東海林さだお師匠が、こう綴っておられました。
実際に肉を焼くのは、最初だけであり
以降は割り下(関東)や野菜の水分(関西)で
煮て食べる料理である。
料理名と実体の乖離を指摘せざるをえない。
最初の肉を焼く行為は、
「すき焼き」という名前を保持するための
いわば儀礼、免罪符に過ぎないのではないか。
まあこういう感じだった、くらいでご容赦ください)
さすが師匠、本質を突いたご指摘!と激しく首肯し、
以来、すき焼きを食べるたびに
疑惑の視線を向けていたのですが
このたび、もしかしたらこの大いなる疑問に
ある答えを示すのかもしれない料理に出会いました。
ムーガタ(หมูกะทะ)
日本では「タイ式焼肉」と紹介されています。
コロナ中にタイで流行ったそうで、
最近、日本のタイ料理店でも
ムーガタを提供するお店が急増中の模様。
その名もMOOKATAがあるとのこと。
さっそく湯島本店に行ってきました。
この日いらした店員さんは2人ともタイの方で
日本語がほとんど通じない!
そしてお客さんはほぼ全員タイ人と思しき若者。
いいわ~、ガチだわ~。
(毎週木は女性限定で1999円だそう)
人数分注文したら、食材をカウンターに取りに行きます。
使う鍋は、ジンギスカン鍋のような
中央が盛り上がった形。
そして周りのフチに、スープを注いでおくのが
ムーガタ最大の特徴です。
同時に下部のスープで野菜類を煮つつ、
ひたすら食べます。
このあたりで聡明な読者諸君はすでに
あっ…(察し)
ってなってると思うのですが、
そうなのです、この食べ方だと
肉を焼く工程が途中でなくならないのです。
「焼く」と「煮る」が
食べ始めから終わりまで、同時進行なのです。
ですが、焼いてから一度スープでしゃぶしゃぶすると、
焦げ目がついて香ばしいのに、
鍋料理のお肉の味がするという
ハイブリッドな新・味・覚!
余計な脂が落ちるからか、非常に美味しい。
「焼く」と「煮る」のいいとこどりをしたムーガタこそ
「すき焼き」の本質にもっとも近い料理ではないか、
と思ったのです!
いかがでしょう、東海林先生!
あれは名前は日本のすき焼き由来なのに
肉を焼く「儀礼」すら無しで、
最初から具材を煮て食べる純然たる鍋料理ですが、
タイスキが忘れた「すき焼き」というルーツを
ムーガタが取り戻した、とも言えるんじゃないだろうか。
おお、なんと奥深きムーガタの世界……。
ところで私はバンコク出張の直後に
このお店に行ったのですが、
サイドに頼んだ一品料理(別料金)は
現地の味そのものでした!
タピオカココナッツミルクだったのですが
ここのはちょっと変わってた。
噛んでも味わっても全然わからなかったので
店員さんにこれは何ですか、と聞いたら
さっとGoogle翻訳に入力して見せてくれた画面に
「レンコン」と。
言われてみれば、
シャキシャキの歯ざわりはたしかにレンコン。
甘いココナッツミルクと、意外な相性の良さでした。
なんせ焼くと煮るが同時進行のため
煙と湯気のダブルパンチで猛烈に暑いので、
個人的にはもう少し涼しくなってから
行くことをお勧めいたします。
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ここ以外にもムーガタを提供しているお店が複数あるので、
気になる方は検索してみてくださいね。