定期的に通う調剤薬局。かかりつけの薬剤師制度があると知って申し込んだ。いろんなことを聞いちゃうぞー!乳がん・ニューライフ (第31回はこちらから)
第32回は放射線治療中に行ったエステでの残念な体験。
乳がんになる前は毎月通うエステがあり、乳がんもエステのマッサージで激痛を感じて気づいたほど。
疲れたと思ってベッドに横たわると最高の癒しを得られるマッサージよ。
それが今は足がすっかり遠のいている。
理由がある。
乳がん手術を終えて、放射線治療に通っていたころのこと。残すはあと数回、というところで無性にマッサージを受けたくなった。
放射線治療に通うのは不慣れな車の運転をしなければならず、身体が緊張で凝り固まっていたからだ。
しかしまだ術後の痛みもあれば腕も上がらない状況だったためにどこに行けば良いのかも見当がつかない。普通の店でも良さそうだと今でこそ思うのだが、当時は乳がんになってしまった自己憐憫で私を理解してくれるだろう特別な場所を探していた。
そこで思い出した。
ファッション関連のアドバイザーとして情報発信をしている方がいた。センスがとても良く彼女の書籍を数冊買って勉強したくらい信用している方だった。しばらくブログの更新がないなと思っていたらなんと乳がんで闘病していたと書いていた。
驚いたのと頼もしい先輩を得た気持ちで彼女の発信をより夢中で貪り読んだ。病気について書いているところは繰り返し読んで、新しい情報を得たり勇気を得たりと感謝でいっぱいであった。
そのうち乳がん患者でも通えるエステの話題を度々出してくるようになった。
なるほど、この方が紹介されているところなら間違いなさそうだ。貼ってくれているリンクも有名な予約サイトだから彼女を経由してお金がどうのこうの、でもなさそうだし。
すっかり安心して予約をした。
ずいぶんと立派な建物だなあというのが第一印象。予約時間の5分前に入店できるよう近所を散策してから店に戻った。
店内もきれいで品の良い調度品と接客の丁寧な店員。
着替えて予約時に指名した店長とあいさつをして早速施術開始。
病気のことは予め入店後の事前アンケートで記載した。
施術しながら私と同様に例のファッションアドバイザーのブログを見てくる乳がん患者が多いことを知った。
そして痛いとかどうとか確認もなく上がらない腕を無理やり動かして激痛に耐えた。
更に背中が真っ黒になっていること、施術前に測定した体重と体脂肪が多すぎて体が悲鳴を上げていることを繰り返し伝えられた。
背中が真っ黒?着替えながら鏡で確認してもそのようなことはないが不安でいっぱいになった。
「身体が毒だらけだからファスティングは絶対必要だ」と言われた。毒だらけ、と言われてショックを受けたが話を聞いた。
「薬を飲むだろうから朝を除いて昼と夜ファスティングを専用ドリンクでした方が良い。そして体脂肪を落とすためにまずは10回最低でも通ってほしい」と言われた。
手にはファスティング専用のドリンクを持っていた。
「会計は回数券を買ってそこから今日の分を支払ってください」と説明されて驚いてしまった。
長年通っていたエステも回数券制度があったので利用していたのだが、東京の中心地の相場は違った。この店だけかもしれないが、一番安い回数券で数十万円からであった。
それを今この場で即決して次回予約もして今日の分の支払いも済ませるのだ、みんなそうしているのだと言う。
気持ちが追い付かない。ファスティングには興味があるが、今は治療を優先すべきだろうと率直に思ったためにこのタイミングでこちらの事情を聞きもせず一方的に営業をかけてくることに一気に不信感が募る。
しかし私は幸いノーと言える人間なので「回数券は買いません。今日の分だけお支払いします。ファスティングも今はしません」と断ったところ店長はそれ以降無言となり、私は支払いを済ませて店を後にした。
週明けに放射線治療の病院でエステで背中が真っ黒だと言われたと伝えたところ入念に見てくれて「そんなことはない」と言ってくれた。涙が出た。
後日、ファッションアドバイザーの方のインスタにエステの店長が映っていた。新幹線のグリーン車とわかる座席に座り、一緒に旅行に行ったと。
夕食はイタリアンのフルコース。海が見えるホテルで乾杯している姿だった。
気持ちが冷めるというのはこういうことか。
あの場所であれほどの豪華な店舗を維持するには強気な営業も待ったなし、ってわけねと納得した。
その後もしばらくファッションアドバイザーのブログには当該エステで売っていたファスティングドリンクを使ってみんなで一緒にファスティングをしようと呼びかけるものや、騙されたと思って一度行ってみてとエステの良さを宣伝する内容が続いた。
騙されたと思って一度行ってみて騙されたよと思いながらそのファッションアドバイザーのブログとインスタのフォローも解除し、本もリサイクルして私の気持ちもこれにて成仏させた。
そんなわけで今もエステとマッサージはどこに行ったらよいのか迷子である。
身体や病気を盾に営業をかけてくるのは心底最低だ。
しかし身体は凝っている。あああ
つづく
※次回【Vol.33】は2023/4/14公開予定です。
治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありません
43歳で結婚、47歳で乳がん。
心配性の夫、奴さん(やっこさん)はなぜか嬉しそうに妻の世話を焼いている。Instagram(@kbandkbandkb)ピンクリボンアドバイザー(初級)資格保有