遂げる絶好の機会だと思っています。

私たちはこれまでもさまざまな変化を受け入れ、チャンスとしてきました。今後は、例えばファッションのペースをスローダウンさせることもあると思う。きっと健全な状況を生み出すことにつながると思うわ。

ファーの職人技とグラフィティアートの融合を試みた「FENDI CraFF」展の様子
ファーの職人技とグラフィティアートの融合を試みた「FENDI CraFF」展の様子

──フェンディ家3代目として、自身にどんな強みがあると考えますか?

人は生まれた環境から学びます。娘のデルフィナ・デレトレズはジュエリーデザイナーとして抜群のセンスをもっていて、どんどん成長しています。私もそうでしたが、クリエイティビティが遺伝子の中に組み込まれているのでしょう。

 

──特に尊重するフェンディ家の伝統は何でしょうか?

カールがデザインしたFFロゴが「Fun Fur」を意味することをご存じ? ファッションはFun(喜び)と結びついています。軽快さをもって喜びにアプローチすること、それがFunを生み出すのです。それに、人はファッションを通じて深刻な問題も快活に語ることができるようになります。遊び心をもって、あまり真剣に考えつめずにもっと気軽に生きよう―私はそんな考え方を受け継いでいます。

デジタルプラットフォーム「F IS FOR...」によるアート企画「THE RING OF THE FUTURE」
デジタルプラットフォーム「F IS FOR...」によるアート企画「THE RING OF THE FUTURE」

──シルヴィアさんが新たに取り組んだチャレンジとは何でしょうか?

フェンディでは創業当初から女性が先頭に立ってきました。私のスタジオも男女の比率は1対9。これは重要なことよ。ファッション業界はずっと男性に支配されてきたから。コレクションでは年を重ねたモデルや有色人種のモデルを起用するなど、多様性を重視してきました。みんなを既成概念から解放したかったの。

──フェンディはローマの景観復興に尽力しています。なぜでしょうか?

フェンディはローマ。ローマはフェンディ。私たちは地理的にも文化的にも、ローマにルーツをもっていることをとても誇りに思っています。ブランドの核ともいうべき唯一無二の価値や、尽きることのないインスピレーション源、文化的な刺激が絶えずそこにあるのです。私たちを育ててくれた歴史的・芸術的遺産の継続的保存に関与することで、愛する永遠の都に恩返しをすることはごく自然な流れでした。

ローマのイタリア文明宮に置かれるフェンディ本社
ローマのイタリア文明宮に置かれるフェンディ本社

──フェンディが「クラフツマンシップ」に加えて「唯一無二な創造力」に注力する理由はなんでしょうか?

私は状況が困難なほど、チャレンジする意欲が湧いてきます。例えば職人と仕事をしていて、彼らが「ノー。できません」と言うとき。そんなときこそ、私は「このノーをイエスにしなくては!」と言うのです。「Nothing is impossible(不可能はない)」がモットーなのですから。

探求心や情熱を、デザインやインテリアなどほかの分野のアーティストと共有することはとても刺激的です。誰も見たことがないような新しいものを創造し、人々に夢や驚きをもたらしたいと思っています。

フェンディ家3代目女性当主が挑むイノベーションとは|Forbes JAPAN_1_6
●左/都会的でラグジュアリーなビジネスバッグとしても使える、フェンディらしい遊び心がちりばめられた「PEEKABOO」バッグ。 ●右/クロスボディやクラッチなど、さまざまな持ち方ができる「BAGUETTE」バッグ。機能性を追求したデザインが特徴で、リサイクルナイロンを使用したサステナブルな新作も登場した。

 

シルヴィア・フェンディ

フェンディ創業家3代目。フェンディを統括するディレクターを務める。1987年にFENDISSIMEラインのクリエイティブディレクターに就任。94年にレザーグッズの責任者に。97年には大ヒット商品「BAGUETTE」バッグを発表し、数々のアワードを受賞する。

text by Shigekazu Ohno (lefthands)
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