入団してからの10年間、 毎日が挑戦の連続でした
「トップスター(当時)龍真咲さんのお相手を務めさせていただく。それはとても光栄なこと。でも、当時の私は娘役として本当に未熟で、正直わからないことだらけでした。龍さんの背中を追いかけるのに必死の毎日。プレッシャーに押しつぶされそうになったこともありました。そんな時に背中を押してくれたのが“立ち止まってもいいけど後ろには下がるな”という龍さんの言葉だったんです」
未熟さをカバーするのは努力だけ。体当たりで学びながら歩んできた。誰もが認めるその実力は「出会った作品や役柄が育ててくれた」もの。そんな歩みの中で、彼女が何度も繰り返し見た映像がある。それは小学生のころ、生まれて初めて観た宝塚の舞台、宙組の『エクスカリバー』『シトラスの風』だ。
「どんな時も私に前進する力を届けてくれる“宝塚が好き”という強い思い。でも、それを忘れそうになるほど、いっぱいいっぱいになってしまう時期もあって……。そんな時こそ何度も観ました。この作品は“あの舞台に立ちたい”と想い焦がれていた時代の気持ちが蘇る、私のときめきの宝庫なんです」
迷い悩んだ時、彼女がいつも戻るのは、憧れを抱きながら座っていたあのころの客席。「宝塚を愛する気持ちと希望を忘れない」そんな思いを込めてつけた“愛希れいか”という名前。その名のとおり、初心を忘れず、奢ることなく、すべてを舞台に注いできた。必死に走り続け、入団10年目を迎えた今年、彼女は退団という大きな決断を下した。
「まわりからはさまざまな言葉をいただいたのですが、特に印象に残っているのは、お相手を務めさせていただいているトップスター珠城(りょう)さんからの“よく頑張ったね”というお言葉。珠城さんとは新人公演時代も一緒に過ごし、月組でともに歩ませていただきました。常にそばで見てくださっていたかたからの言葉は……本当にうれしくて」
退団公演を目前に控えた彼女は「仲間と離れるのは寂しいですが、舞台に関しては悔いがないと言える自分がいます。それを最後まで全うしたいです」と微笑んだ。
Profile
まなき・れいか●2009年、宝塚歌劇団に入団し月組に配属。当初は男役だったが11年に娘役に転向。12年に月組トップ娘役に就任する。龍真咲、珠城りょうと2人のトップスターの相手役を務め、今年に入り退団を発表。『エリザベート』が、彼女の最後の公演となる