今を積み重ねたその先に未来がある。 見つからない答えもきっとそこにある
それを見事に体現しているのが宙組の新トップスター・真風涼帆だろう。長身と広い肩幅に長い手足、男役としては「恵まれている」のひと言につきる男らしいビジュアル。そして、それを武器に醸し出される大人の色気……その魅力に圧倒され惹きつけられ多くの観客が恋に落ちてきた。
そんな彼女だが、舞台から降りたその素顔はとてもフランク。東京宝塚劇場で行われた今回の取材、歌の練習をする下級生に「その歌、何だっけ?」と自ら話しかけ、答えを聞くと「すっきりした、ありがとう!」と笑いかける場面も。
「なぜかクールなイメージをもたれることが多いみたいで。初対面のかたにはよく驚かれるんです。“こんなによくしゃべる人だったんだ!”って(笑)」
このギャップと明るい人柄も多くの人を虜にしている魅力のひとつ。早くから大役への抜擢が続きスター街道を突っ走ってきたように見える彼女だが「ここに来るまで、何度も壁にぶち当たっては頭を打ちつけてきました」と笑う。実は努力の人だ。
「子供のころは自分を前向きな人間だと思っていたんですけど、宝塚に入ってそれが打ち砕かれました。私が育ったのはクラシックバレエを習っていることすら珍しい熊本の片田舎。都会でレッスンを重ねてきた同級生には実力が追いつかず、落ち込むこともすごく多かったんです。秀でた才能もなければ、誇れるものすら何もない、もちろん自信なんて1ミリももてませんでした」
悩み迷った時期を経てたどりついたのが「不安を打ち消すのは稽古しかない」という答え。人の何倍も努力を積み重ねてきた真風さんが胸に刻んでいる言葉がある。それは、当時、上級生が投げかけてくれた「今を生きることに集中しなさい」という言葉。今を積み重ねた先に未来は存在する、そこにどれだけ熱量を注ぐかで未来は変わる、その歩み方はずっと変わらない。トップスター就任の心境を尋ねた時に返ってきたのも、彼女らしいこんな答え。
「この雑誌が出るころには、私がトップスターとして初めて立つ舞台『WESTSIDE STORY』がスタートするのですが、今はまだ稽古も始まっていない状態。これからについては“まだわからない”が正直な気持ちなんです。確かなのは(前トップスター)朝夏まなとさんから受け取ったバトンをちゃんとつないでいきたいという強い思いだけ。今はそのバトンをしっかり握りしめ前に進むことが大切なのかなと思っています。その答えもまた今を積み重ねた先にあると、信じて!」
まかぜ・すずほ●熊本県出身。2006年、星組に配属。15年、宙組へ組替え。そして17年11月20日付で朝夏まなとの後任としてトップスター就任。1月12日からスタートする舞台『WEST SIDE STORY』がトップスターとしてのお披露目公演となる