我慢して働く時代は終わった! 『転職2.0』のススメ【前編】 |Forbes JAPAN

「日本型雇用の終焉」により、我慢をしながら働く時代は終わった──。ヤフーの元執行役員で、世界最大級のビジネス特化型ソーシャル・ネットワーキング・サービス「リンクトイン」の日本代表を務める村上臣が、新たなキャリアの常識を定義しようとしている。エール株式会社取締役の篠田真貴子氏との対談で語った。
この記事は2021年4月3日にForbes JAPAN Webサイトに掲載された記事を一部編集したものです。Marisol ONLINEとForbes JAPANはメディアパートナーとして相互提携を行っています。
エール取締役 篠田真貴子(左)、リンクトイン日本代表 村上臣(右)
エール取締役 篠田真貴子(左)、リンクトイン日本代表 村上臣(右)

モバイルの第一人者として第一線で活躍、その後2017年末に、村上は国内不振が囁かれていたリンクトインにジョイン。40歳にして異業種、初めての外資企業に足を踏み入れながらも、カントリーマネージャーとして雇用の流動性を高め、「自分のキャリアは自分で築く」ことを提唱してきた。

 

4月発売の自著『転職2.0』では、やりがい、年収、人間関係の全てを手に入れて、我慢しない働き方を勝ち取るために必要な、体系的メソッドを詳細に解説。キャリアは人生の延長線上にあることを前提に、自身の市場価値を高め、理想の転職を実現するために必要なステップが書かれた本書は、行動に落とし込みやすいのが特徴だ。

 

まさに、自身のスキルでキャリアを築き上げた一流のジェネラリストである村上は、これからの転職をどう見据えるのか。マッキンゼー、ネスレなど一流企業での転職を経験し、自身のキャリアと常に向き合い続け日本では珍しい「ジョブレス」の期間も設けた後、現在はエール取締役を務める篠田真貴子と対談した。

 

  

──このタイミングでのご出版、どのような背景があったのでしょうか?

 

村上:“ジョブ型雇用” というキーワードが、昨年頃から話題に登り始めているのは実感していました。それに相まって、コロナ禍であったことは大きかったですね。個人的な理由ですが、リモートワークのおかげで時間ができたんです。

 

リンクトイン日本代表 村上臣
リンクトイン日本代表 村上臣

──タイトルの転職2.0には、どのような意味が込められているのでしょうか。

 

村上:なぜ2.0なのかと思う方もいると思います。4.0くらいでもいいのではないかと。

 

しかし今、人の流動性が強制的に高まってきているちょうど渦中にいます。コロナの影響で、転職の在り方は変わってきました。一方で、リンクトイン経由で学生の方々から就活の相談をもらっていて気がついたのは、やはり就社意識が若い世代の間でも強く根付いているということ。

 

これが根本的に違うのではないかとしっかり伝える必要がありました。加えて、転職本というのは今まで、精神論みたいなものが多かったんですね。誰しもが行動に移せるような、メソッドとして体系立った実践本みたいなものを作れば、お役に立てるのかなと思って本を書くことにしたんです。

  

──最近は転職もキャリア形成の一環のように捉えられてきています。転職2.0、もしくは新しい時代の転職は、お二人であればどうリフレーズされますか?

 

村上:実は転職2.0というタイトルはすごく迷いました。色んな言い方ができると思いますが、今ここで「就社」が終わるタイミングでしょう。リフレーズするのであれば、 “日本型雇用の終焉”。そこから新しい世界が始まるという、コントラストがあるように見えます。

 

篠田:転職は “関係性のフラット化”と言えるのではないでしょうか。以前は仕事と自分の関係性、あるいは会社と自分の関係性において会社側に圧倒的に力があってそこに委ねる。そして正しい委ね先を探すというのが過去でした。

 

それが、お互いの構えとしてどんどんフラットになってきています。もはやフラットであるという前提の企業も出てきました。転職はその現れの一つであって、会社選びから入社するときも常にフラットな関係であるということ。リンクトイン創業者のリード・ホフマンさんのアライアンスでも言及されていますね。

 

村上:組織と個人の関係をフェアにするという言い方もできるかもしれないですね。

 

今回のインタビュー対談の様子
今回のインタビュー対談の様子

──採用活動において、その人のコアな部分を引き出す、あるいは余白を見出すためには、従来の面接やレジュメ以外にどんな要素が必要になってくるでしょうか?

 

村上:本にも書きましたが、やはり人との繋がり、ネットワークを自分の周りにしっかり作っておくことですね。仕事において、必要な弱いつながりをしっかりと作っておくということはかなり重要かなと思っています。

 

面接やそのときの限られた時間で、人を見るというのは意外と大変なんです。カルチャーフィットと言われますが、企業自体も人となりを伝えていかなければいけない。そのマッチングが転職なんですね。

 

そうなるとお互いがカジュアルに意見交換をしたり、もしくは社員を通じて様々な形で接点を持ったりすることが必要になります。実は私がリンクトイン入ったのも、10年来の知り合いとのやりとりが年に2〜3回あったんですよ。 “ヤフーの村上” に日本のプロダクトはどうすればいいという相談をいつも受けていました。一度ランチしようと誘われて、日本に来る度にお会いする関係性でした。

 

そこからカントリーマネージャーの件で、声をかけていただいたんです。もちろんリンクトインの存在は知っていたし、社員の方とも何度も話していい会社だなと思っていたので、必要なのはそういったゆるい繋がり。アライアンスですね。

 

篠田: まさにそうですね。私自身も、エールに入った直接のきっかけはビジネス友達的な付き合いからです。いつか転職に役立つと思っていたわけではなく、普通に楽しくおしゃべりをし、意見交換をしたり、最近この本が面白くてみたいな話をしあったりする間柄でした。

 

質問についてですが、採用する側もされる側も、本当の意味で自分の本音とかコアな部分って意外とわからないんですよ。自問自答してもわかりません。そこで臣さんがおっしゃっている人脈って、単に人のつながり以上の意味を成してきます。

 

例えば、ある会社に勤めていてその中で壁にぶつかったり、嬉しいことがあったりしたときに、それを全然文脈の違う外部の人に話してみたり、聞いてもらったりすることで、自分の会社の特徴、長所や短所まで見えてくるというのがとても大事だと思います。これは採用する側も同じように、個性、カルチャーって何というところを表出するような努力が双方にあるべきだと思います。

 

仕事と面接は別物なので、面接だけでは無理です。弊社ですと、業務委託という形をフル活用していて、あらゆるところで業務委託を活用しています。

 

わかりやすい例だと、メガベンチャー執行役員の方がセールスのフロントでバリバリ働いています。深く関わって一緒に仕事した期間が一定あると、単発の出会いでは難しい、言語化、表出ができて、そこからお互い納得してより深いコミットをする。それがお互い自然かなというのを体感しています。

 

 

「自分の人生の中のキャリア」が基軸

 

──お二人が転職活動をするときには、どういった機軸を大切にされていましたか。また、これからの時代、キャリアアップ以外に何が転職の基軸になり得るでしょうか?

 

村上:私自身、いわゆる転職をしたのは2回程です。そのとき考えていたのは、自分が楽しいこととか世の中が変わっていくタイミングのところで、自分の持っているスキルを使って貢献したい、社会が変わるところにいたいという思いです。

 

ヤフーを辞めたのは、自分が見たい景色が見えたからです。皆がスマートフォンで、常時インターネットが手のひらにあるという景色。90年代に夢みたところが、実現されたんですね。次何するかを考えたときに、もうこの延長線上にはないと気づいたんです。今後を考えていて、グローバル企業はどんどん強くなると思っていたので、合う合わないは別にして、一度グローバル企業の中に入ってマネジメントの仕方を見てみたくて。

そのときにちょうど現職の話が出て。リンクトインは、基本的には人材の会社で全然異業種なんです。当時そのマーケットはあまり見ていませんでした。

 

ただ、働き方改革と言われるなか、雇用流動性を上げていくことができるリンクトインは、実は結構すごいのかなと思いました。そこで、本社の社員と20人以上話しを聞いたところ、素晴らしいビジョンとミッションを持ってやっていて、働いている人もすごくいい人で、これは面白そうだなと。

 

極め付けは、最後にCEOから話したいとサンフランシスコに呼ばれ、1時間半くらい話したときです。そのときまだオファーの話とかなかったんですが、話していたら、意気投合して、もうやりたくなってしまいました。

 

彼にはオファーを受ける以前に、「You’re the country manager」と言われて、ヤフーもいい会社ですし仲間もいるので、かなり悩みましたが、コンフォートゾーンを出ないといけないと感じていました。楽しているし、やりたいことも実現してきたから、初めての外資転職という大ジャンプをしてみる。50代だったらできないですから。ちょうど40になるところで、今なら必死にやればなんとかなるかなというところが、転職の軸でした。

 

エール取締役 篠田真貴子
エール取締役 篠田真貴子

篠田:転職の軸でいうと、能動的な転職だけではなく、会社の都合で押し出されたりという受動的なものもあるので、判断軸は都度変わっていきます。

 

自分がどこに身を置くと楽しいかという軸はもちろんありますが、何が楽しいかというのはちょっと意識しづらいですよね。私は、好きなことドリブンでは必ずしもなくて。ただ「これは嫌だ」というのにはアンテナが立ってまして、嫌なものを避けるという観点はあります。閉塞感があるからこそ、違うものを試したいという原動力になりますよね。

 

もう一つは、私の場合は子供が2人いて、子供たちが保育園児だった頃は仕事と子育てと個人のことというのがどうにも24時間に収まらなくて、結構辛かったんです。自分の好きなことと仕事が多少重なることへの欲求が上がったんですよね。キャリアの軸というよりも、人生の中のキャリアなので、ライフステージがどうであるかとか、何が大事かということによって変わっていいんだと思う。

昭和的な価値観で、何を置いても仕事第一、家族を優先する時点で失格、という会社ばかりかといえば、そうではない。「自分の人生の中のキャリア」が軸だと思います。

今回エールに入るにあたって、ほぼ日を卒業させてもらったのが50歳だったんです。新しい会社は自分よりうんと若い方が経営している会社で働きたかった。

 

この先20年とか25年くらいは仕事はできるし、したいんです。どんな会社でも、創業時の時代の空気みたいなものがその組織風土に必ず入っています。色んな意味で環境は変わり続けるので、ここ5年でできた会社、というところに身を置きたかった。

 

あとはやっぱり、私より年下の方が経営している会社では無意識に選択したことの集積が未来を作っていくわけなので、それを私は学ばせてもらいたいなと思っていたんです。

 

(続く)

*後編は、5/8(土)公開予定です

 

文=初見真菜 構成・編集=谷本有香
Forbes JAPAN 編集部

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1917年にアメリカで創刊したビジネス誌「Forbes」の日本版として、
2014年6月より「フォーブス ジャパン」と題し新創刊しました。(世界38カ国にてライセンス版を刊行)。「世界から日本に、日本を世界へ」をテーマに、グローバルな視点を持つ読者たちに向け、フォーブス本国版、各国版の記事をキュレーションし、日本オリジナル記事と共に構成。ビジネス、経済、投資、アントレプレナー、ランキングの記事を掲載していきます。フォーブスが取り上げる人物の人生には必ずストーリーがあり、そのストーリーから「未来を切り開くメッセージ」を読者へ届けます。

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