【1】腸内環境を整えるメリットって?
☆お話をうかがったのは…
小林メディカルクリニック東京院長 小林暁子先生
医学博士。内科、皮膚科のほか女性外来や便秘外来も併設し、総合的な診療を行う。著書は『医者が教える最高の美肌術』(アスコム)など
健康も見た目の若々しさも腸内環境しだいで変わる
「腸には食べた物を消化・吸収し、排泄する役割があるのはご存じだと思いますが、もうひとつの大きな役割が免疫です。腸は食べた物とともに異物や病原菌が侵入しやすい臓器なので、これを撃退するため腸には全身の免疫細胞の約7割が集まっているとされています。腸は私たちが病気にならないように守ってくれる重要な臓器なのです」
このように重要な働きを担っているからこそ整えておきたいのが腸内環境。
「腸内には100兆個以上もの腸内細菌が棲みついています。腸内細菌は、健康に役立つ善玉菌、増えすぎると腸の内容物を腐敗させて発がん性物質などを産生する悪玉菌、状況に応じて優勢な側につく日和見菌の3つに分かれ、理想的な比率は2:1:7とされています。善玉菌が減ると日和見菌が悪玉菌に加勢して悪玉菌が増えるので、日和見菌を善玉菌の味方につけて善玉菌優健康も見た目の若々しさも腸内環境しだいで変わる勢な状態にしておくことが大切です」
最近の研究では、腸内環境を整えることでさまざまな病気の予防につながることもわかってきているとか。
「腸内環境を整えれば、風邪やインフルエンザの予防はもちろん、腎臓や肝臓の病気、生活習慣病やがん、アルツハイマー、うつ、不安神経症、不眠症などあらゆる種類の病気予防につながることがわかってきています(1)」
さらに注目されているのが腸と脳が深くかかわり合っているということ(2)。
「腸の動きを司るのが自律神経。心身が活動・緊張モードになって交感神経が優位になると腸の動きは悪くなり、逆に心身がリラックスモードになって副交感神経が優位になると腸の動きは活性化します。ストレスが多く交感神経が優位になりがちな現代人に便秘が多いのはこのためです。そして腸は自律神経を介して脳とも深くつながっています。食物繊維をしっかりとって腸内環境を整えたら、精神的ストレスが抑えられたという実験結果もあるように、腸の状が脳や心に大きな影響を及ぼすのです。腸内環境が変わったら性格まで変わったという例もあります」
注意すべきは、年齢を重ねるにつれ腸内環境は悪くなりやすいということ。
「腸内の善玉菌は加齢とともに減っていくうえ、腸の細胞も老化していくため、腸の動きが悪くなり悪玉菌が増えやすくなります。とはいえアラフォーはまだそれほどは腸の老化は進んでいない段階。腸内環境は食事や運動などの生活習慣で整えられるので、今から腸活を始めておけば年をとってから慌てなくてすみますし、更年期のトラブルの予防効果も期待できます(3)」
腸活を続けることで、見た目の老化を遅らせることも可能だとか。
「腸内環境が悪いと腸内で発生した有害物質が血液にのって全身に運ばれ、肌のハリや髪のツヤを失わせ、代謝も下がって太りやすくなり老化が進みます。でも腸内環境を整えれば血液の質がよくなるので美肌・美髪になり、太りにくく若々しくなるのです(4)」
つまり年齢が気になり始めるアラフォーの今こそ腸活の始めどき(5)。
「おすすめの腸活は、毎日の食事で食物繊維やオリゴ糖の多い食品、乳酸菌を多く含む発酵食品などをしっかりとり、適度な運動をすることです。ストレスをため込まないことも大事です」
1.がんからうつまで、あらゆる病気を防ぐ
腸は全身の免疫細胞の約7 割が集まる最大の免疫器官。腸内環境を整えると、花粉症などのアレルギー症状をはじめ、糖尿病などの生活習慣病、大腸がんや乳がん、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ、不安神経症、不眠などさまざまな病気の改善につながることが最近の研究でわかってきている
2.腸と脳の密接な関係が、少しずつ明らかに
腸は自律神経を介して脳とつながっていて、腸内環境が悪くなるとそのストレスが脳に伝わり、脳もストレスを感じる。逆に脳がストレスを感じると、腸にそのストレスが伝わり、腸の動きが悪くなる。このような腸と脳との密接なつながりを「脳腸相関」と言い、最近、注目を集めている。
3.更年期の症状にも、腸活は効果的
アラフォーでもストレスや不規則な生活などさまざまな理由で、早めに更年期のような不調が出る場合がある。こんな事態を防ぐのにも腸内環境を整えることは効果的なのだとか。「私のクリニックの更年期外来に来た患者さんには必ず腸内環境を整えることをすすめますが、それだけで更年期の不調が改善してしまうことも多いんですよ」
4.腸が整えば、美容面や精神面にもプラスに
アラフォーでもストレスや不規則な生活などさまざまな理由で、早めに更年期のような不調が出る場合がある。こんな事態を防ぐのにも腸内環境を整えることは効果的なのだとか。「私のクリニックの更年期外来に来た患者さんには必ず腸内環境を整えることをすすめますが、それだけで更年期の不調が改善してしまうことも多いんですよ」
5.アラフォーは腸活の始めどき!
加齢とともに全身の細胞が老化していくように、腸の細胞も老化していくうえ、中高年以降になると腸内の善玉菌がしだいに減っていくため腸内環境は悪化しやすくなる。ただ、まだそこまで老化が進んでいないアラフォーなら、生活習慣しだいで腸内環境をよくすることは可能。まさに腸活の始めどき!
【2】セルフ腸チェック&腸律セラピーに挑戦
☆お話をうかがったのは…
腸律サロン「セラピーエ」代表 小澤かおりさん
腸律師。長年、介護業界で働く中で排便トラブルに陥る人が多いことに着目。病気や腸のことを学び、"腸律セラピー"を確立。https://therapyie.com/
今、話題なのが"腸律師"小澤かおりさんの「腸律セラピー」。「腸には感情や性格などが表れ、どこが硬いかでその時の感情や性格などがわかります。この硬い部分を中心に、腸全体を優しく揺らしてほぐすのが腸律セラピー。腸の硬さが取れると、腸の働きが活性化するだけでなく、心の問題も解消しやすくなりますよ」(小澤さん)
■横行結腸
心配事や不安があったり、くよくよと思い悩みがちな人は、ここが硬くなりやすい。
■下行結腸
精神的に緊張感が高まっている時や、人間関係のストレスがある時などは、ここを押すと痛みが出やすい。
■S状結腸
思ったことをハッキリ言えずに心にため込みやすい人は、ここを押すと痛みが出たり、便がたまりやすい
■みぞおち
自律神経が集中する部分。睡眠不足だったり、睡眠の質が悪いと硬くなる。
■腎
おへそを中心にした小時計の3 時と9時の部分が硬い人は水分が不足ぎみ。
■横行結腸
イライラしていたり、ストレスがたまっているとこの部分が張りやすい。肝臓が疲れている人もここが張る。
■上行結腸
下腹部の動きが悪く、消化物の通過速度が遅くなると、ここに張り感が出やすい。
■盲腸付近
頑固な人や、物事に固執しやすい人は、大腸から小腸につながるこの部分が硬くなりがち。
【腸律セラピーを行う時の注意点 】
★必ず、寝転がった状態で行う。立ったままだと、正しく腸の状態を把握できない。
★手で、優しくさするように。もんだり強く押したりするのはNG。
★服の上から行ってOK。体を締めつけない服装で。
★いつ、何回行っても大丈夫。
■心地よくて眠くなるほど。腸律セラピーのhow to
①小時計の6時から開始
おへそを中心に手で逆三角形を作り、利き手を上にして指を重ね、そこを小時計の6時部分とし、ここを左右に10回揺らす
②位置をずらして同様に
次に、9時、12時、3時と手を移動させながら、それぞれの場所を左右に10回揺らす。ゆっくりと行うこと。
③大時計の6時を揺らす
手を重ねたまま、恥骨の少し上くらいに当てる。この位置を大時計の6時の部分とし、ここを左右に10回揺らす。
④大時計を1周揺らす
大時計の9時、12時、3時の位置に手を移動させながら、それぞれの場所を左右に10回揺らす。ゆっくりと行って。
⑤下がった腸を引き上げ
恥骨の上に両手の小指の側面を押し当て、下がった腸を引き上げるイメージで腸をすくい上げるようにする。
⑥腸を元の位置に固定
引き上げたらその位置で両手をパタンとおなか側に倒し、軽く圧をかけて10秒キープ。これで終了。
【3】今さら聞けない!素朴な腸のQ&A
A.サプリで逆におなかが張る人も。選ぶなら質のよいものを
「乳酸菌は種類によってその人に合うかどうかが異なり、合わないものをとるとおなかが張ったりすることも。また、添加物が多く含まれ、体によくないものもあります。サプリメントをとるなら質のよいものを選ぶことが大事。そして2 週間とり続けてみてよい変化があれば合っていると考えられます。乳酸菌はあくまでも食事から補い、サプリメントは補助的に利用を」
A.2日に1回で十分だけど、腸活をして毎日お通じがあるのが◎
「お通じは基本的に2 日に1回あれば便秘ではないとされていて、病気ではありません。ただ本来は、食物繊維や発酵食品などを十分にとっていて、適度な運動をしていたら、毎日出るのがあたりまえです。毎日便通がないなら、しっかりと腸活をして毎日出るのを目ざすのが理想的。とはいえ便通がないことを気にしすぎると、それがストレスになって逆に便秘を招いてしまうので、あまり神経質にならないことも大切」
A.食物繊維が豊富な穀物などの糖質まで制限するのはNG
「糖質の中でも砂糖が多い甘いものは、腸によくないので減らしたほうがいいですが、ごはんなどの穀物や、にんじんやいも類など食物繊維が多い糖質をいっさいカットすると便秘になりやすくなります。実際に極端な糖質制限をしている人の多くは便秘になっているようです。これらの糖質は極端に減らさず、適度にとるほうが腸の健康のためにはおすすめ」
A.悪い腸内環境が やせられない原因かも
「やせにくいのは腸内環境が悪い可能性があります。腸内環境が悪いと血液の質が下がって必要な栄養素が細胞に取り込まれず脂肪として蓄えられ、代謝も下がるのでやせにくくなるのです。逆に腸内環境がいいと、腸から取り込まれた栄養素が血液にのってスムーズに細胞に届けられるためエネルギー代謝が上がり、老廃物の排泄も促されるのでやせやすくなります」
A.人工的に腸を刺激するのはおすすめしません
「腸はデリケートな臓器なので、頻回に腸内洗浄のような人工的な方法で無理に刺激するのはよくありません。腸の調子が悪い時には、断食をして腸を休めるほうがおすすめです。断食は古来から行われてきた方法で、動物も調子が悪い時には何も食べず断食をします。人工的な方法より、そういった古くから行われている自然な方法のほうが◎」
A.アレルギーを避けるため、同じものを食べ続けるのはNGです
「腸にいいと言われている食品はいろいろありますが、体質は人によって違い、その食品がすべての人に合うわけではありません。また、腸にいいからといって同じ食品を食べ続けるとアレルギーを発症する場合もあります。ひとつのものを偏って食べるのでなく、さまざまな食品をバランスよくとるほうが、腸内細菌の種類も増えるのでおすすめです」
A.頑張りすぎない、細く長く続けるのが大事
「あれもこれもといろいろな腸活をやろうとすると、ストレスになって交感神経が優位になり、逆に腸の動きを悪くしてしまいますし、長続きしません。例えばランチのメニューを選ぶ時、腸によさそうなものを選んでみるとか、できることを1 日にひとつだけでもいいのでちょこちょこと実践して、少しずつ増やしていくほうが長続きして効果も出ますよ」
モデル/Ami(美女組№124) 取材・文/和田美穂