「初日のお客さまの拍手。この舞台をやっていける、と実感する幸せな瞬間です」
何度経験しても、初日は特別。終盤、やっと不安と緊張から解放されます
そんな望海さんの幸福時間は、公演初日の、終盤のころ。
「初日は特別な日だと思います。これで大丈夫、と安心して迎えたことは一度もなくて、当日、幕が上がってからも不安と緊張が続いています。お客さまにも〝初日を観る〟という緊張感があるのを感じます。そんな空気の中、お芝居、ショーと舞台が進み、終盤のパレードのころ、お客さまの拍手と笑顔に、“この公演を喜んでいただいている。この舞台の世界観を受け取っていただいている”と実感できて、不安から解放される瞬間があるんです。この手応えがあるから、後は揺るぎない気持ちで千秋楽まで全力疾走できる。その原動力を客席からいただく、ありがたくてうれしい、幸福時間です」
今年の7月から、新トップスターとして、雪組のメンバーを率いていく立場となった。
「心の健やかさを大事にしたいと思います。無理をして背負いこまず、自分をさらけ出して、みんなと助け合っていい作品を作っていきたいです。個人的なことでは、食習慣に気をつけるようになりました。あんみつなどの甘いものが大好きで、稽古に没頭すると食事の時間が惜しくて、甘いもので糖分補給をすることがよくあったのですが、最近は、甘いものは午前中だけにして、お肉や野菜など栄養バランスのよい食事で体力を維持することを心がけるようになりました」
心身ともにパワーアップ。舞台への情熱と探求心はさらに充実。
「以前は、その役にどのように自分を近づけるかを模索していました。このごろは、役を通して自分の中の眠っていた部分に触れることがあって、それがおもしろいと感じます。例えば、『幕末太陽傳』で高杉晋作を演じた時、彼の国を変えるという志は私には遠い感情だけど、志に対するエネルギーは私の中にもある。そんな気づきが自分の成長にもなり、役の“本質”をつかむ手がかりにもなっているように思います」
のぞみ・ふうと
●神奈川県出身。2003年花組に配属。 14年に雪組に組替え。主な出演作に『星逢一夜』『るろうに剣心』『ドン・ジュアン』『幕末太陽傳』『琥珀色の雨にぬれて』など