交際開始となった次のデートで私は奴さんにこう告げた。
「私、あなたと結婚したいと思っています」と。
つきあっているのかつきあっていないのかあいまいな状態ではなく、ちゃんと交際したいと言ってもらったことがケビ子の気を大きくし、早いとこ結婚したいって言ってしまいたいという気分にさせた。
私の中での最大のハードルが「交際開始」だったからだと思う。
種田山頭火風に言うと「出会っても出会ってもひとりぼっち」であったから、きちんと交際したいと言われてきちんと恋人になった、というのは、ほぼパートナーとして合格サインをもらったのでは?という前のめりな理解をした。
交際直後に結婚したいなどと女から男に言うなんて普通はできないし、私も言ったことはない。魔がさすというのか出来心で、なのか、言えてしまった。しかし後にも先にも結婚したいと私から言ったのはこの一回だけである。
奴さんは「結婚したいと思っています」と宣告された際、「ハトが豆鉄砲をくらった顔」、の見本を示した。
ところが、この結婚したい宣言は奴さんの気持ちを殊の外揺さぶった。
なぜならこの日以降、奴さんの私に対する態度が豹変した。180度豹変だ。360度豹変だと一周して同じである。
それまでだんだんと打ち解けてはいたもののまだクールで気取った奴さんだったのだが、有り体に言うと溺愛スイッチが入り、優しいまなざしで「俺の大事な人」「俺の彼女」と「俺の」発言が増えた。俺の私。最高じゃないか。
デートで「俺のイタリアン」には行ったことはないが。
奴さんコメント「交際直後に結婚したい宣言されたのはものすごくびっくりしたけど、うれしかった。この人は本気なのだとわかったから俺も本気で向き合わないとならないなと思ったし、簡単に別れないのだなと思ったら愛着が増した」だって!
なるほど~。男性も不安になるもんなのか。考えてもみなかったな。
43歳で(やっと)結婚。
仕事で培ったフットワークと屁理屈と知恵をフル活用してゴールイン。奴さん(夫)は夢見る世話焼きロマンチスト。Instagram(@kbandkbandkb)