佐藤可士和が考える”仕事の成功術”とは「相手を気遣う力」|Forbes JAPAN

気遣いをする力こそが、仕事の成否を大きく分けるという。
この記事は2021年6月8日にForbes JAPAN Webサイトに掲載された記事を一部編集したものです。Marisol ONLINEとForbes JAPANはメディアパートナーとして相互提携を行っています。
Jeremy Sutton-Hibbert/Getty Images
Jeremy Sutton-Hibbert/Getty Images

ユニクロやセブン&アイ・ホールディングスのロゴマーク、日清食品「カップヌードルミュージアム」の総合プロデュース、楽天のクリエイティブディレクションなど、話題のプロジェクトを次々と手がけてきたクリエイティブディレクターの佐藤可士和さん。2021年春には、自らロゴデザインを手がけた国立新美術館で「佐藤可士和展」も開催されました。
 
佐藤さんは、多摩美術大学を卒業後、博報堂に入社。アートディレクターとして広告制作に携わっていましたが、広告の枠だけにとらわれない幅広いクリエイティブ領域で、突き抜けた活躍を続けています。
 

デザインを最上位に置いての商品開発

 
もともと考えることが好きだったといいます。いろいろなことについて、なんとなくわかったような気持ちでいるのは嫌い。それはどういうことなのか、きちんと理解したかったのだそうです。会社に入ってからも、それは変わりませんでした。
 
「仕事はとても面白かった。でも、どういうわけだか、何かが違うような気がしていて」
 
数々の広告賞やデザイン賞を受賞しながらも、その違和感は消えませんでした。そして博報堂に入社してから10年、ようやく答えが見えたといいます。
 
「ある飲料メーカーに、商品開発から手伝ってほしいと言われたんです。パッケージもネーミングも味も、そしてもちろん広告も。やっていてはっきりわかりました。自分のやりたいことはこれだったんだと」
 
広告代理店では、広告がまず最上位。広告をつくるところから、すべてが始まります。デザインはそのなかのパーツとして存在していました。
 
「でも、僕が求めていたのは、デザインを最上位に置くことだったんです。デザインがあって、そのアウトプットとしてプロダクトや空間、映像、広告がある。この形こそ、自分の形だと思いました」
 
デザインを最上位に置いて商品開発から携わると、広告コンセプトもあっという間にできたのだそうです。商品も見事にヒットしました。いままでの広告づくりが、靴の上から足を掻くようなものだったと思えたといいます。
 
「これで、独立することも、独立してからやることも、はっきりイメージができました」
 
とはいえ、すぐに独立はしませんでした。会社名が決まらなかったからです。それから約1年かけて考えたといいます。
 
「自分のやることを総称できて、なぜその社名なのかを説明できる。これがなかなか難しかった」
 
1年間ずっと考え続けていましたが、アイデアは簡単に浮かんできません。きっかけは、ニューヨークのロケで、現地のフォトグラファーから「可士和」という名前を英語で説明してくれないかと聞かれたことでした。
 
「可士和ですから、ポシブル、サムライ、ピースと答えたのですが、そのとき、あっと気づきました。探していた社名はここにあったと。キレのいいクリエイティブで、グローバルなイメージ……。全部つながりました。ロケから戻って、会社辞めるからとすぐ妻に言いました(笑)」
  
その社名が「SAMURAI」。SMAP、キリン、明治学院大学、ドコモなど評判となったプロジェクトを順調に手がけ、あっという間にSAMURAIという社名も知られるようになりました。
 

 

先を読むイメージ力こそが仕事力

 
そんな佐藤さんの仕事を支えてきたのは、もともと好きだったという「考えること」でした。
 
「例えば、カッコいい商品に出会ったら、やっぱり考えるんですね。これはどうしてカッコいいんだろう。何がそう思わせるのだろうかと。そこには、ちゃんと理由があるんです。売れている秘密は何か。どんなものであっても、いつも探ろうとしています。それは自分にはとても面白いことなのです」

 

超多忙ななかで、どのようにしてたくさんの仕事が進められていくのか。その意外な秘密を明かしたのが、自著「佐藤可士和の打ち合わせ」でした。打ち合わせこそが、重要なポイントだったというのです。
 
「打ち合わせとは、仕事そのものです。実はとても重要なクリエイティブな場です。打ち合わせ自体がアイデアを考える場であり、プロジェクトの方向性を決める場なのです」
 
常時、数多くのプロジェクトを抱えていて、いったいいつアイデアをまとめたり、デザインを考えたりするクリエイティブの時間をつくっているのか、よく聞かれるそうです。
 
「デザインを仕上げるための時間はもちろん確保していますが、あらためてアイデアをまとめる時間を取ることはありません」
 
実は、まさに打ち合わせの時間にこれをやっているのです。打ち合わせは、相手と一緒に何かをつくり上げる場であり、アウトプットの場なのです。相手がクライアントであっても、協力スタッフであっても同じだそうです。
 
打ち合わせは完全に意思決定される前のプロセスのようなもの、「練習」のようなイメージを持っている人も少なくありませんが、佐藤さんはそうではありません。「何をやるのか」は打ち合わせでこそつくられるのです。
 
「すべての打ち合わせは、試合であり、本番です。真剣勝負の場なんです」

そして、この自著のなかに、これこそが佐藤さんの真骨頂ではないかと思える言葉がありました。
 
「相手を気遣えるかどうか。そういうところにこそ、仕事ができるかどうかの本質が現れる」
 
気遣いをする力こそが、仕事の成否を大きく分けるというのです。
 
「仕事の相手がどう思っているか、どんなことを求めているかを、どのくらいイメージできるか。僕はそうしたイメージ力こそが仕事力だと思っているんです。もっとわかりやすい言葉で言えば、先を読む力。仕事をするうえで、ものすごく大切な力です。そのなかのマインドの部分が気遣いなんです」
 
では、気遣いができるとはどういうことなのか。例えば、佐藤さんがテレビCMの制作依頼を受けたとすると、前作がどんなCMだったか、当然知りたい。
 
そんなとき、発注者が気遣いのできる人であれば、前作だけではなく、「きっとこんなものも欲しいはずだ」と去年のものや、一昨年のものもちゃんと用意しておく。そうすれば、佐藤さんは過去のCMと似たような企画は、最初から除外して考えられるわけです。
 
さらに気遣える発注者ならば、そればかりではなく、競合の会社がどんなCMをつくっているのかも調べて用意しておくのです。

「ここまで用意周到だと、この人はデキると認めないわけにはいかない。先を読んだイメージ力がある人だということになります。これからのプロジェクトも楽しみになります」
 
逆に、何を求められるか、先のことがイメージできないと、何度も打ち合わせが必要になってしまったりする。また、わざわざ要望を出さなければいけなかったりする。佐藤さんの本には、来客との打ち合わせに出すお茶にまで気を配っていることも書かれていました。
 
「相手に喜ばれることこそ、仕事の成功だと思っています。どうすれば喜んでもらえるのか。それを考えたら、自然に気遣い力も高まっていきます」
 
実は「答え」が相手のなかにあることも少なくありません。気遣いができる人は、そういうところにまで手が届きやすくなるのです。相手が求めているものに、気づきやすくなる。クリエイティブのヒントは、実は身近なところにあったのです。

 

文=上阪 徹
上阪 徹

上阪 徹

ブックライター
1966年、兵庫県生まれ。89年、早稲田大学商学部卒。アパレルメーカーのワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリー。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに、雑誌や書籍などで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材対象者は3000人超。
著書に『サイバーエージェント 突き抜けたリーダーを育てるしくみ』『マイクロソフト 再始動する最強企業』『10倍速く書ける 超スピード文章術』『JALの心づかい』『あの明治大学が、なぜ女子高生が選ぶNo.1大学になったのか?』『幸せになる技術』など30冊以上。経営者など他の方の本をインタビューで書き起こす「ブックライター」としても担当した書籍は100冊以上、携わった書籍の累計売上は200万部を超える。インタビュー集に40万部を超えた『プロ論。』シリーズ、『外資系トップの仕事力』シリーズなど。

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