荒野広治 meot婚活相談所運営、モテ期プロデューサー
Vol.18 「籍を入れたくない」事実婚を希望する男女の本音
読者の皆さん、こんにちは。モテ期プロデューサーの荒野です。
すっかり秋も深まってきました。人肌恋しい季節、一人でいると気分が落ちてしまうこともあると思いますが、夏の反省をいかして、最高のフィナーレで飾れるよう今年の残り2カ月はぜひ積極的に行動していきましょう。
さて、先日5年に一度の国勢調査が実施されましたね。今回の国勢調査では、婚姻数を把握する際、「同性・異性問わず」内縁・事実婚の男女カップルも夫婦として回答できることが話題になりました。一方で、気になるのが「籍を入れない関係性」=事実婚のメリット、デメリット。皆さんはどう考えますか?
婚活アンケートのカラクリ
先日、この連載の担当ライターが、とあるアンケート結果を見て意見が欲しいと持ってきました。婚活アプリ利用者を対象とした“ラス婚”(ミドル・シニア世代の結婚)のアンケートで、そのアンケートのひとつが「40〜80代男女の約6割が“籍を入れない関係”を望んでいる」という結果だったそうです※。これを見ると「法律婚じゃなくてもいい人が増加」「パートナーシップへの価値観の変容」と感じるかもしれません。でも、僕は正直、このアンケート結果に何かの意図を感じました。婚活アプリは、自由で軽やかな出会いの場。その中で「結婚を前提としない生き方」が語られるのはしごく当然のこと。ただ、それを一般化して“現代の結婚観の主流”のようにとらえるのは、少し無理があるように感じました。
人生のステージが変われば、結婚に対する見方も変わるものです。
自分を焦らせてきた友人の「結婚ラッシュ」もひととおり終わり、仕事も暮らしも自立してきた40代は、その「慣れ」が心地よさであり、足枷にもなる。自分だけのペースや居場所ができあがってしまい、それを崩して新たな生活リズムをつくることに対して、ためらいを覚える人が少なくありません。“結婚”と聞くと「暮らしが乱れるのでは」「自分の時間がなくなるのでは」というのが懸念事項だったりします。
一方、60代を過ぎると、子供世代との関係や相続の問題、親族の目という現実的な要素が結婚を難しくさせます。「後先を考えずに再婚するわけにいかない」と、周囲が足を引っ張ってくるのがこの年代です。
ところが、70代以上ともなると恋愛の原点回帰。不思議なことに、このころになるとまた「誰かといたい」「恋をしたい」という純粋な欲求が顔を出す。施設内や老人ホームで“色恋沙汰”が話題になることも多いと聞きます。
こうした世代ごとの実感がないままに、「大人世代は事実婚が主流になった」など語るのであれば、それは現実とは乖離しているかもしれません。
「事実婚」をするのはラクではない
「籍を入れない、軽やかな関係」──そんな認識でいるならば、事実婚という響きには確かに魅力があります。自分たちの意思で選んだ、形式に縛られない関係性は一見尊いものに感じます。でも、現実にはそんなに甘いものではありません。
現在、事実婚について明確に定義されている法律はありませんが、実務上、また判例でも法律婚と同じだと扱うことが増えています。異性との関係があれば不貞行為となり、慰謝料を請求することもできる。ただし、これらの問題を解決するために、まずは事実婚の関係であったことを客観的に証明できる状況を「事前に」用意しておかなければいけません。
例えば、以下の4項目をすべて満たしていると、認められるやすいようです。
①法律婚同様に互いに婚姻の意思がある
②共同生活をしている
③周囲から夫婦と認知されている
④公的手続きで事実婚を表明している
①②はふたりの意思のみでクリアできます。ただ、問題は③と④。イメージしているよりもっと大変だと思います。
お互いの両親に結婚することだけでなく、籍を入れないことへの許しをもらう。反対されれば説得もする。会社勤めなら、上司や人事への報告が必要です。会社によっては法律婚でなければ結婚休暇がもらえない、なんてこともあるかもしれません。籍は入れないけれど、公正証書や契約書などを作成し公的手続きで事実婚を証明してもらう。別れに関する約束事を契約書で決めておかなければ「お互いの気持ち」というひどく不安定なものでつながれているだけの関係性になります。夫婦別姓を希望していたり、財産分与の問題を抱えているなどしない限り、結婚する意志のあるふたりが事実婚を選ぶべきメリットはなかなか見つけられません。
事実婚は「自分たちらしい選択」か
僕は、ただずるずる関係が続いているカップルが、それを事実婚であると勘違いしているケースが、特に男性側にあるのではないかと懸念しています。
若いころ「結婚はまだいい」と責任逃れしていた男が、年齢を重ねて「(籍を入れずに)寄り添いたい」と言う。呼び名がつくだけで、態度も本質も変わらない関係性。いつでもここから抜け出せる、そういう選択肢を残しておきたい男性心理は、本気で結婚を望んでいるはずの婚活業界においても「あるある」です。事実婚と認められる条件がそろわなければ、浮気されてもしたもの勝ち。子供が生まれても認知しなければ法律上の父親としての義務は発生しません。
もちろん、女性側にも紆余曲折あった結果として、「(未来はともかく、今は目の前の)いい男と付き合いたい」「恋愛できるうちは無理に結婚しなくていい」という考えに至る人もいるでしょう。でも、これまでこの連載で何度かお伝えしてきましたが、年齢を重ねるとやっぱり選べる相手って変わります。言い寄ってくる男の格もどんどん下がっていって選びたいと思わなくなる。そして、ついに誰もいなくなった時、女性がぎりぎり持っていた「愛する人と結婚したい」という“本心”は、完全に“言い訳”とすり替わります。「恋愛すら、もういいか」と。
結婚をあきらめる女vs「オジアタック」する男
僕の肌感覚では、女性側は、結婚するひとつの目的でもある子供をもつこと、その可能性が年齢を重ねるとともに薄れると「いまさら籍を入れる意味がわからない」「縛られるのが嫌」層が急増する印象です。ただ、多くの場合その言葉の裏に、あきらめや弱さが潜んでいる人も一定数はいるように感じます。「選ばれる自信がない」「もう市場で戦える気がしない」。本気で恋をしたい、人生を変えたいと思っていた時期もあった。でも、年齢を重ねるとともに要求水準を下げ、時には気づかないふりもして、最終的に妥協していく。一見、自分らしさを突き詰めた結果に見えても、裏にあるのは孤独と虚しさかもしれません。
一方で、男性側は違います。いつまでも現役の人が多い。隙あらば狙っていきます。
婚活界隈で「オジアタック」という言葉が話題になりました。年上男性が、年下・格上の女性に積極的にアプローチすることで、SNSではちょっとした炎上騒ぎになったことも。僕は、これをひとつの有効な戦略だと思っています。結婚とは選ばれるだけでなく、自ら動きにいくものだからです。40代、50代でも、意欲と行動力があればチャンスは掴める。若さだけでは評価されないあなたの魅力を、しっかり伝えていく。拒否されるなら次に進めばいい。断られるリスクを恐れて挑まないなら、何も変わりません。もちろん、相手に過度な負荷をかけたり、常軌を逸したアプローチしたりするのは問題外ですが、礼節をもって挑む“正攻法の肉食性”は、むしろ今の40代女性にこそ足りない部分かもしれません。
時代が変化しても結婚したい根源的欲求は不動
今回たまたま目にしたアンケートは、アプリ利用者を対象にした調査でした。アプリでは出会いを楽しむ層が多く、結婚意識があいまいでも成立しやすい世界。その場でのアンケートに「事実婚」という選択肢があれば、籍を入れなくてもいい関係性という程度の認識の人も多いのでしょう。一方、アプリの対抗馬になるのが結婚相談所。一番の違いは、入所後すぐに結婚に対する明確な覚悟が求められます。プロフィール、経歴、背景。すべてがオープンで、責任を前提に構築される出会い。その重い責任に、一歩を踏み出せずに“軽い場”に留まる人たちが多いのも事実です。アプリは低コスト、自由、気軽。相談所はコストがかかるが、真剣な出会いの場。そして、現実の婚活は甘くない。「釣り合う人と真剣に向き合う苦行」こそ、この業界の本質です。
「40代以降の結婚観が変わった」
もし、そんな言葉を肯定的にとらえているのならば、それは少し危険です。そう思わせたい誰かが作ったマーケティング戦略的なキャッチコピーに乗せられて、そういう世の中だと思ったとたん思考が停止します。「寂しさを埋めたい」「誰かと生きたい」という根源的な欲求は、どの年代にもあります。ただ、社会の変化や女性の経済的自立が進んだことで、「結婚」という形にこだわる必要がない、もしくは、こだわれなくなっただけなんだと思うんです。
多様性の時代、さまざまな形のパートナーシップが社会的に認められることは大きな進歩だと思います。事実婚もそのひとつの選択肢ではありますが、ある意味、法律婚よりさらに慎重になるべきもので、自由や妥協とはかけ離れています。そもそも、それは本当にあなたが望む関係性なのでしょうか?
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