病気のことを誰にどこまで伝えるか悩むには3つ理由があった。乳がん・ニューライフ (第38回はこちらから)
第39回は乳がんを誰にどこまで伝えるかの話、後編。
1)10人にひとりが乳がんになると言われているのに身近に「乳がんです」と公表している人がいない。
2)伝えたところで、思わぬ反応をされたら困る。
3)「ケビ子=乳がんの人」というイメージが強くなったら不本意だ。
こうした3つの理由で公表をためらっていたのもほんの数カ月。
マリソルから「乳がんのこと、書いてみない?」と依頼があり、公表する勇気より「依頼にはNOと言わない妙なポリシー」とある種の正義感が筆をとらせて迷いなく「やっと結婚できたのに乳がんになってしまい、夫に捨てられたらどうしよう」と書き始めたのである。
いわゆる「ご報告」という形で「ケビ子は乳がんになりました」にとどまらず、事柄と気持ちを整理しながら書くことはむしろ自分のことなのに客観的な視点を持てるという利点を感じた。
この連載を通じて「実は私も」「来月手術です」「数年前に治療しました」「公表してすごいです」「私は公表できませんが、闘病中です」「造影剤でおもらししたと思ったのは私だけじゃなかったんですね!」と感想を寄せてくれる仲間がたくさんいたことがわかった。
「隠れ乳がん」と言ったら怒られるのだろうか、言えずに闘病する仲間がこれほどいるのか! と驚いたこと。そして公表したことへの感謝とねぎらいをたくさんいただいて、今でも書いていて涙が出そうなほど勇気をもらったのだ。
「この連載、誰が読むんだ?」と思いながらの出発だったために思いがけずいただいたたくさんの仲間の存在やコメントがアクセルとなりブレーキとなり、この連載のスピードコントロールをしてくれている。感謝だ。
周囲の理解と協力を得て、闘病しながら日常生活を送りやすくなることもあるだろうし、パートナーとの絆が深まることもあるだろう。病気になって初めて知る自分の気持ちや他者への思いやりも経験してみないとわからないことがたくさんある。
一方で伝えないメリットはなんだろうか。
病気を伝えないということは他者に余計な心配をかけないでいられる。病気のことで気をつかったりせずに自分のペースを大事にできることが大きなポイントだ。しかし病気を自分だけにしまっておくとつらい時につらいと言えない、元気なふりをしてしまうこともあるから無理はしないこと。
いずれにせよ「病気を知られたくない」という気持ちも大事にしてほしい。
心配されすぎても困るし、大丈夫でしょ? と言われても悲しい。
「今私は誰かの悪気がまったくない普通の会話にも敏感な状況なのだ」、と受け止めて認めることがとても大きな力となった。
病気と伝えた相手に「その程度なら大丈夫でしょ?」や「余命とか言われた?」など思わぬ反応をされたらやはりショックを受ける。しかしその人も悪気があるわけじゃないと思うので責めるわけにもいかない。思わぬ反応で一喜一憂してしまうほど気持ちが張り詰めているからこそ自分を守れるのも自分である。だからこそ伝える相手を選び、伝え方の工夫をするのはほかならぬ自分の役目だと認識したいものだ。
たかが病気を伝えることにそんなに神経質になるのかと思われるかもしれないが、実際ケビ子が乳がんになり、こんなに自分は「かまってちゃん」だったのかと驚いたほど、些細なことで気持ちが揺れる。しかし今となって思うのはどんな感情も大切な経験だから、悲喜こもごもどんな自分もOKだ!
※次回【vol.40】は2023/7/28公開予定です。
43歳で結婚、47歳で乳がん。
心配性の夫、奴さん(やっこさん)はなぜかうれしそうに妻の世話を焼いている。Instagram(@kbandkbandkb)ピンクリボンアドバイザー(初級)資格保有