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<教えてAyako先生!身近なお悩み法律相談室>モラハラ夫と離婚はできますか?【美女組白書 Vol.2】

美女組メンバーが本音で語る美女組白書。新企画「身近なお悩み法律相談室」は、美女組の弁護士Ayako先生が誰にでも起こりうる離婚、相続、労働問題などのトラブルを解決へと導きます。第1回は、モラハラ夫との離婚相談です。

\今回のテーマは、モラハラ夫との離婚について/

教えてAyako先生!身近なお悩み法律相談所

|PROFILE|

弁護士 中川彩子さん

愛知県弁護士会所属。2005年より弁護士として、離婚、相続、不動産などの身近なお悩みから、企業相談まで幅広い案件を取り扱う。家裁非常勤裁判官や、上場企業監査役などの経験も。一方で3児の母であり、オシャレ好きを生かしてファッションコンサルタントとしても活動。趣味は年間300冊以上の読書。貪欲に取り入れ続ける新しい知識や大事にしている言葉を武器に、相談者の心に寄り添う。

Marisol美女組としても活動中。

Ayako先生の美女組ブログ

今回のお悩みは……

私を無視し続けるモラハラ夫との離婚について
A子さんは、現在46歳の専業主婦で、小学4年生と中学2年生の男児の母。

夫の海外単身赴任時の子育ての悩みをきっかけにすれ違いが増え、現在夫に、話しかけても無視されるか「俺に言ってんの?」「はい」「別に」しか返事をしてもらえない状況。

ただ、経済面では困ったことはない。夫は現在も海外赴任中で、帰国は年数回(1回2週間程度)のため、その期間さえ我慢すれば、現状、生活に不満はない。けれど、夫の非情な態度に心を擦り減らす日々。

今回はAyako先生に
・夫の無視が離婚事由となるか
・離婚することのメリット・デメリット
・さまざまな事案を担当してきた先生からみて、離婚すべきかどうか
をご相談します。

A子さん年表

A子さんの年表

ワンオペ子育てに邁進する間に増えた夫とのすれ違い

Ayako先生(以下、先生):今日はよろしくお願いします。早速ですが、お話を伺っていきますね。夫婦の間で“離婚”の話は出てきたことはありますか?

A子さん(以下、A子):一度もないですね。日常会話がまったく成り立たないので……。

先生:子供たちとS男(夫)さんとの関係はどうですか?

A子:夫の躾が虐待かと思うほど厳しかったので、ずっと長男は私の味方でしたが、最近は思春期で私に反抗することも増え、逆に夫と気が合うようになってきたので今の関係は良好です。

先生:S男さんは、子供たちにも無視することがありますか?

A子:まったくなく、仲よく過ごしています。

先生:A子さんは専業主婦ですよね? 離婚するとしたら、自立できそうですか?

A子:昔は仕事が好きでバリバリに働いていたのですが、夫の海外赴任と子育てで退職して、今も次男が不登校ぎみで働けない状況です。ブランクもあるし、仕事に就いても今の生活レベルは維持できないかもしれません。

先生:S男さんは経済面では厳しいかたですか?

A子:毎月、生活費ももらっていますし、何に使っているかというようなチェックもないです。そこは感謝しています。

先生:なるほど。それなら逆に、S男さんと関係を修復して、結婚生活を続けていこうとは思えないですか?

A子:無視や敬語で話すのをやめてくれれば……。

先生:そうですよね……。おつらいですよね。S男さんの態度についてご本人とお話をしたことはありますか?

A子:「どうしてそういう態度をとるの?」と何度か尋ねたんですが、「ごめんね」とだけ言って立ち去り、話し合いを打ち切られてしまうんです。だから修復するチャンスもなくて……。

先生:そこまで夫婦仲が悪化した原因はわかりますか?

A子:仕事とはいえ、夫は好きなところに行っているという思いと、ワンオペのつらさが重なって、私の不満が大きくなっていたころに、長男がいじめに遭っていたんです。
その時は夫に助けてほしかったし、帰国して寄り添ってほしかった。けれど、それも叶わなくてひとりで必死になっていたら、夫に「Aちゃん、怖いよ」と言われてしまい、そのあたりから会話が成立しなくなりました。

先生:ひとりでとても大変な思いをされたんですね。

今は、離婚は保留がベター。ただし離婚の準備を始めても◯

先生:ただ、さまざまなケースをみてきて、私はどっちがいい悪いというのはないけれど、お互いの考えが伝わっていない、A子さんの大変な思いをS男さんは実感できていなかったのではないかなと思いました。

そして、S男さんはケチではないんですよね。家庭を支えてくれているというのは大きいと思います。個人差はありますが、いわゆるモラハラ夫はケチなかたが多いので、その点、A子さんはラッキーかなと。

彼は経済面で細かく言わない、A子さんに家計をまかせているのは優しさのつもりで、そこで穴埋めしているのかも。だから、そこは感謝してもいいかもしれませんね。

一般的にほかと比較するものではありませんが、1円単位で収支を報告することを義務付けるかたもいるので、S男さんはA子さんに愛情があるのかな、愛情表現が下手なだけかも、と感じました。

これらを踏まえると、今、A子さんは働ける状況ではありませんし、家計を維持できないということなので、即、離婚という決断をしなくてもいいのでは?と思います。

S男さんとお子さんたちの関係も良好であれば、離婚すると決まったらショックも大きいと思います。

ただ、つらい思いをして悩んでいらっしゃるかと思いますので、離婚を視野に入れておくことはいいと思います。

A子:確かにそうですね。先生にお話しして、夫との関係が整理できて少し前向きになれました。

先生:調停委員とともに同居の条件を話し合い、カウンセリングを促すなどしてもらえる円満調停もありますよ。ただ、うまくいったケースは少ないですが……。
どちらにしても、今は冷静に離婚をするかどうか見極めることが重要かと思います。
離婚を切り出すのはいったんストップの理由を書いた画像

離婚のための「証拠」を積み上げる

A子:Ayako先生、ちなみに「無視される」という理由で離婚はできるんですか?そもそもこれはモラハラなのでしょうか?

先生:今、離婚できる理由は下の5つのうちいずれかに当てはまっている場合に限り、裁判で離婚できるとされています。
民法が定める5つの離婚原因
先生:お話を伺って、S男さんはモラハラだと私も思うんですよ。⑤に当てはまるのですが、モラハラって実証しにくいんです……。

A子:証拠集めが必要ということですね。

先生:はい。ただ、暴力を振るわれて怪我をしたというのはわかりやすいのですが、無視は難しいところ。けれど、「いつどんなことをされた」というメモを残しておくと決定打とまではいきませんが、心象的に有利かもしれません。録音や録画が撮れるといいですね!
立証に有利な「証拠」

モラハラ慰謝料は低め。財産の突き止めが意外と重要!

A子:モラハラが実証できた場合、慰謝料も取れるんですか?

先生:実証されれば、ですね。けれど、金額的にもそこまで高くはありません。「モラハラ=即離婚できて自由」というわけでもないですしね。A子さんは違いますが、相手側にモラハラしないといけない理由があったとか、仕事が過酷でそうなってしまったとか、モラハラ頻度が低いとかいわれるケースもあるので、ひとつずつ証拠を積み上げられたらと思います。

不貞(浮気)は慰謝料に直結しやすいけれど、モラハラは慰謝料に直結しにくく、少額のことが残念ながら多いです。

そして、離婚せず別居の場合は婚姻費用も請求できますが、A子さんの場合、離婚すると養育費や現段階での財産分与を請求することになるのではないかと思います。
離婚で請求できる可能性のあるお金や公的支援
A子:請求するともめますか?

先生:そうですね、よくもめます(笑)。財産分与は結婚してから結婚が破綻するまでは名義がどちらでもお互いの協力によって形成されたものになるので原則として折半になります。

・現金・預貯金
・有価証券投資信託
・不動産
・自動車
・保険料
・退職金・年金
・家具・電化製品
・骨董品・美術品・宝石など
これらが財産分与の対象となります。住宅ローンがある場合は、マイナスの財産として対象になります。

ところでご主人名義の資産を把握していますか?

A子:すべて夫が管理しているので、収入がいくらかわからなくて……。月々、生活費だけを別途受け取っています。大体このくらいの年収とは聞いていますが、給料明細は見たことがないですね。

先生:できれば、年収額は知りたいですね。収入や財産がどの銀行にあるかというだけでもわかるといいですよ。最近は仮想通貨などで投資しているかたも多くて、知らなくて請求できなかったということもあるんです。財産調査は昔より格段に難しくなっていますね。
年に1度、年末調整前の9月ごろから確定申告までの間に金融機関や保険会社などからハガキやメールで案内が来ることも多いので、見つけたら写真を撮っておくといいです。

A子:たぶん、夫は全部メール設定にしていますね。メールを同期したりすればいいのかな……。

先生:勝手にメールやLINEなどを見るのは法律的にもよくないので、どうにか聞き出す感じがいいですね。銀行さえわかれば、調停で明らかにしてもらうこともできますので、婚姻中から調査しておいてください。

A子:離婚の準備のひとつですね!となると、婚姻期間が長いほうがより多くのお金を請求できる可能性が高いということですね。退職金がある会社なら、定年まで我慢して財産を折半したほうがトータル的にはあり?!

先生:はい、ありです。けれど、S男さんが帰国や転職の可能性もありますので、お金まわりを調べておき、生きていく術を養っておくことをオススメします。

15歳以上の子供の親権は“子供の意見”が尊重される

先生:上のお子さま(長男)は、もうすぐ15歳ですよね?

A子:はい。

先生:親権は、幼い子供であれば監護実績が重要ですが、15歳以上の場合は子供の意見が尊重されます。A子さんのご家庭の場合、海外で育てるとなると環境がガラリと変わってしまいますので、お子様が積極的に父親のほうを希望し、S男さんも受け入れる環境を整えない限り親権がお相手側にいく可能性は低いと思います。

S男さんが帰ってくるからといって、急に親権が移ることもないとは思いますが、母親ってついうるさく言っちゃうので、父親といるほうが気が楽と選ぶ場合も。けれど、きちんとふたりで教育や育児ができる環境であれば、親権という形にこだわらなくてもいいのかなと今までのケースを見てきて感じました。

A子:15歳がラインなんですね。少し不安は覚えますが、子供の意思も尊重しなくてはいけませんものね。先生、養育費はどのように決まっていますか?

先生:基本は20歳までといわれていますが、最近は大学に行くかたが多いので、18歳まで養育費が発生、大学に進学する場合は、留年、浪人をせずに22歳までとすることが多いです。

ちなみに養育費=生活費で考えていると、子供たちが巣立った後の生活が不安定になりますので、注意が必要です。

金額は、裁判所が出している養育費算定表から算出することが多いです。ただ、今、働いていなくて収入がゼロでも、パートはできて100万円ぐらいは稼げるよね、という判断で、妻の収入をパート労働者の収入を参考に算出することもあります。A子さんの場合は不登校のお子さまがいらっしゃるので、その点は考慮されると思いますよ。

離婚を考えている時に逆に離婚を切り出されたらラッキー

A子:最後にもうひとつ伺いたいのですが、実は私、片づけが苦手なんです。夫は洗濯物の干し方にもこだわるし、リモコンの向きひとつも気にする人なんです。だからその点が許せなくて、夫から離婚を切り出されるってこともあるのでは?と思うのですが、これも離婚理由として認められますか?

先生:苦手くらいなら大丈夫ですが、ゴミ屋敷みたいだとちょっと悪いイメージが強いですね。
ただ、それで離婚を切り出されそうなら、それを待って裁判に持ち込むほうが有利です。部屋が汚い程度であれば、離婚の判決が出るか微妙なライン。つまり、A子さん側が“離婚してあげる”立場に立てるので交渉がしやすくなります。だから、そうなったらラッキーですね!

A子:なるほど。離れている間はこちらから離婚を切り出さずにもう少し待とうかな。Ayako先生に「これはモラハラ」と言っていただいたのは、勇気が出ました。
一緒に生活をするようになったり、私が我慢の限界を超えちゃったりしたら、またAyako先生に相談します!ありがとうございました。

Ayako先生からの最終アドバイス

Ayako先生からA子さんへの離婚相談アドバイス

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