先日、女友達A子さん(45歳)と老後の話になりました。
彼女はバリバリの独身キャリア女性でしっかり稼いでいます。
「それだけ稼いでいたら、老後も安心でしょ」と聞いてみると
「私貯金ないもん」と言うのです。
仕事柄、洋服も買わなきゃいけないし、エステやトレーニングもやめられない。食事は外食が多くてお金なんて貯まらないのだそう。でも今は、働いている限りお給料が入ってくるから困ることはありません。
でも、そんな彼女でも「こんな生活してたら、老後どうなるか不安だわ・・・・・・」といいます。
彼女のように日々の生活に追われてお金のことを真剣に考えることもせず、でも漠然とした不安を持っている方はとても多いと思います。
ならば、この不安、解消していきましょう。不安解消の第一歩は、敵を知ることです。実は、老後に対する不安は、何がどう困るのかがわからない不安。わからないことに対する不安なのです。老後の不安を解消するため、老後にしっかり備えるためにいくら必要かを見ていきましょう。
【老後までに準備が必要なお金の計算方法】
あくまでもざっくりでかまいません。まずは、全体像をつかむことが大事です。
【1】老後の生活費(65歳からと仮定)
(必要な生活費-年金額)×12カ月×25年
【2】不測の事態に備えるお金(病気・介護・家の改築など)
病気・介護(差額ベッド代や保険のきかない治療など)に数百万円以上かかることもある。その他、老人ホームへの入居や家の増改築・車の購入や子供の結婚費用など
【3】娯楽費・予備費
旅行・趣味・娯楽などにかかるお金
【1】+【2】+【3】-(退職金+相続でもらうお金+現在の貯蓄)=老後までに準備が必要なお金(65歳までの貯蓄目標額)
これを機会に自分に必要な老後資金を計算してみましょう。
■老後に必要な生活費って?
老後に必要な生活費は、一般的には現役時代の6割~7割といわれています。25年で計算しているのは、65歳女性の平均余命が約25年だからです。65歳から25年ということは、90歳までを前提に計算しています。「うちは長生きの家系なの!」という方は少し上乗せして計算してください。
■年金はいくらもらえるの?
年金の額は、「ねんきん定期便」で確認できます。「ねんきん定期便」は、毎年誕生月に送られてきます。日本年金機構が運営する「ねんきんネット」というサイトで年金額のシミュレーションもできます。ちなみに、最新のデータによると、厚生年金の平均月額は14万5千円です。
■退職金・企業年金はいくらもらえるの?
会社の管理部署で確認できます。とはいっても、「私の退職金いくらですか?」なんて聞きにくいわ、という場合、「モデル退職金の額を教えてください」と聞いてみる方法も。ちなみに、厚生労働省の最新のデータによると、平成28年度に支給された勤続35年以上の定年退職者の学歴・職種別退職金は次の通りです。
大学卒(管理・事務・技術職):1997万円
高校卒(管理・事務・技術職):1724万円
高校卒(現業職):1627万円
■不測の事態に備えるお金・娯楽費・予備費はいくら?
これは、人ごとに大きく変わります。特に、医療費は万が一かかると大きく家計を圧迫しますから、医療保険で補填できるよう、ぜひ加入しておいていただきたいと思います。最近は、保険のきかない高額治療を負担してくれる特約が数百円からつけることができるので活用してください。これらは、厳密な金額をはじき出すことはむずかしいですが、ざっくりでよいので計算してみてください。(年間40万円平均と想定すると、1000万円程度とか)
■女友達A子さん(45歳)の場合
【1】(必要な生活費 20万円-年金14万円)×12カ月×25年=1800万円
【2】不測の事態のためのお金 車の買い替えやマンションのリフォームも考えて1000万円
【3】娯楽費・予備費 海外に年に1度は行きたいから1000万円
※住宅ローンは65歳で完済予定
【1】+【2】+【3】-2700万円(退職金1500万円+相続しそうな金額1000万円+今の貯金200万円)=1100万円
A子さんは、65歳までの20年で1100万円を貯めることが必要ということになります。年間55万円です。
ね、見えないものを見えるようにすると、不安が少し消えていきませんか?
この方法で老後資金を考える時に、ちょっと気を付けていただきたいことをアラフォーのライフスタイル・タイプ別に考えてみました。
■住宅ローンが残っている人は…
住宅ローンが65歳を超えて完済する人は、老後までに準備が必要なお金の計算で65歳時点の住宅ローンの残額を足して必要額を計算してください。
■子供のいる人は…
子供のいる人は、老後資金だけではなく、子供の教育資金を並行して考える必要があります。子供がいつ、いくらの教育費が必要なのかを考え、そこに向かって教育費を蓄える必要があります。
■独身の人は…
独身の人は、将来介護などが必要になった場合、家族に頼ることができない可能性があります。有料の介護サービスを受けるために、介護資金もある程度考えておきたいところです。最近は、民間の介護保険も充実していますので、活用してもよいでしょう。
■共働きの人は…
生涯共働きであれば、収入も年金もダブルインカムで、豊かな老後が過ごせそうな共働き世帯ですが、共働きの家庭はお金に無頓着なことも多く、出費も多い傾向にあります。どちらかが、仕事をやめたりする可能性も考え、しっかりと計画をたてていただきたいです。
- 板倉 京(いたくら みやこ)
- 株式会社WTパートナーズ http://wt-partners.jp/
代表取締役 税理士 IFA
成城大学卒業。保険会社・コンサルティング会社、税理士法人等で個人の資産や相続の業務に携わる。資産運用コンサルティングを行う(株)WTパートナーズ代表。NHK『あさイチ』などのテレビ出演や全国での講演、書籍の執筆などの活動も多数。著書に『相続はつらいよ「モメるケース」から考える相続対策』(知恵の森文庫)、『夫に読ませたくない相続の教科書』(文春新書)がある。