階段を駆け上がってきた月組の若きトップスター
「友達の発表会を見てバレエを習い始め、その教室で耳にするようになった“宝塚”というキーワード。いったい、どんなものだろうと興味を惹かれ、バスツアーに参加。初めて宝塚の舞台を見たその時に“私もあのステージに立ちたい!!”と魅了されてしまったんです」
入団3年目に新人公演の初主役を経験し、その後も抜擢に次ぐ抜擢で大役をまかされるように。そして2016年、入団9年目にして月組のトップスターに就任。それは「7年目で就任した天海祐希に次ぐ異例のスピード昇格」と大きな話題を呼んだ。その輝かしい功績、舞台上でのしっかりとした存在感と包容力、真面目な性格も手伝い、クールなイメージを抱かれがちな彼女だが、実は情熱的な体育会系「なぜか私、宝塚音楽学校も一回で合格したと思われがちなのですが。これで最後にしようと思い挑んだ3度目の受験でようやく合格。ここまでの道のりは決して順風満帆ではなく葛藤の連続。悩み迷うことも多かったんです」
大役をまかされるたび感じる重責、自分の思いに関係なくふくらむばかりの周囲の期待。過去には舞台を楽しめない、素直に喜べない、複雑な気持ちを抱えた時期も。若くして注目を集めてきた彼女の道のりはプレッシャーとの戦いだった。それをどう乗り越えてきたのか尋ねた時、返ってきたのも彼女らしい熱い言葉。
「まわりを納得させるには結果を出すしかない。舞台で認めてもらうしかない。それだけを思って前に進んできました。入団3年目に初めて新人公演で大役をいただいたあのころから、ずっと」
誰より真摯に舞台と向き合い、人一倍努力を積み重ねてきた彼女は「時に苦しい思いも経験しましたが、だからこそ強くなれたし、支えてくれる人のありがたみを知り、人の気持ちや痛みをわかる人間でありたいと思えるようになりました。あの経験があったから、今の私がいるんです」と微笑む。トップスターになった今、彼女の口から語られるのは仲間への熱い感謝の気持ち。
「私がトップとして舞台で輝けるのも、私だけの力ではなく、皆がそう見えるように支えてくれるからでもあるんです。相手役として支えてくれた愛希れいかの退団が決定。最近も今の月組を作るうえでとても大切な存在だったかたがたが退団されました。そのかたがたとともに舞台を作り戦ってきた時間は私の人生の大きな糧であり、誇り。宝塚の舞台は限りある世界。誰しもがいつか去り、時代も変わっていく。だからこそ、一瞬一瞬、仲間と今できることを大切に前に進んでいきたいと思うんです」
Profile
たまき・りょう●2008年、宝塚歌劇団に入団し月組に配属。入団3 年目にして新人公演で初主演を務める。13年にバウホールで主演を務めた『月雲の皇子』が好評につき再演。大役を演じながら実力を身につけ、16年、月組のトップスターに就任