頭が痛くてやる気も出ない‥ 雨の日に体調不良が起きやすい本当の理由|Forbes JAPAN

「雨の日はなぜか体がだるくてやる気が出ない」「雨の日が続くと気分が鬱々としてくる」──そう感じている人は少なくないだろう。これらの症状は気のせいだと思われがちだが、実はれっきとした原因がある。気圧や気温の変化だ。
この記事は2021年7月14日にForbes JAPAN Webサイトに掲載された記事を一部編集したものです。Marisol ONLINEとForbes JAPANはメディアパートナーとして相互提携を行っています。
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「頭が痛むと思ったら、低気圧が近づいていた」というように、近年、低気圧が体の不調と深く結びついていることが認知されてきている。このような気象が原因で起こる体調不良は、「気象病」や「天気痛」などと呼ばれている。

 

気象と密接に関わっている症状は頭痛だけではない。冒頭で挙げた体のだるさや抑うつ症状、さらには眠気やぜんそくの発作、古傷の痛みなども、気象と密接にかかわっている場合がある。

 

なぜ、雨の日はやる気が出ないのか

 
私たちの体にはもともと、外の環境がどうであろうと、体内を一定に保とうとする力が備わっている。確かに、外の気温が30℃であろうと10℃であろうと、体温は約36℃を保っている。気圧についても同様だ。ポテトチップスの袋を気圧の低い山の上に持っていくとパンパンに膨らむが、私たちの体は山の上でもそこまで膨らまない。
 
体内の状態を一定に保つ力を管理しているのが自律神経だ。自律神経には体を緊張状態にする「交感神経」と、弛緩させる「副交感神経」の2種類があり、外の環境に合わせてどちらかの神経が優位になり、体の組織を緊張させたり弛緩させたりする。

 

ところが、環境変化が急激だと、自律神経の働きがそれに追いつかなくなってしまう。たとえば、低気圧が接近して気圧が急激に変化したとき、自律神経の働きがその変化に追いつけずに、血管が過度に拡張して片頭痛が起きたり、逆に過度に収縮して緊張性頭痛が起きたりする。これが「低気圧で頭が痛くなる」症状の正体だ。
 
愛知医科大学の痛みセンターに、日本初の気象病外来・天気痛外来を開設した佐藤純教授は、次のように解説する。
 
「女性はもともと片頭痛に悩む人が多いため、低気圧が近づくと片頭痛を訴えやすい傾向にあります。一方、男性は片頭痛持ちの人もいますが、緊張性頭痛や首・肩の凝りを訴える人のほうが多いです。また、痛みを感じにくい人は、頭痛を痛みと自覚せず、めまいや体のだるさ、抑うつ症状として自覚しやすい傾向にあります」
 
梅雨前線が停滞すると頻繁に低気圧が発生する。しかも梅雨前線は、温度や湿度が違う空気どうしの境目に存在するため、前線が南北に動くたびに大きな温度や湿度の変化にさらされる。そう考えると、梅雨どきに体調不良を訴える人が増えるのは仕方のないこととも言える。

 

天気痛が起こりやすい人は

 
低気圧が接近したり雨の日が続いたりしたときに、体調が悪くなりやすい人にはどんな特徴があるのだろうか。佐藤教授によると、それは「耳が敏感な人」だという。
 
「ここでいう『耳』とは、厳密には鼓膜よりも奥にある『内耳』を指します。いままでの研究で内耳に気圧のセンサーがあり、そこで感じ取った気圧変化の感覚が脳に伝えられることがわかっています。もし、少しの気圧変化でも敏感に感じ取るような内耳を持っているとしたら、さまざまな症状を引き起こしやすいかもしれません」
 
なお、耳が敏感な人は、揺れにも敏感なので、乗り物に酔いやすい傾向にもあるそうだ。
 
読者のなかには、「年々症状がひどくなっている」と感じる人もいることだろう。天気痛の症状が年々ひどくなる傾向にあるのかどうかは、統計がとられていないため、はっきりとしたことはわからない。ただし、佐藤教授によれば、そういうケースも十分にありうるという。

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その原因としてまず挙げられるのが、生活習慣だ。天気痛に悩む人は、自律神経の働きが乱れがちな傾向にある。冷暖房の完備された部屋で長時間デスクワークをしていると、どうしても体に本来備わっていた体温調節の能力が落ちてしまう。自律神経の働きが乱れる一方なのであれば、確かに「年々症状がひどくなっている」と感じてもおかしくはない。
 
加えて、2020年からはコロナ禍の影響でテレワークをする人も増えた。これも自律神経の働きが乱れやすい生活習慣につながっているとも言える。佐藤教授は次のように指摘する。
 
「通勤は、実は意外と侮れない運動量になっていました。テレワークで通勤がなくなると、体は楽になったかもしれませんが、運動量が大幅に減ってしまっています。また、テレワークだとどうしても勤務時間とプライベートのメリハリもなくなるため、食事の量が不規則になったり、ダラダラと仕事をして長時間同じ姿勢でパソコンに向かったりしがちです。これも自律神経が乱れやすい生活習慣といえます」
 
2021年ならではの要因もある。今年は西日本が5月中旬から梅雨入りし、とても長い梅雨となった。東日本は気象庁による梅雨入りの発表こそ平年よりも遅かったものの、5月中旬にはやはり長雨があったため、断続的に雨の季節が長く続いたといってもいい。
 
「これだけ雨の季節が長いと、温度と湿度が高く、気圧の低い期間が長いため、体には相当の負荷がかかっています。今年は特に天気痛がつらいと感じる人が多いはずです」(佐藤教授)
 
加えて、近年は猛暑や大雨など気象現象が苛烈になってきている傾向もある。このようなさまざまな原因によって、気象病や天気痛の症状が年々悪化しているように感じる人が増えているのではないだろうか。
 

仕事をしながらこっそりできる天気痛ケア

  
気象病や天気痛をなんとかしたいと考える人は多いはずだ。これを乗り切るためには、まず、気象と痛みの関係を知ること。そして、痛みを抑えたり予防したりすることが大切だ。

 

まずは、毎日痛みの程度と気圧の値を記録するのがおすすめだ。天気と痛みの関係がはっきりすれば、「この痛みは気のせいだろうか」というモヤモヤとした悩みが原因のあるものだとわかり、それだけでもずいぶんとスッキリするものだ。
 
そのうえで、ウェザーニューズの天気予報アプリの中にある「天気痛予報」など、天気痛に特化した天気予報をチェックすると、「これから体調が悪くなりそうだな」とあらかじめ心づもりしておくことができる。なお、この「天気痛予報」のなかには「わたしの天気痛メモ」という機能があり、そこで体調や服薬を記録できる。
 
実際に症状が出てきたら、「くるくる耳マッサージ」をするのもよい。具体的には、下記の4ステップで行う。
 
1. 親指と人差し指で両耳を軽くつまみ、上・下・横にそれぞれ5秒ずつ引っ張る
2. 耳を軽く横に引っ張りながら後ろ方向に5回、ゆっくりと回す
3. 耳たぶを耳の上とくっつけるように半分に折り曲げて5秒間キープする
4. 掌で耳全体を覆い、後ろ方向に円を描くように5回ゆっくりと回す
 
これならオフィスでデスクワークの合間に手軽に行うことができそうだ。
 
また、座り仕事が続くとどうしても足がむくみやすくなるが、これも雨の季節の天気痛を悪化させる原因にもなる。そこで、むくみ防止のために、昼のうちに着圧ソックスを履いておくのもよいだろう。トイレに立つついでやコーヒータイムにこっそりスクワットをしたり、つま先立ちをしたりするのも効果的だ。

 

テレワークで運動不足を自覚しているのなら、昼休みや朝夕などに意識して時間をつくり、ウォーキングや軽いランニングも行うのもよい。外に出れば、汗をかいて体内の熱を逃がすためのトレーニングにもなる。熱中症患者が最も多くなるのは体が暑さに慣れきらない梅雨明け直後だ。体を暑さに慣らすことは熱中症対策にも有効だ。
 
梅雨の長雨が、頭痛や体のだるさの原因になりやすいことはわかったと思う。しかし、梅雨が明けた後もまだまだ天気痛の季節は続く。台風が接近・通過すれば気圧が劇的に変化するため、体調が悪くなりやすい。また、意外と見落とされがちなのは、夏場に発生しやすい急な大雨だ。前出の佐藤教授はこう注意を促す。
 
「いわゆるゲリラ豪雨と呼ばれるような突然の大雨は、5hPa(ヘクトパスカル)程度と、ほんの少しだけ気圧が下がります。局所的かつ短時間の現象なので、天気図には表示されませんが、このようなわずかな下がり具合でも、体調に影響する人がいることがわかっています」
 
なお、ウェザーニューズの「天気痛予報」には、天気痛の可能性が市区町村ごとに予報として表示されるのだが、画期的なことにこの局地的な大雨によるわずかな気圧の変化も考慮されているという。天気痛予報は刻々と変わっていくので、気象の変化に特に敏感な人は、こまめにチェックしておくと安心なのではないだろうか。

 

佐藤純(さとう・じゅん)

愛知医科大学客員教授。中部大学教授。2005年、愛知医科大学病院痛みセンターにて、日本初の気象病外来・天気痛外来を開設。30数年にわたり、気象と痛み、自律神経との関係を研究している。

今井明子(いまい・あきこ)

サイエンスライター。気象予報士。2001年京都大学農学部卒。科学雑誌「Newton」やWEBニュースサイトなどで気象、地球科学、健康・医療、生物の分野の科学記事を執筆する。

文=今井明子 編集=松崎美和子
 Forbes JAPAN 編集部

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1917年にアメリカで創刊したビジネス誌「Forbes」の日本版として、2014年6月より「フォーブス ジャパン」と題し新創刊しました。(世界38カ国にてライセンス版を刊行)。「世界から日本に、日本を世界へ」をテーマに、グローバルな視点を持つ読者たちに向け、フォーブス本国版、各国版の記事をキュレーションし、日本オリジナル記事と共に構成。ビジネス、経済、投資、アントレプレナー、ランキングの記事を掲載していきます。フォーブスが取り上げる人物の人生には必ずストーリーがあり、そのストーリーから「未来を切り開くメッセージ」を読者へ届けます。

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