
榮倉奈々さん
えいくらなな●俳優。1988年生まれ。2002年に雑誌「Seventeen」でモデル活動をスタートさせ、俳優として数々の話題作に出演。2023年、LAND NK,Inc.を設立し、最高経営責任者(CEO)に就任。“変わりつづける今を生きる服”をコンセプトにした受注生産型ファッションブランド「newnow(ニューナウ)」をスタート。
映画『余命1ヶ月の花嫁』で、 仕事の責任や重みを改めて実感しました
━━榮倉さんは14歳のときに雑誌『セブンティーン』のモデルになったところからキャリアがスタートしますが、当時はどんな女の子だったのですか。
公園で遊ぶのが好きな普通の中学生でした。幼少期は三味線と民謡を習っていたので、休みの日はそればかりでしたし、当時はファッションにも全然興味がなかったんです。お下がりでよかったし、母の選んだもので満足していたし。
そんな中学2年生の時に、渋谷でスカウトしていただいたことがきっかけで、セブンティーンモデルになりました。芸能界は縁のない世界だと思っていたのですが、スカウトされてすごくワクワクしました。
━━実際はどうでしたか。突然、華やかなモデルの世界に入って戸惑いはなかったですか。
とにかく日常ではない日々がただただ楽しかったです。ロケでいろいろなところに行ったり、食べたことのないお菓子が出てきたり……(笑)。先輩のモデルさんたちもみんなきれいでやさしくて、私が一番歳下だったのですごくかわいがってくれて。本当にのびのびと過ごしていました。当時は「仕事」という感覚よりも、「部活」のような意識だったのかもしれません。
━━役者として、大きなきっかけとなった作品はありますか。
映画『余命1ヶ月の花嫁』に出演したときです。 この映画は実在の女性がモデルとしていらっしゃり、たくさんのかたのさまざまな思いがこめられた作品だったので、すごくプレッシャーがありました。この作品と出逢ったことで、役者という職業の重みを感じましたし、役と向き合うことの大切さを改めて学び、肌で感じました。廣木隆一監督も、厳しいけれど愛の深いかたで、監督との出逢いもかけがえのないものと感じています。

“女優・榮倉奈々”という名前をはずして、 素の自分で社会とかかわりたいと思った
━━その後は映画にドラマに多忙だったと思いますが、転機となった出来事はありますか。
29歳で出産を経験し、そこから大きく変わりました。物理的にそれまでのような仕事の仕方はできなくなりましたが、それはマイナスというより、私にとっては必要な時間だったと思っています。出産を機に、自分の仕事を俯瞰することができるようになったのかなと思います。
その中で、何か新しいことに挑戦してみたいと考えるようになりました。モデルや俳優業はどうしてもお仕事をいただく側で受身になりがちですが、自分発信で何かやってみたいって。それがファッションブランドを立ち上げるきっかけのひとつになりました。
━━2023年に立ち上げた「newnow(ニューナウ)」ですね。榮倉さんは、服の方向性はもちろんのこと、経営する会社のCEOにも就任されたそうですね。
これまでの“女優・榮倉奈々”という名前をはずして、素の自分として社会とかかわりたいと思いました。自分がどんな人間か、知りたかったんです。といっても会社経営の知識もないので、今はチームに助けてもらっています。大変ですが、毎日が新鮮で新しい環境に身を投じられていることは、すごく楽しいです。
特にnewnowは受注生産なので、受注会でお客様と直接お会いすることは学びになります。 着心地がよくて、かっこいい服というだけでなく機能性や日常使いできるもの、ということも大切にしたい。そういったことは、受注会で実際にお客様と対話をして得られました。
━━サスティナブルであることにも配慮しているそうですね。
はい。もともと私が定番のスタイルが好きということもありますが、組み合わせしだいで長く愛用できるような服作りを心がけています。受注生産にしているのも過剰な在庫を持たないようにするためです。
アパレルとサスティナビリティの両立はとても難しい問題ですが、近年さまざまなブランドが環境への負荷を考え、それぞれ取り組んでいます。最終的にはサスティナブルな服作りは不可能ではないと証明するところまで行きたいということがnewnowの目標です。そして近い将来、何らかのかたちで社会に貢献できたらと思っています。

わくわくすることに向かって、 いつまでもチャレンジし続けたい
━━ご自身のファッションは、20代と比べて何か変化はありますか?
スウェットにパンツというスタイルが一番多くて、よりリラックス感を求めるようになりました。ただ、あまりカジュアルになりすぎないようにしています。例えばスウェットでも素材は張りのあるものを選ぶとか、パンツはサイズ感を大事にしています。 下半身がきれいに見えるかどうかで全体のバランスが決まるので、自分の体に合ったパンツの形やサイズをみつけることが大事ですね。
━━経営など新しい体験を通して、あらたな発見はありましたか。
これまでは、自分は忙しく過ごすほうが好きなんだと思っていました。でも、そんなこともないんだなと。もっと自分自身の人生にフォーカスして、穏やかな時間をもつことも好きなんだと思います。家族との時間もそうですし、美容院に行ったり、体を鍛えたり。そういう暮らしも楽しんでいることに気づきました。
それから、子育てについてもそうです。私は神経質なタイプですが、子供に対しても細かいことまで面倒を見てあげたいと思っていました。でも、ブランドを立ち上げるまでの約1年間は本当に忙しくて……。なかなか思うように子供との時間を取れていないと感じていたのですが、その間に驚くほど成長していて。
私はよかれと思っていろいろやっていたけれど、全部、親がかりになってしまうのは逆によくないんだなと実感しました。そして、私自身にとっても頼れる場面では頼って、メリハリをつけることが大事。今まで気づけなかった自分のことを知るきっかけになりました。

━━親はいなくても子は育つという言葉のとおりですね。それにしても榮倉さんは、若いころから太陽のような明るい笑顔が印象的で、のびのびとした健康的なイメージですが、本当は神経質な性格なんですね。
健康的ということ以外はイメージとは少し異なるかもしれません。いろいろなことがすごく気になるほうで、自己肯定感も高くない。壁にぶつかると「ああ、ダメだ」って暗く落ち込んでしまうタイプです。
子育てについても出産直後はきちんと育てなくてはと調べすぎて、情報過多になっては焦ってばかりいました。「こうしたほうがいい」と書いてあると、全部やらないといけないような気がして、思い返すとあまり余裕がなかったように感じます。でも今は、ストイックになりすぎないように心がけています。子育ては基本的なことをしっかりできていれば、流れに任せていくことも大事だなと思うようになりました。
━━あらたな気づきを得て、ますます強く、しなやかに前を向く榮倉さん。最後にこれから榮倉さんはどこに向かっていくのか教えてください。どんなふうに生きていけたら幸せだなと思いますか?
よく、「将来は海が見える家で、本を読みながら穏やかに暮らしたい」と耳にします。それも素敵ですが、私には違うかなと思います。たぶん飽きてしまうのかな……。今、自分のブランドに夢中になっているように、この先もきっと自分の心がわくわくするような何かを探して、それにトライしているんじゃないかと思います。
長いようで短い人生、やりたいことをやり尽くしたほうがいい。もしできないと思うなら、その理由を因数分解して考えてみるといいと思います。「面倒だ」とか「時間がない」という理由を書き出してみて、「じゃあ、どうして時間がないんだっけ?」とひとつずつ障壁を取り除いていけば光が見えてくるのではないでしょうか。
とはいえ、人生は一瞬で決めることでもないです。今ある自分に感謝しつつ、精いっぱいやりたいことに向き合えば、きっとポジティブな答えにたどりつけると思っています。
最近出会った歳上の女性がとても美しいかたで、「ふだんどんなケアをしていますか?」と聞いたら、美容医療などではなく、頭皮のケアだったんです。車やテーブル、ベッド、お風呂と各所にスカルプケアブラシを置いて、いたるところでマッサージをしているそうです。それで私もマネをして、テレビを見る時やお風呂に入る時などに頭皮をもみほぐしています。スカルプケアの重要性を改めて感じました!

何かの本を読んでいた時に出てきた言葉で、本当にそのとおりだなと思ったんです。美しさって表面的なことではなくて、やっぱり内面からにじみ出るものなんだなと。私も美しい思考を心がけたいなと思っています。
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トッズ・ジャパン(トッズ) 0120-102-578
ランド エヌケー(ニューナウ)support@newnow.jp