海風を感じながら湯涼み。静岡県伊東市にある星野リゾートの温泉旅館「界 アンジン」は、“船旅”をテーマにしたモダンな空間が魅力。Marisolでも数多くのトラベル記事を手掛ける“旅の達人”桂まりさんが、アラフォー的『界』の楽しみ方を徹底レポートします。
What's「界 アンジン」(静岡県・伊東温泉)
大航海時代のロマンと歴史漂う宿
16世紀末に日本に漂着し、徳川家康に取り立てられて西洋人初の「サムライ」となった英国人航海士・三浦按針(ウィリアム・アダムス)。
その按針が、日本初の西洋式帆船の造船にあたったといわれる場所に建つ「界 アンジン」。訪れた人の目にまず飛び込んでくるのは、大海原のロマンを感じさせる帆船のオブジェ。按針が旅した大海原に思いをはせ、ほかにはない滞在を楽しめる温泉旅館です。
温泉の泉質は、現代人の疲れを癒すのにぴったりのアルカリ性単純泉。最上階にある大浴場、御影石が美しい内風呂と、時間帯や気分に合わせて伊東温泉の名湯を堪能することができます。
すべてオーシャンビューの客室は全45室。実際に航海で使われていた舵や櫂などのパーツをあしらったアートワークが、歴史を感じさせながらもモダンなムードを演出。一室ごとに異なるデザインというのも、訪れるたびにときめくポイントです。
窓の外に広がる大海原を独り占めできる開放的なレイアウト、界オリジナル寝具・ふわくもスリープのローベッドなど、“心地よい休息”にこだわったステイを心ゆくまで堪能できます。
そんな「界 アンジン」の滞在で、“旅の達人”桂まりさんが印象に残ったポイントとは?
“旅の達人”桂まりさんが語る「界 アンジン」の魅力
今回の旅の達人は……桂まりさん
POINT1:海風を感じられる露天風呂
「界 アンジン」といえば、海風を感じながら入浴できる露天風呂が滞在の醍醐味。ミネラル豊富で塩分を含むお湯につかれば芯まで温まり、日常の疲れも心地よくリセットできます。
夜は星を見ながら入浴できるのも大きな魅力。夜は25時まで、朝は5時からと、好きな時間に温泉を楽しめるのも大人にはうれしい。自由に使える10分砂時計を眺めつつ、ゆったりと名湯を堪能できるのは何よりの贅沢です。
船の甲板のような湯上り処「サンブエナデッキ」もくつろぎ度満点。
大航海時代のビールをイメージしたインディアペールエール(15時から22時までの提供)や、伊東名産の冷たいぐり茶、りんご酢のドリンクなどが自由に楽しめて、各地の『界』で定番人気のアイスキャンディーも。気の利いたおもてなしと、目前に大海原が広がる潮風の気持ちいいデッキ、とにかく最高です!
POINT2:客船に滞在している気分。海を感じる客室
「船旅」がテーマの宿。チェックイン時にはボーディングパスが渡されて“旅”がスタート。ロビーでは、三浦按針の出身地・英国の文化にならった「紅茶の船旅」も楽しめます。
施設内には海や船・灯台など、もともと好きな海のモチーフがあちこちに配されていてキュンキュンしました! 客室は船に使われていた木材を活かしたアートをはじめ、ジャズレコードやターンテーブルなどが置かれていて落ち着いた雰囲気。とても和めます。
客室から見える海の表情も、ずっと見ていても飽きません。潮の満ち引き、朝陽と夕陽、すぐ横を流れる松川がキラキラ輝き、カモメやトンビが舞う空。全室オーシャンビューだからこそかなう贅沢です。
部屋への廊下も外に面していて、まるで客船にいるよう。木の床が裸足に気持ちよかったです。お部屋に置いてあった界 アンジンの柑橘と塩カカオ、2種類の港町のショートブレッドもおいしかった!
POINT3:伊東の歴史、温泉豆知識、手仕事まで! 多彩なアクティビティ
夜はぜひ『界』ならではの「ご当地楽」に参加してみてください。15分ほどの「アンジン紀行」では、施設の名前のもととなった三浦按針について深く知ることができ、とても興味深かったです。大航海時代に盛んに取引されていた香辛料の代表格・胡椒を効かせたおいしいビターチョコレートの味わいも印象に残っています。
また、温泉旅館ならではの温泉の豆知識を知ることができる「温泉いろは」もおすすめ。「お湯印帳」をいただきました。全国の『界』をめぐってご当地色にあふれるスタンプを集めるのも旅の楽しみになりそうです。
さらに、朝6時半からの「界の現代湯治体操」(前日要予約)にも参加。海を見渡せる屋上で、温泉効果がアップするストレッチのレクチャーを受けました。日常では考えられないロケーションで深呼吸! 非常に気持ちよくて、リフレッシュできました。
個人的にいちばんのお気に入りは、ご当地グッズ「豆船」のモビール制作。
チェックインした時にギフトショップやエレベーターに飾られていて、ひと目惚れした船のモビール。なんと、自分で作れるキットを発見! ピーナッツの殻を使った愛らしい船を自室にこもってつくるひと時は、忘れられない癒しの時間になるはず。
POINT4:伊東の自然にイギリスのムードが融合した美食
旅の大きなお楽しみ、お食事も大満足。三浦按針が英国出身ということで、メニューやプレゼンテーションに英国風味を効かせていたことに興味を惹かれました。
また、レストランフロアに足を踏み入れると、アート作品のようなインテリアに感心すること必至。間仕切りもひとつひとつ異なり、とても美しい。
夜の特別会席(要予約)は、英国の香り漂う「ローストビーフの舷窓見立て」からスタート。グレービーソースにわさびを効かせた味わいがとても新鮮です。
まるでアフタヌーンティーのように華やかな八寸や、真鯛・金目鯛・カンパチのお造りも。海の目の前だからか、おいしさも倍増!
自分で焼いて好みの焼き加減でいただく牛フィレも柔らかく、メインの伊勢海老、金目鯛、ムール貝、あさりのブイヤベースの濃厚なこと! 土鍋ご飯とも好相性です。
甘夏スパークリングや伊豆で唯一のワイナリーが手掛ける伊豆シャルドネなど、この地ならではのお酒と料理のペアリングが楽しめる「by the glass set」、ぐり茶のパウダーをふんだんにかけたデザートのクリームブリュレなど、最初から最後まで舌の肥えたアラフォーをうならせること間違いなしのメニューはとにかく圧巻のひとこと!
朝食もご当地色豊か。目にも舌にもうれしい充実メニューです。
今回いただいた「スコッチブロスの白味噌生姜風味」(写真奥の土鍋)は、船旅における栄養素バランスを考えたという、歴史に思いをはせることができる興味深い一品。細かく刻んだ野菜がたっぷり、ベーコンも入っていて非常に美味でした。
伊東の朝食らしく金目鯛の干物も。自家製豆腐にも金目鯛塩が香ばしいアクセントを添えています。自家製ヨーグルトに入っていたニューサマーオレンジのマーマレードまで、ご当地感ある新感覚の和食膳で満腹になりました。
「界 アンジン」の旅を終えて:桂まりさんの「まとめ」
心洗われるステイ。「界 アンジン」はアクセスも抜群
「大海原に面した宿での船旅、というテーマが素敵でした。徳川家康の命で三浦按針がつくった造船所、歴史ある場所に滞在しながら温泉を楽しめるなんて、本当にロマンティック。
近隣には海の幸を楽しめる名店や、お土産に最適なスイーツショップも充実。昭和レトロな歴史博物館・東海館もほど近く、落ち着いたレトロな街散策が楽しめます。熱海などに比べると賑わいに欠けますが、そこが歴史ある伊東の魅力だと思います。また行きたい!
都内から電車で約2時間というアクセスのよさも素晴らしい。伊東駅からも徒歩15分ほどで、全室オーシャンビューの別世界に到着できます。この近さゆえ1泊でもリフレッシュでき、チェックアウトも12時とゆっくりできるのでおすすめです。
小田原までは暑かったのに、熱海あたりからは海風のせいか少し涼しく感じられたのも、これからの季節の滞在におすすめしたい理由のひとつです。」