「公演後のウォーキングで 自分を素に戻す。 "地に足"がつきます」
〝毎日が初日〟の気持ちで 舞台に立つためにも、 歩くのは大切な時間です
そんな紅さんの幸福時間は、夜、ウォーキングをする時間。
「最高の幸福はお客さまの拍手と笑顔なのですが、公演を終えて、ひとりでウォーキングをする時は、それとはまた違う静かな幸せなひと時です。衣裳を脱いだら、公演で演じている役のキャラクターも、宝塚歌劇団星組トップスターの紅ゆずるという役目もつかの間オフにして、素の自分に戻る。素の自分に戻って一日を終えることで、気持ちがリセットされて、次の日をまっさらな新しい気持ちで迎えられる気がしています。舞台は一期会。毎回、初日のつもりで立ちたいので、そのために、毎日のウォーキングは私にとって必要なことなのです」
ウォーキングのコースは都心の街を1時間ほど。
「景色や人を見ながら歩いています。きらびやかなライトが当たる劇場から外に出ると、最初は街が異次元っぽく感じるんです。でも、歩いているうちに異次元感が薄れてくる。実は、劇場が非日常な世界で、舞台を観にきてくださるお客さまは、街と劇場の両方をご存じなのだなぁ、としみじみ考えたりもします。劇場と自宅の往復だけになると“世の中”からかけ離れがちになるので。私は〝地に足をつけて〟生きていきたいから、毎日、少しずつでも地面を歩きたいのかもしれないです」
トップスターは組を率いることと、男役スターとしてのさらなる躍進を求められる立場。
「私が言えるのは、思いどおりにいかない時も気持ちをくさらせず一生懸命やっていけば、後でそれが必ず力になるということ。谷もあるけど、谷があるから次に上がった時の喜びは大きいということ。これは自分が経験から実感したことなので、伝えていきたいと思います。男役としてはこれからも一作一作、チャレンジです。次の『ベルリン、わが愛』は大人の物語になりそうです。今までにない、紅ゆずるの新しい面を表現できたらと思っています」
くれない・ゆずる
●大阪府出身。2002年星組に配属。主な出演作に『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』『桜華に舞え』『オーム・シャンティ・オーム~恋する輪廻~』『THE SCARLET PIMPERNEL』など