入社後1年出社なし?!アマゾン事業部長が実践するリモートワークのマネジメント|Forbes JAPAN

米アマゾンの日本人事業部長が、リモートワーク下でのマネジメント術をご紹介。
この記事は2021年4月10日にForbes JAPAN Webサイトに掲載された記事を一部編集したものです。Marisol ONLINEとForbes JAPANはメディアパートナーとして相互提携を行っています。

新年度が始まり1ヵ月経ちました。昨年に引き続き、新入社員の皆さんの中には、リモートワーク真っ只中で入社された方も多いのではないでしょうか。

 

私が勤める米アマゾンでも、着任直後の2020年3月から、ほぼ全社員を対象にリモートワークに移行。1年が経った今でもフルリモートワークは継続しています。現時点では、今年の7月から出社が段階的に再開される予定です。

 

この間、私は日本や米国に身をおきながら、事業部長として各地に点在するチームをまとめ、新しい仲間を迎えてきました。パンデミック以前と比べると、イノベーションやコミュニケーションの点で課題を感じる部分はありますが、反対に、リモートワークには、場所や時間を問わない柔軟な働き方が実現でき、より快適に、効率的に働けるというメリットも感じています。

 

そこで今回は、私がこの1年間で実践してきた、リモートワーク下でのマネジメントのポイントをご紹介します。

 

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コーヒーチャットで非公式のコミュニケーションを増やす

 

リモートワークで感じる課題のひとつに、社員間でのコミュニケーションの希薄化が挙げられます。出社していた時には、給湯室や社員食堂などで他部署の人と話す機会や、趣味や家族のことなどを話す時間がありましたが、リモートワーク中には、ともすれば必要最低限の業務連絡にとどまりがちです。

 

そこで、私が働く部署では、毎週コーヒーチャットやワインデーを設けて、軽食やお酒を交えながら、趣味や最近気になるニュースなどの話で盛り上がるカジュアルな会を開催しています。

  

ポイントは、任意参加であることと勤務時間内に行うこと。強制ではありませんが、毎回コーヒーチャットは5名ほど、ワインデーには20〜30名が参加し、息抜き、非公式なコミュニケーションの場として好評です。

 

また、全員が参加する定例ミーティングでは、冒頭に5分ほどのゲームを導入しています。最近では、メンバーに本人が写っているが誰だか分かりにくい写真を用意してもらい、それが誰なのかを当てるゲームが人気です。四半期ごとに集計し、正解が多かった人には景品を用意しています。

 

非公式のコミュニケーションは、すぐに仕事の成果に繋がらずとも、長期的な視点に立ったときに組織の足腰を強くしてくれます。

 

効率化とは逆行するようにみえますが、たまには「最近どう?」という他愛もないチャットを送ることもオススメです。

 

「ノーミーティングデー」や「オフィスアワー」で時間への感度を高める

 

アマゾンのミーティングは、30分が基本です。「とりあえずこの人も加えて、話を聞いておいてもらおう」という考えはなく、必要なメンバーに厳選して効率よく進めます。リモートワークに移行してからも、この基本は変わりません。

 

私は1日に、少ない日には2〜3の、多い日には10ほどのミーティングに参加しています。30分ごとに頭を切り替えるのは、物理的にも心理的にもハードなため、30分の会議は5分早く切り上げるのがポイントです。たったの5分ですが、セットアップやリフレッシュの時間をつくるといった、相手の時間に対する配慮を心がけています。

 

こうしてミーティングに1日を費やしていると、自分自身の時間の確保ができなかったり、次第にクリエイティブな発想が生まれにくくなったりしてしまうのですが、それを避けるために、私が働く部署では、水曜日の午前中と金曜日の午後を「ノーミーティングデー」とし、会議を一切入れない時間をつくっています。リモートワークならではのリラックスできる環境下で、それぞれが作業に集中したり、ゆっくり考えを深めたりする時間として重宝しています。

  

また、仕事中に分からないことがあった場合、気軽に質問ができる人の存在はありがたいのですが、質問を受ける立場からすると、都度自身の業務の手を止めなければならないため、ときに自分の仕事の妨げになることもあるでしょう。

 

アマゾンには「オフィスアワー」という時間が、ファイナンスやマーケティングなどの各分野ごとに設けられており、不明なことがあれば、その分野のオフィスアワー内に個別で質問することができます。オフィスアワーの活用が習慣づけられると、オフィスアワー外に、誰かの時間をむやみに奪うことはありません。

 

反対に、誰に聞いたら良いかが明確なので、質問のタイミングや誰に聞いたら良いかが分からず結局聞けないままという状況を防ぐというメリットもあります。

 

その他、時差のあるメンバーには時間指定ができる予約送信機能を使ってメールを送るなど、相手の時間への感度を上げることは、リモートワークで特に気にしていることのひとつです。

 

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顔出し推奨とチャットの活用で、オンラインミーティングを快適に

 

私が働く部署では、少人数(10人以下など)のオンラインミーティングでは顔出しを推奨しています。国際色豊かなメンバーで、母国語も異なるため、顔が見えた方がコミュニケーションが円滑に進むというのもありますが、表情や仕草のような非言語コミュニケーションの重要性を感じていることも大きな理由です。

 

部屋を見せたくない時には背景画像を設定するなどの工夫をし、できるだけビデオオンを推奨していますが、それぞれの状況を考慮し、メンバーに無理強いはしないようにしています。

 

また、チャットボックスの活用はオンラインミーティングを快適に進める手段のひとつです。対面でのミーティングに比べると、オンラインミーティングは議論が活発化している最中にカットインするハードルが高まります。そのため、質問や提案は、誰でも思い浮かんだときにチャットボックスに書き込めるよう、私自身も積極的に活用しています。

 

文字情報によるコミュニケーションも活用することで、意見を出すハードルが下がり、より多くの意見を拾うことが可能になりました。個人的には、英語で議論が白熱するとカットインが難しい場合も多いので、書き言葉で伝えたいメッセージを補強できることでとても助かっています。

 

「リモートワーク」をうまく活用できることが、これからの強みになる

 

米アマゾンでは今年の7月から段階的に出社を再開する予定です。しかし、それは必ずしも元通りがベストというわけではなく、リモートワークを1年間体験したことで感じたメリットもありました。

 

例えば、より多様で柔軟な働き方が実現したこと。

 

アマゾンは完全フレックスタイム制を採用しており、始業と終業の時間は決まっていないため、住んでいる地域や家族構成、集中できる時間の違いなどによって、自分で働く時間を決めることができます。

 

「リモートワークは勤怠管理が難しい」という意見をよく聞きますが、働く時間がそのまま成果に繋がる仕事ではないので、私はメンバーのインプットとアウトプットの双方にフォーカスして仕事をみるようにしています。この点において、リモートワーク下の方がインプットとアウトプットを把握しやすくなりました。

 

メンバーの仕事の進め方の特徴や働き方、コミュニケーションツールの好み(ビデオ通話、メール、チャット等)なども、リモートワークを通して、より理解できたように思います。

 

 

もちろん、イノベーションを生み出す等、直接会うことが大事な局面もあると思いますが、それ以上に、移動時間の短縮など時間を有意義に使えるほか、ロケーションの制約がなくなり多様性を包容しやすくなるというメリットも感じています。

 

今後、出社が再開したとしても、育児や介護、入院などさまざまなライフステージに合わせて「リモートワークができる」という選択肢をもっていることは、組織として大きな強みになるでしょう。

 

上記のポイントは、個々の社員が実践に努めるよりも、経営者、マネージャーがリーダーシップを発揮して組織的に仕組み化してこそ効果が出るものです。リモートワーク中にコミュニケーションが少なくなった、アイディアが出にくくなった、と感じている経営者、マネージャーの方は、ぜひこれらの視点を取り入れてみてください。

 

文=伊藤みさき 構成=竹崎孝二
竹崎孝二

竹崎孝二

米Amazon本社 シニアベンダーマネージャー(事業部長)
日本人の可能性を世界へ広げることを志向して、総務省(地方自治)、Panasonic North America等を経て、2020年2月よりシアトルの米Amazon本社にてシニアベンダーマネージャー(事業部長)。米Amazon本社での年間MVP受賞をはじめ、社内表彰多数。TOEFL iBT 34点(TOEIC 330点相当)からスタートの非ネイティブ。2006年東京大学経済学部卒、2014年University of California San Diego MBA修了。元ロータリー国際親善奨学生、Seattle 4 Rotary Club所属
※サイト内での全てのコラムはあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。

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