星組、花組、宙組の 経験は財産であり宝物
2017年、花組から宙組への組替えを経験。今の心境を尋ねると、飛び出したのがこのエピソード。「貴重な休演日の早朝に家を出て、車を2時間運転して、けっこうな山道を登ったのに……。つまり、それくらい最近の私は元気なんです」と笑う。
「宙組では想像以上にのびのびとやらせていただいています。トップスターの真風(涼帆)さんは、かつて星組で同じ時間を過ごした経験があり、私にとっては未熟時代を見守ってくださった上級生でもあります。また、宙組には仲のいい同期もたくさんいて。そんな環境も大きいのか、また下級生に戻ったような、なんだか若返ったような、今はそんな気持ちなんです」
舞台上でもこんな変化が。
「振り返ると、花組時代は背伸びして“頑張らなければ”と肩肘張っていたような気がします。でも今は“やらなくては”ではなく“やってやる!”という気持ちで舞台に挑戦できている。それは、私の中に余裕が生まれたことが大きいのかもしれません。以前はムダが嫌いで、何をするにも計画を立てて動くタイプだったのですが、最近は予定通りにいかない時間も楽しめるようになりました。いつも“足りない! 足りない!”とあせっていた気持ちが、今は“自分の中にあるものを武器にして挑めばいいのではないか”そんなふうに変わり始めている自分を感じています」
経験の積み重ねがあってこそ生まれる自信と余裕。舞台上での貫禄や色気が驚くほどにグッと増した理由もそこにあるのだろう。入団後、2回の組替えにより、星組、花組、宙組に所属。宝塚に存在する5組のうちの3組を経験している、芹香さんは希有なタカラジェンヌでもある。
「今回の組替えで改めて感じたのが“それぞれの組にはカラーがある”ということです。私が思う星組は根性の体育会系。厳しくも愛にあふれた環境の中で、折れない心、強いメンタルを手に入れることができました。花組は舞台に対するプライドが高く、いかに自分を素敵に見せることができるか、いい意味で競い合う気持ちを教えてくれた。同時に、より高みを目ざす舞台作りの精神も。それだけに、技術的にも人間的にも追いつかず、苦しさとの戦いでもあったのですが。だからこそ、成長することもできたと心から感謝しています。そして今、宙組では“もう一度、楽しもう”という気持ちを届けてもらっています。3組での経験は今の私を形成している財産でもあり宝物。それを糧に“今の自分が感じるもの”を信じながら、これからも突き進んでいきたいです」
Profile
せりか・とあ●2007年、宝塚歌劇団に入団。星組に配属された後、12年に花組へ、17年は宙組へと組替え。それぞれの組で経験を積み重ね、確実に実力を伸ばし、舞台上で圧倒的な存在感を放つ。その貫禄と色気に恋に落ちる観客多数。今注目を集めている宙組男役
NEXT STAGE
ミュージカル 『群盗-Die Räuber-』
-フリードリッヒ・フォン・シラー作「群盗」より-