
京都の公家文化と江戸の武家文化、双方の影響を受け独自の文化を生み出した金沢エリア。そんな加賀の伝統を活かし、『界』流のおもてなしへと昇華した「界 加賀」を訪れたのは、Marisolでも活躍中の人気ファッションエディター・東原妙子さん。1泊2日の充実旅をレポートします!
“旅の達人”東原妙子さんが「界 加賀」の魅力をレポート!

今回の旅の達人は……ファッションエディター・東原妙子さん
What's「界 加賀」(石川県加賀市)
POINT1:独特の美意識を育んできた加賀文化を堪能する宿


金沢から新幹線で20分の山代温泉に位置する「界 加賀」。紅殻色を基調とした伝統建築棟や、梅の紋があしらわれた暖簾が、まずお出迎え。雪にも映え、とても華やかな印象を受けました。
北大路魯山人にも愛された空間

実はこの伝統建築棟、文政年間(1818~30年)に建築されたという歴史ある建物。「白銀屋」の名で温泉旅館を営んでいたそうで、かの北大路魯山人も定宿として足しげく通っていたそう。
「界 加賀」の施設内には、陶芸家であり美食家でもあった魯山人ゆかりの品や、その哲学に触れることのできるおもてなしも。ロビーに飾られていた屏風は、ほろ酔いの魯山人がしたためたものだとか。そんなお話を聞くだけでも、この瞬間、自分が加賀文化の中に身を置いていることを強く感じられました。
POINT2:温泉で!? 加賀の伝統文化がぐっと身近に

加賀藩の時代から独特の美意識と数々の文化を育んできたこのエリアで、とりわけ華やかな伝統文化のひとつといえば九谷焼。トラベルライブラリーやべんがらラウンジなど、施設内のあちこちで鑑賞できる作品に、思わず目を奪われます。

男湯と女湯(写真)、あわせて8名の九谷焼作家が自由な発想でデザイン
そして、温泉旅館らしい取り組みに感心したのが大浴場。壁面に春夏秋冬をテーマにした九谷焼のアートパネルがあしらわれているんです。
九谷焼には色とりどりの華やかな「色絵」、単色が際立つ「赤絵」などさまざまな技法と様式が存在しているのですが、浴場のランプに詳しい解説が書かれているのもポイント。温泉につかりつつ作品をじっくり鑑賞できて、九谷焼についての知識も深められる……。こういった経験は、ほかの温泉ではできないはず。
大浴場の窓ガラスにあしらわれていた金沢箔のアートも美しかった! 窓の外の雪景色と重なり合い、非常にロマンティックでした。

こちらは露天風呂。「界 加賀」のある山代温泉は「美人の湯」とも称され、とろりとした泉質が特徴。雪を眺めながらの湯浴みは格別です!
POINT3:加賀文化にひたれる「ご当地部屋」


今回滞在した加賀伝統工芸の間は、露天風呂付きのお部屋。こちらも九谷焼や加賀友禅、そして水引のあしらいが随所に!

九谷焼に使われる“九谷五彩”(緑・黄・紫・紺青・赤)がキーカラーになっていて、インテリアに独特のカラフルなアクセントを添えていたのも素敵。加賀文化の「華」や「粋」を身近に感じることができる、とても心落ち着く空間でした。
思わず写真を撮りたくなる“映えスポット”も

加賀の文化を活かした印象的なおもてなしをもうひとつ。
到着した時に玄関を入った瞬間、目に飛び込んできたのは水引細工のモビール。ふっくらしたフォルム、繊細で大小さまざまな水引細工が連なる様子はこの地に降る雪をイメージ。

照明があたるときらきらと輝き、とてもフォトジェニック! おすすめは、下からカメラを構えての撮影。まるで雪が降っているみたいですよね。
POINT4:加賀文化に触れる多彩なアクティビティ

宿で使われている器は、「白銀屋」時代からのものもあるとか!
加賀伝統工芸を身近に感じられるアクティビティも盛りだくさん。到着後、真っ先に体験したのが「金継ぎいろは」。
実は「界 加賀」は日本初の「金継ぎ工房」併設の温泉旅館。工房では、会席料理で使用する器の修復を毎日スタッフが行っていて、修復の様子を見学したり、修復の一部を体験したりすることができるんです(要予約)。

というわけで、実際に修復作業を体験。修復された器は、また宿で現役として活躍するそう。私が修復したこの器も、いずれほかのお客様を喜ばせるのかな?と思うと、心が温まります。
リピーターにも人気の「ご当地楽」は迫力満点!

そして、『界』ならではのお楽しみといえば「ご当地楽」。
「加賀獅子舞」は、宿泊中の方がこぞって鑑賞に訪れる大人気のプログラム。“八方睨”と呼ばれる独特な木彫りの獅子の迫力に、演者のスタッフさんたちの気迫も相まって、臨場感が素晴らしかった!

それにしてもこの「加賀獅子頭」、大きくて、重くて、本当にインパクトがありました!
演じるスタッフさんにより、プログラムのムードもいろいろ異なるようで、何度観ても飽きないとか。
「金継ぎいろは」もそうでしたが、「ご当地楽」もスタッフさんとの距離が近いのが魅力。アクティビティをお客様と一緒に、楽しみながら作っていく!みたいなアットホーム感がいいんです。これぞ『界』ならではのおもてなしスタイルだと感じました。
POINT5:ひとり旅に出たくなること請け合いのグルメ事情

もちろん、旅の大きなお楽しみ・美食もおまかせの「界 加賀」。私が訪れた2月は、期間限定の「ひとり蟹会席」を展開中でした。

名物料理「活蟹のしめ縄蒸し」で、大きな蟹をまるごとひとり占め! うれしくて、生まれて初めて蟹と記念撮影も(笑)。お食事処は半個室風のレイアウトになっていて、食事中に人の目が気にならないのも気に入りました。

「ひとり蟹会席」で特徴的なのが、6種類のつけダレ。ひとり旅専用の蟹会席プランだけのお楽しみです。そして、とにかく九谷焼の器が美しくて! 新しい料理が供されるたびに心を躍らせていました。
記念日に使えそう! 大人のチルタイム空間

お食事のあとは「べんがらラウンジ」(有料)でリラックス。
好みのお酒とおつまみをセレクトして腰を下ろせば、窓の向こうには山代温泉の歴史ある共同浴場「古総湯」(「界 加賀」宿泊者は無料で利用可)を擁する「湯の曲輪(がわ)」が。人々の行き交う姿を眺めながら、九谷焼の器、水引のコースターといった加賀伝統の手わざと美味を愛でつつ、ゆったりとした時間を満喫。これぞ大人旅の醍醐味!
記念日のお祝いなどに利用するのにもぴったりの贅沢な空間でした。
有形文化財「思惟庵」での茶の湯体験もマスト

体と心をゆったりと遊ばせた翌日。キリッと引き締まる雪国の朝の空気とともに、最後のアクティビティ「茶の湯体験」へ。
国の有形文化財に指定されている茶室「思惟庵」で、歴史ある空間で過ごす時間は、1日の始まりにぴったり。作法やお茶の話はもちろん、茶室についても詳しく話を聞くことができ、とても得るものの多いひと時になりました。
お茶をたててくれるのは、こちらも「界 加賀」のスタッフさん。なので、まったく作法を知らない!という方でも緊張することなく体験できます。
「界 加賀」の旅を終えて:東原妙子さんの「まとめ」

1泊2日の「界 加賀」。ひとりで訪れても、退屈する瞬間がないくらいインプットの多い滞在でした。アクティビティ、そして施設内の調度品ひとつひとつすべてに“ご当地”の意味があり、常に好奇心を刺激され、まるでたくさんの“見えないお土産”を持ち帰ってきた気分。加賀の文化や歴史に興味を持つきっかけを与えてくれる、素晴らしい温泉旅館だと思います。
細やかで親身なサービスも『界』ならではの魅力。一緒に楽しみましょう、学びましょう!というムードがあり、とても気持ちを楽に、居心地をよくしてくれます。ひとり旅にうってつけなのはもちろん、友人との旅、ファミリーで訪れても満足度が高いはず。
「温泉いろは」でいただけるお湯印帳や、施設ごとに異なるデザインの風呂敷も、コレクション魂をくすぐります。次はあの県の『界』に行ってみようか!と、気軽に訪れたくなること必至。やっぱり『界』って面白い!