ー『眩しくて(原題)』がKNTVで日本初放送されると聞き、本当に嬉しいです。日本の皆さんにも楽しんでご覧いただき、幸せな気分になっていただけたらと思います。
●今回演じられた役柄と見どころを教えてください。
ー僕が演じたイ・ジュナは、20代ならではのきらびやかな時間を捨てて、無気力に生きていくキャラクターです。韓国では「時間離脱ロマンス」というキャッチフレーズだったのですが、ロマンスというよりは、登場人物一人ひとりの感情とストーリーに注目してご覧いただくと、ロマンスだけではない何かをたくさん感じていただけるのではないかと思っています。
●制作発表会でご自身とジュナが似ていると仰っていましたが?
ーものすごく似ているというわけではありません(笑)僕は、キャラクターを見ながら、自分と似ている点はどんなところがあるか、毎回考えるんです。今回の作品だけでなく、全ての作品で役との共通点を探す方です。今回演じたジュナは祖母と暮らしていますが、僕も祖母と過ごしたことがあり、そんな些細な部分が似ていたと思います。
●ジュナのようにジュヒョクさん自身もおばあさまとの思い出はありますか?
ー祖母とは今でも一緒に住んでいます。僕の祖母もジュナのおばあちゃんのように美味しいご飯をいつも作ってくれるんです。楽しそうに笑っている姿を見ると、僕も嬉しくなります。
●出演を決めた理由は「キム・ヘジャさん、ハン・ジミンさんと演技してみたかったから」と仰っていましたが、実際にお二人と共演してみていかがでしたか?
ーヘジャさんとジミンさんと一緒に演技することができるということだけでも、僕には大きなことで、とても幸せでした!このような大先輩たちといつまたご一緒できるかと考えました。本作の前に参加した映画『安市城 グレート・バトル』という作品でもそうですが、素晴らしい先輩たちと一緒にお芝居をすることができ、とてもワクワクしました。もちろん緊張もしましたが、一緒にお芝居をした時の自分の姿も見てみたかったですし、様々なことを学べ、本当に幸せでした。台本を初めてもらった時は、台本自体からも僕に与える感覚はすごいものでした。実は以前から平凡な人物を演じてみたいと思っていたんです。内容は平凡ではなくても、平凡で人間らしい生き方をするキャラクターを演じたかったので、その部分においても是非演じたいと思い、出演を決めました。
●撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
ー撮影現場は本当に和気あいあいとしていました!その中心に監督がいらっしゃったので現場が迅速に正確に回っていましたし、現場自体がとても仲睦まじく全てのスタッフと俳優が一緒になって作り上げている感じがしました。俳優たちだけでなくスタッフの方たち含め、誰一人欠けることなくみんなが幸せに撮影できたことが一番記憶に残っています。
●ヘジャは時計を使って時間を戻すことができますが、ヘジャのように時間を戻す能力があるとしたら戻りたい時は?
ー正直、僕はまだ戻りたい瞬間はありません。自分なりに一生懸命生きてきたと思っていますし、今はまだ戻ったところで思春期や幼年期なので、その時は僕が何か考えたり何かをしたりできる年代ではないですから。なので、今はまだ戻りたいと思う瞬間はないように思います。
●では未来に行けるとしたら、行ってみたい未来は?
ー僕は21歳で演技を始めたんですが、専門的に演技を学んで始めたわけではないので、すぐに自分が上手くできるとは思っていませんでした。一年後もちゃんとできているか悩みながら演技者としての道を歩んできて、その気持ちがずっとあったのでいつも10年後の自分の姿が気になっていました。30歳になった時の自分が、この仕事を地道に続けているのか、10年後の俳優ナム・ジュヒョクが、どんな姿になっているか気になっていたんです。その瞬間のために、今もたゆまず目標を叶えられるように走り続けている途中です。なので、今だと5年後が一番気になります。果たして自分が夢見ていた目標が叶っているか、それがとても気になります。
●俳優としての6年間は計画通りにいっていますか?
ー6年が過ぎましたが、計画通りにいったとは思っていません。なぜなら、10年という目標を立てたので、今はまだその過程にいるんです。ですから、「自分はうまく目標に向かっているのか」と今は考えてもいません。30歳になった時に、振り返ってみると後悔したり、「この時なぜ自分はもっとうまくできなかったのか」と反省したりもするかもしれませんが、その時になれば自分の10年間を振り返ることができると思います。30歳になった時はまた10年後が気になると思います。いつも大きく目標を立てながら生き続けています。
●ソン・ホジュンさんとは『三食ごはん』の共演でおなじみですが、ドラマで共演してみていかがでしたか?
ー実はこの質問は本当にたくさん受けたのですが、ホジュンさんとは台本の読み合わせの時に一度会い、撮影現場で一度だけ会いました。それから、会食の時にたくさん会っています。というのも、ホジュンさんと僕は一緒になるシーンがなかったんです…。それで、会食の度にいつも「僕たち同じドラマを撮ってるんだよね?」とお互い話しています(笑)ホジュンさんと一緒に撮影したことがないので、ホジュンさんはどのように撮影しているのか分からないんです。僕が演じるジュナは、演じながらとても悲しく大変な部分があるのですが、放送を見て、ホジュンさんはこんなにも笑いながら撮影していたんだと知りました。ホジュンさんからしたら、すごく幸せで面白いドラマだと思っていたら、僕の方は苦労しながら撮影しているんだねとお互いそんな話をたくさんしました(笑)
●記憶に残っているセリフや場面はありますか?
ー第6話で僕が70歳のヘジャに怒りながら自分の全てをぶちまけるシーンがあります。人間なら誰しもがそんな気持ちを持っていると思います。自分は辛いのに、なぜ周りは「お前はもっと頑張らなければいけない」と言うのか、頑張れる方法が何かも分からないし、どうしたら自分が大変な状況を脱することができるのかも分からないのに、なぜ周りが自分に頑張れと言うのか分からないと、頼むから僕の人生にああだこうだ言わないでくれと言うシーンがあります。現実ではほとんどの人はジュナのように気持ちを心の中に抱きつつも吐き出す事はできないと思うんです。僕自身もやはりそんな気持ちと言葉を心の奥底に留めていた時もあり、ドラマでジュナとしてこのセリフを言う時、ジュナというキャラクターが辛い人生を生きているので気の毒でかわいそうでした。また僕としては自分もこんな風に言う状況はあるのかなと考えたんですが、ジュナというキャラクターがそれくらい本当に大変で絶望的だからこそこのような吐き出しにくいことを言うんだ、と感じました。そのシーンを撮影したときは本当にたくさんのことを考えていたように思います。それから第9話では、ネタバレになってしまうかもしれませんが(笑)ある出来事がおき、ジュナが独りでうなだれるのですが、ヘジャがたくさんの話をしてくれる場面があります。生きるとは大したことではないと、生きることについての話をたくさんしてくれるのですが、撮影をしながらその話を聴いている自分自身と、ジュナの感情が重なりました。ジュナがとても気の毒で、撮影が終わってから自分としてももう一度考えるようになりました。心に響いた言葉があるのですが、ヘジャが最後に言う「あなたも自分の人生に愛情をもってくれたらいい」というセリフを聞いて、自分自身を振り返るようになり、自分を苦しめて生きているのではないかと考え、撮影を通して、僕の人生についても、これからの心持ちとしても、たくさん考えるようになりました。それから、本当につらく、地獄のような人生を歩んでいる人でも、光が見えない人でも、隣で誰かが1人でもこのように自分にいい言葉をかけてくれる人がいれば、その人がいることだけでも元気を出して生きていけると僕は思います。そのような人たちのために『眩しくて(原題)』のイ・ジュナという役を諦めずに演じたかったです。このドラマを見て元気になってくださったら嬉しいですし、自分自身を貶すことなく、自分自身を思いやってほしいと思います。人生はとても長いものですが、今この瞬間が辛くても、何としてでも打ち勝ってほしいと、この作品に参加しながら思っていました。
●今仰ったようにジュナは辛い人生を生きるキャラクターですが、演じながら大変だった点や気を遣った部分はありますか?
ー演じながら大変だった点はたくさんありました。僕も気づかないうちにジュナにものすごく感情移入していたと思います。これは少し笑えるエピソードでもあるのですが、『眩しくて(原題)』の撮影中に、海外スケジュールがあったんです。海外に行く時に空港で撮られた写真を見ると、僕の目つきが悲しい子どものようだと周りからたくさん言われました。
●今は大丈夫ですか?
ー今でも悲しそうに見えると言われますが(笑)、そのくらい僕が役に入り込んでいたという証拠なので、一方では胸がいっぱいで嬉しく、一方ではキャラクターについてたくさん考えるようになった気がします。
●ハン・ジミンさんとのラブシーンはいかがでしたか?
ーこれもネタバレになってしまいそうですが(笑)エピソードを挙げるとすれば、幸せだった全てのロマンスシーンがとても悲しかったです。とても幸せなシーンなのにその全てのシーンで心が痛く、切なく寂しかったです。
●撮影現場でのムードメーカーはどなたでしたか?
ーこんなに憂鬱で沈鬱な状況に陥っているジュナを撮影する時の現場のムードメーカーは監督でした(笑)キム・ソギュン監督は今回の作品を通じて初めてお会いし、一緒に作品に携わったのですが、真のリーダーでした。全てのことが新鮮に感じられました。監督から撮影に入る前に「この作品で癒してあげるよ」と言っていただいたのですが、ジュナという役は正直、感情的に大変でした。それでも、監督がそのように言ってくださった理由を感じ取ることができました。キム・ソギュン監督に呼んでいただければ、またいつでも一緒に撮影したいです!とても良い監督で、僕の演技人生で最も忘れられない監督です。
●キム・ソギュン監督の演出スタイルはいかがでしたか?
ー演出もとても素晴らしく、演じる俳優の立場から、俳優が辛くないように細かく説明してくださり、何か違うなというときは細かい話を交わしました。そういった部分では、自分が間違った道に行こうとしている場合には確実に掴んでくださる監督なので、僕自身はすごく大きな力になりました。監督をひたすらに信じてついていけたんだと思います。監督のお力もあって、僕の演技もたくさんの方から良いお言葉をいただけているのではないかと思います。
●この作品がナム・ジュヒョクさんに残したものは?
ーまず一番は「人」です。ご一緒させていただいた全ての方々が僕にとってとても大切な人になりました。もう一つは、僕の人生についてもう一度考えてみることができたことです。そしてもう一つあるとするならば、より一生懸命に生きなければならない、と感じることができたことです。
●最後に放送を楽しみにしているファンにメッセージをお願いいたします。
ー5月から『眩しくて(原題)』が放送されます。楽しんでご覧いただき、皆さんがこのドラマを見て、幸せになってくださったら嬉しいです。
桂まり●かつらまり 韓流予報士(?)。温泉保養士。「SPUR」や「eclat」などで、トラベル、フード記事など担当するライター。趣味は各国で料理教室に行くこと。「専門外ではありますが、泣いて笑って癒される韓流ドラマのお勧めを不定期で紹介します」