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<教えてAyako先生!身近なお悩み法律相談室>家賃滞納ぐせのある入居者に悩んでいます【美女組白書 Vol.3】

美女組メンバーが本音で語る美女組白書。新企画「身近なお悩み法律相談室」は、美女組の弁護士Ayako先生が誰でも起こりうる離婚、相続、労働問題などのトラブルを解決へと導きます。第2回は、家賃滞納を何度も繰り返す入居者への対応の相談です。

\今回のテーマは、家賃滞納ぐせのある入居者の対応方法について/

教えてAyako先生!身近なお悩み法律相談所

|PROFILE|

弁護士 中川彩子さん

愛知県弁護士会所属。2005年より弁護士として、離婚、相続、不動産などの身近なお悩みから、企業相談まで幅広い案件を取り扱う。家裁非常勤裁判官や、上場企業監査役などの経験も。一方で3児の母であり、オシャレ好きを生かしてファッションコンサルタントとしても活動。趣味は年間300冊以上の読書。貪欲に取り入れ続ける新しい知識や大事にしている言葉を武器に、相談者の心に寄り添う。

Marisol美女組としても活動中。

Ayako先生の美女組ブログ

今回のお悩みは……

長期の家賃滞納を何度も繰り返す入居者に困っています
K美さんは、現在46歳のディレクターで、小学2年生の女児の母。

母の死後に複数の物件を相続したものの、多額の家賃滞納者が1人(60代男性)いることが判明。母の生前は、病気で物件の管理ができず、家賃滞納は34ヵ月分にまで及んでいた。

過去5回は、督促状の送付や警察出動などを経て、家賃滞納をすべて回収。しかし、その流れに順応したのか、徐々に家賃をたびたび滞納することが増え、昨年7月に家賃7万円の一部入金をした後から再び滞納。約9ヵ月分の家賃を滞納したまま、入居を続けている状況で不安を感じている。

現在、滞納者は電話、手紙の送付、内容証明の送付をすべて無視。連帯保証人は滞納者の父親だが、高齢で脳梗塞の後遺症があるとのことで支払いに応じてもらえない状況。管理会社は入っておらず、入居者とは直接の契約。

今回、Ayako先生に
・家賃滞納分の支払いや退去勧告をする方法
・退去してもらうまでにかかる費用
をご相談します。

K美さん年表

K美さんの年表

長期の家賃滞納はすぐに訴訟を検討

Ayako先生(以下、先生):今日はよろしくお願いします。では、お話を伺いますね。何度か入居者にアプローチしていらっしゃいますが、今、郵便物は届いていますか?

K美さん(以下、K美):はい。内容証明は受け取ってもらえなくなりましたけれど……。不在通知で戻ってくる状況です。

先生:実際に住んでいるかはわかりますか?

K美:はい。管理人さんにLINEで、居住状況を伺うと「◯月に見かけましたよ」とお返事をもらいました。

先生:事前にいただいた情報で判断すると、弁護士的には早急に裁判を起こしたほうがいい案件です。

K美:本当ですか!?

先生:はい。本来は滞納2ヵ月の時点で動きはじめて、滞納家賃の請求とともに、賃貸借契約を解除して「建物の明渡訴訟」を起こすとよいかと思います。
建物明渡訴訟とは?
K美:退去していただく訴訟ですよね?

先生:はい。この訴訟で支払いも命じられると思いますが、家賃の滞納がこれだけあると、残念ながら全額回収は難しいと思ったほうがいいかもしれません。

K美:えっ!本当ですか!? 2020年の34ヵ月分の滞納はなんとか回収したんですけど……。
警察は「民事不介入原則」というのがあるから、“安否確認”という名目で入居者宅に来てもらい、鍵を開けてもらったことがあるんです。その際に、入居者は居留守を使っていたので、突然、警察とともに家に押しかけられたことにすごく驚かれていて……。それで、そこでお話しもして、支払ってもらったことがあります。

先生:その238万円(家賃34ヵ月分)は一括で払ってもらえましたか?

K美:はい。けっこうしつこく、しつこく何度も言ったのと、叔母に貸していたお金を返してもらったからそれで支払ったということをおっしゃっていました。

先生:素晴らしい。回収できたのはレアケースなんですよ。

K美:我流で家賃請求をしてきたのですが、流れは問題なかったでしょうか?

訴訟を提起する前に行いたいステップ

訴訟を提起する前に 行いたいステップ
先生:流れとしては上のようなステップで進めるので、K美さんの流れであっていますよ。回収もできていて本当によかったです。

K美:その後も滞納は続きましたが、電話は繋がるので「いつまでに支払ってくださいね」と計画的なお話をいつもして、なんとか回収ができていたので少し安心していたのに……。昨年7月は家賃7万円のところ、3万円しか振り込みがなくそれっきりです。

先生:それは不安になりますよね。ところで、K美さんはこの入居者が家賃を支払ってくれたらそのまま居続けてもいいと思っていますか?

K美:はい。部屋はキレイに使ってくださっているので、支払ってくれるなら。でも家の中なのにダウンを着て過ごされていて、暖房もそこまで使わず、節約なさっているのかなという印象は受けました。

先生:その男性は60代とのことですが、仕事はしていますか?

K美:以前は短期のアルバイトをしていたみたいですが、腰が痛いから1週間でやめたという話もご本人から聞きました。

先生:年金暮らし?

K美:いや、まだ年金はもらっていないと思います。

先生:この入居者の収入には不安がありますね。

K美:このかた、病気がちで入院して連絡ができなかったこともありました。そのまま部屋で亡くなられて物件の価値が下がっても困るし、出ていってもらったほうがいいかなとも思ってきました。

先生:たぶんですが、年齢も加味すると、この先どんどん家賃を支払えなくなっていくと思うので、大家さんの正当な権利で出てもらうことを考えなくてはいけないですね。
もしK美さんと同じ状況のご相談を頂いたとしたら、私は即裁判をすすめます(笑)。もはや簡易裁判とか少額訴訟の域を超えていますよ。

K美:そうなんですね。次のステップに進まなくちゃいけないですね。
今後の居住を認めるか迷ったら、家賃の支払い能力をチェック

賃貸トラブル発生時に心強い管理会社や家賃保証会社

先生:この物件には管理会社や家賃保証会社などは入れていないのでしょうか?

K美:はい、母が直接契約していたので入れていないんです。以前、家賃保証会社を入れようと思ったら、滞納家賃が32ヵ月あるとさすがに受け入れられないと断られまして。管理会社も同様でした。

先生:今回は途中からの依頼は難しそうですね。けれど、こういった会社が間に入っていると、何かあった時に対応が楽ですよ。
賃貸管理会社と賃料保証会社の役割
K美:ほかの物件は管理会社にお願いしているんですけどね……。この物件は東京からも遠くて、すぐに動けないのですが、まずは今月中に警察に協力(安否確認)してもらって一緒に訪ねてみます。

先生:このまま滞納が続くなら出ていってほしいという前提で交渉ですね。居続けるなら条件をつけますよ、保証人をちゃんと付けてくださいという話し合いですね。

K美:この入居者の保証人は一応いるのですが、高齢のようでその金額は払えないと言われて……。先生、保証人は変えることはできますか?

先生:保証人となる方が承諾してくれれば可能です。働いている若いかたが保証人になってくれるといいですよね。

K美:それならまだ居住する可能性も少しは考えてもいいかもですね。
話は戻りますが、入居者に交渉しないなら裁判しますよ、と伝えていいですか?

先生:はい。いいと思います。

裁判に勝訴しても立ち退きに費用が発生する可能性大

K美:それで交渉できなかったら「建物明渡訴訟」ですね。

先生:はい。

K美:今、内容証明を送っても不在で戻ってきますが、もし入居者が訴状も無視するとか、裁判に出廷しなかった場合はどうなりますか?

先生:居住の事実があれば、裁判所に依頼して普通郵便で申し立てをすることができます。それで答弁書を出さずに欠席すれば、相手側の敗訴になります。裁判で滞納家賃の支払いと明け渡しが命じられたら、いつまでに退去してくださいと入居者に言えるようになります。それでも、勝手に鍵を変えたり、荷物を家から出したりすることは違法なので気をつけてください。

K美:日本の法律では入居者は守られていますね。

先生:そうですね。でも実は勝訴したからといって、荷物を持って出ていってくれるならいいほうなんです。荷物を放置していくかたもいらっしゃいます。その場合は、強制執行をまた裁判所にお願いしないと合法的に荷物をどかすことができないんです。荷物の処分費用も入居者に請求はできますが、払う能力がないと結局大家さんが多額の費用を負担することになることもあります。

K美:それは困ります。

先生:入居者が会社勤めなら給料の差し押さえができるけれど、勤めていない入居者の場合は差し押さえるものがないので……。

賃貸経営をなさるかたは、家賃滞納を3ヵ月したら契約は解除して出ていってもらいますと伝えて、裁判をもって退去してもらうというのは決めておくといいかもしれません。2ヵ月だと裁判をしても契約解除をできないことがあるので、3ヵ月滞納したら即裁判⇨退去という流れが傷が浅くすみますね。

K美:なんか難しいですね。

先生:そうですよね。もしこの入居者と連絡が取れた場合は、今の契約を終わらせて保証人、もしくは保証会社を付けて、家賃を先払いしてもらわないと居住は認められないという契約を巻き直したほうがいいですね。
賃貸借契約の解除に必要な期間の目安

建物明渡訴訟の提起にかかる裁判費用&弁護士費用

K美:先生、建物明渡訴訟と家賃債務請求を行ったらどのくらいの費用が発生しますか?弁護士費用と裁判費用で。

先生:安く見積もっても50〜60万円はかかるイメージですね。建物の価値も考慮して決まるので変動はすると思いますが。

K美: そうすると、裁判するとこの滞納家賃がほとんど相殺されますね。

先生:可能性はあると思います。

K美:でもそのぶん出ていってもらえるかも、という希望はありますね。

先生:はい。強制執行まですると、100万円コースになる可能性もあるかなと思います。

K美:なかなか賃貸経営ってリスクがあるんですよね。ほかの物件はほぼ管理会社を挟んでいるので一応大丈夫とは思っているのですが……。

先生:なので60万円はチャラにするから、すぐに出ていってほしいという交渉もひとつかなとは思います。

K美:一度238万円を回収できているので、実は持っていたりしないかなと思って、諦めたくないなという気持ちです。
もし銀行口座がわかれば差し押さえもできますか?

先生:できますよ!裁判をすれば差し押さえも可能です。けれど、銀行の特定が必要ですね。

明確な証拠がある場合は「本人訴訟」も無理ではない

K美:Ayako先生、この建物明渡訴訟は、弁護士に依頼せずに自分ですることはできますか?

先生:できないことはないですね。お話を聞いている限り、今の事実関係に入居者が争ってくるような事情がないと思われるので、できないことはないと思います。

K美:自分で頑張ろうかな!

先生:建物明渡訴訟は通常訴訟になるので、本人訴訟(弁護士に頼らず個人で訴訟すること)でやるとなると大変だとは思いますよ。あと裁判は物件のある場所の管轄になるので、出廷の必要も出てくるかもしれません。弁護士に依頼した場合は、弁護士のみ出廷も可能ですよ。

あとは最初に居住確認で現地に足を運ぶ必要があるので、遠方の物件の場合は現地の弁護士をオススメします。K美さんの場合は管理人さんがご協力してくださるので、現地と限定しなくてもいいとは思います。

K美:先生ありがとうございます。勇気が出ました!ネットでも調べはしたのですが、不確かな情報かもしれないと思うと不安だったので。それに私は入居者の対応を待ってもいいかなと思っていたけれど、先生に「早く対応したほうがいい」と教わり、すぐ動かなきゃという気持ちにもなって本当にありがたかったです。
先生、ありがとうございました!
家賃滞納に対する対応のまとめと費用

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