子どもや部下を成功者に育てる!ゴッドマザーの「教育5カ条」|Forbes JAPAN

イーロン・マスクの母親やスティーブ・ジョブズの妻が絶賛しているという、”シリコンバレーのゴッドマザー”エスター・ウォジスキーの教育法とは。
この記事は2021年5月20日にForbes JAPAN Webサイトに掲載された記事を一部編集したものです。Marisol ONLINEとForbes JAPANはメディアパートナーとして相互提携を行っています。
エスター・ウォジスキー(Jamie McCarthy/Getty Images)
エスター・ウォジスキー(Jamie McCarthy/Getty Images)

「親の顔が見てみたい」というのは、呆れた育て方を非難するときに使う言葉だが、その逆のパターンをシェアしたら、世界は少しばかり良くなるかもしれない。イーロン・マスクの母親であるメイ・マスクや、スティーブ・ジョブズの妻ローレン・パウエルが絶賛しているのが、シリコンバレーのゴッドマザーと呼ばれるエスター・ウォジスキーの教育法である。
 
エスターの長女スーザンはYouTubeのCEO。言うまでもなく、セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジの才能を見抜き、彼女が貸した自宅ガレージがGoogleのオフィスであった(のちにスーザンはGoogleの広告事業上級副社長に)。エスターの次女ジャネットはカリフォルニア大学医学部准教授、三女アンはGoogle創業者のセルゲイ・ブリンと結婚し、世界が注目する遺伝子検査のバイオベンチャー23andMe創業者である。
 
この3人の娘たちの母エスターはジャーナリズム講座を受け持つ高校教師だ。彼女が教育者として編み出したのが “TRICK”という教育法で、これはスティーブ・ジョブズ親子も受講している。では、この“TRICK”とはどう意味なのか。エスターの著書『TRICK スティーブ・ジョブズを教えYouTubeCEOを育てたシリコンバレーのゴッドマザーによる世界一の教育法』の翻訳を手掛けた関 美和氏がエスターにインタビューを行った。

 

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──あなたは子育ての第一のゴールを「なるべく早く自立できるような教育をする」ことにしていたそうですが、「早く自立」をさせるにはどうしたらよいのですか?
 
まず、信頼が何を生み出すかをお話します。私は3人の娘たちのことを、生まれた瞬間から信頼していました。なぜなら、赤ちゃんは赤ちゃんなりに、親の一挙一動をじっと観察して学んでいると感じたからです。大人が考えるより幼い子どもは賢いし、周囲のことをよく察知しています。
 
例えば、現在YouTubeでCEOを務める長女スーザンは2歳にして母親のような役回りを率先して行い、生まれたばかりの妹ジャネットのお守り役を買って出てくれました。おもちゃを片付けたり、布おむつを畳んだり、泣いている妹をあやしたりして、忙しい私を助けてくれたのです。「本当に助かるわ」「ありがとう」との言葉をいつも伝えていたので、スーザンは自分のやっていることに誇りを持ち、心理的にも満たされていたようです。
 
次女ジャネットは、1歳1カ月にしてプールの端から端までひとりで泳げるようになったし、三女のアンも3歳にしてスケートリンクを滑っていました。また、幼い娘たちだけで近所にどんどん買い物に行かせてました。彼女らの力を信じて認めてあげること、そして信頼を親が言葉と行動で示すこと。子どもたちが一番望んでいるものはその二つだからです。

 

左から、三女アン、次女ジャネット、エスター、長女スーザン(Taylor Hill/Getty Images)
左から、三女アン、次女ジャネット、エスター、長女スーザン(Taylor Hill/Getty Images)

──自分の弱みや足りないところもあえてさらけ出すことが大切とのことですが、それが「信頼関係」を築くこととどう関係があるのでしょうか。
 
パロアルト高校でジャーナリズムを担当する駆け出し教師だった頃のことです。グループワークを行い、活発におしゃべりをする私の授業スタイルを校長先生から咎められ、クビになりかけたことがありました。でも私はそれがどうしても正しいと思えなくて。
 
そんな自分の胸のうちを、正直に生徒たちに伝えました。すると彼らは私の悩みを理解し、校長先生が来た時だけピタッと静かにしてくれました。弱みを打ち明けたからこそ、生徒は私に協力してくれたのです。
 
──信頼する姿勢が強い協力関係を生むということですか?
 
そうです。私は恥ずかしげもなく、いつも自分の弱さをさらけ出していました。助けが必要な時は「助けて」と正直に言いました。そして常に、新しいことに挑戦しようという意欲を持ち続けていました。人生には「自分にはできる」というマインドセットがとても大切だと思います。巡ってきたチャンスに「挑戦しよう」と決めたら、私たちは何だってできるのです。
 
──“TRICK”を企業の人材育成にも応用されているそうですが、職場に導入するためには、どうすればよいでしょうか。
 
リモートワークが増えて、どうやって職場のメンバーと信頼関係をつくればよいかという悩みは多く寄せられます。ですが、家で働いている人たちを管理するというのは実際には不可能です。けれど、だからといって相手を疑い、尊重せず、感謝もしなかったら、かえってマイクロマネジメントが必要な事態になります。
 
私が一番にアドバイスするのは“Trust”(信頼)です。信頼したら、自分にだけ責任が押し付けられるのはないかと恐れる人がいますが、プロダクトにフォーカスし、時間の使い方は個々人に任せればいいのです。メンバーのことを信頼し、尊重し、感謝の気持ちをきちんと伝えれば、彼らはとても熱心に働いてくれるでしょう。日本でもこうした考えを広めることが最初の第一歩だと思います。
 
──三女のアンは「イエール大学を卒業してベビーシッターになる」と言い出したそうですが、それはなぜ?
 
私の娘たちは大学を卒業した時点で、誰一人として仕事が決まっていませんでした。長女のスーザンも卒業後はしばらく家に戻っていましたが、「何をすればいいかわからないからインドに行く」と言い出しました。何のあてもなくインドに渡り、現地で仕事を見つけて1年以上滞在しました。
 
私は娘たちの成績や進路の選択に口を出したことは一度もありません。幸い、3人とも悪い成績ではありませんでしたが、全てがAだったわけではありません。人生は一直線ではありません。頂上にたどり着くには、ぐるぐると回り道があって当然なのです。

 

──そうやって子どもたちを信頼し、尊重しつつ、一方で高いレベルの期待を押し付けることなく示すには、どのようにすればよいのでしょうか。
 
私は習い事でも何でも、「好きか嫌いかわかるまで挑戦しなさい。1回で辞めてはダメ」といつも娘たちに言っていました。また、書く力をつけるために、日記を毎日付けるように言っていたのですが、それを何度も書き直しさせていました。 
 
私の哲学は、学び方や学ぶスピードは人それぞれ違うけれど、あきらめずに挑戦し続けている人が、最後は成功するということ。できなくても失敗しても再び挑戦することこそ、あなたが成長できる貴重な機会だと、子どもたちに伝え続けることが大切です。
 
──本の中にも登場する「タイガーマザー」(中国式のスパルタ教育の子育てを描いたイエール大学エイミー・チュア教授の著書)ではないものの、一般的にアジアの親は過干渉の傾向があり、信頼や尊重の大切さをわかっていても実行するのは難しいと感じます。
 
“The less you do, the more they do.”(手をかけないほど、子どもたちは自らの力でやる)。
 
まずは小さなステップから始めて、彼らを信頼し、任せてみることです。
 
学校では100%言われたことをやらなければいけません。毎日決まった時間割で、決まった先生の授業を受けること以外、選択肢がないからです。でも子どもたちにとって一番大事なのは、大人にコントロールされないこと。だから20%の時間は、子どもの自由な意思で使わせてみてはどうでしょうか。
 
これは日本だけの問題ではありません。学校ではまるでサイロのように、何をどのように教えるべきかが教科ごとに決められていて、皆に同じスキルを身につけさせ、標準的な市民を生み出してきました。20世紀まではそれが機能していましたが、今はクリエイティブであることが求められています。
 
それにはこれまでのようなやり方はもう通用しません。むしろ、失敗したり、はみ出たりするくらいの方がいい。これからの時代に必要なのは標準化されたスキルではなく、4つのCの力(Creativity[創造性]、Communication[コミュニケーション]、Critical thinking[批判的思考]、Collaboration[協働] )を身につけることなのです。

 

──日本は男女平等には程遠く、ジェンダーギャップ指数は世界的にも極めて低い状況です。このような中で働く日本の女性たちにメッセージをお願いできますか。
 
アメリカでもまだ女性たちは戦っています。スーザンはYouTubeのCEOですが、男性社会の中で先頭に立つ苦労をしてきているし、アンはウォールストリートで働いていた頃、何百人もの会議で女性は2人だけだったと言っています。しかも近くに座っていた男性から「コーヒーを持ってきて」と言われたそうです。
 
ただ、だからといって目先の怒りに気を奪われ、大きなゴールを達成することを絶対に諦めないで。そんなことで、あなたの貴重な美徳や能力のすべてを投げ打つべきではないのです。これは私が娘たちに言い続けてきたことです。
 
スーザンはYouTubeを買収した時、Googleに莫大な損失をもたらしました。非難も受けましたが、彼女は自分の進む道を貫きました。アンが起業して間もなく、米国食品医薬局(FDA)は消費者にとってのリスクを指摘し、販売停止を命じました。けれどもアンは信念を曲げず、後に販売を認められて名誉を挽回しました。
 
あなたの進む道を邪魔する者にこだわらず、目標から目を逸らさないことが大切です。どこに向かいたいのかをいつも心に留めておけば、雑音にとらわれずに済むでしょう。
 

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エスター・ウォジスキーは、「人が能力を活かして実りある人生を送るには、五つの基本的な価値観があればいい」と言う。
 
その5つがこのインタビューでも登場した信頼、尊重、自立、協力、優しさである。英語のTrust, Respect, Independence, Collaboration, Kindnessである。頭文字をとって、それを彼女は“TRICK”という。このTRICKは教育界だけでなく、企業もこの価値観を取り入れ始めているという。

『TRICK スティーブ・ジョブズを教えYouTubeCEOを育てたシリコンバレーのゴッドマザーによる世界一の教育法』
『TRICK スティーブ・ジョブズを教えYouTubeCEOを育てたシリコンバレーのゴッドマザーによる世界一の教育法』
インタビュー=関 美和 文=加藤紀子
Forbes JAPAN 編集部

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