いかんいかん、前置きが長くなりました。じつは今回紹介するオザキアキラ先生の『ふしぎの国の有栖川さん』のヒロインが恋するのは、電車の中でいつも一緒になる男の子。そしてパクチー先輩とは違い、彼女は恋を実らせていくのです。
芝浜女子高等学校1年の有栖川鈴(ありすがわすず)は、過保護な祖父に大切に育てられたピュアで古風な女の子。門限は夕方6時で、趣味は落語。同級生たちが「彼氏が欲しい!!」と合コンに積極的な中、彼女は恋愛に奥手で、男の子に興味すらもてないでいました。そんな彼女が偶然、電車の中で出会ったのが、隣町の男子校に通うイケメンの野宮宗介(のみやそうすけ)。
そのルックスから、女子からはつねにモテモテな野宮くんは、恋愛に若干冷めたところがあって、他の男子のようにガツガツしていません。「男の子とどう接していいかわからない!!」とパニくる有栖川さんに対してもいつも紳士的にやさしく接してくれます。そんな野宮くんに有栖川さんは、次第に惹かれていくのですが、それが恋とは気づきません。一方、天然だけれど、しっかりと自分をもっている有栖川さんに野宮くんも魅力を感じながら、なかなか告白に至らず。一向に距離の縮まらない二人がじれったくて、もどかしくて、本人たち以上に友達がやきもきしっぱなし。
また、野宮くんと一緒にいるのが楽しくて仕方ないけれど、「これ以上、楽しくなるのが怖い」と恋に躊躇する有栖川さんのストイックさは、とってもキュートなんですよねぇ。そして恋愛に大いなる夢を抱いている彼女の姿は、コミカルで笑える半面、とても微笑ましくて温かい気持ちにさせられます。アラフォーになって経験値が増えると、もはや恋愛を神聖化することが難しくなるけれど、いや、もっと恋愛に理想を抱いていいんじゃないかと思わせてくれる作品です。
個人的にパクチー先輩が気に入っているのは、野宮くんの親友のメガネの菅谷くん。
「女の子じゃなくても、俺おまえらといても十分楽しい」と野宮くんに言われて、「やめろよ。赤い実がはじけちゃうだろ」と照れるあたり、たまりません。しかもメガネをとると、めっちゃ美形なのに、本人は全然気づいてない模様。おつきあいするなら、ぜひ菅谷くんで!!
それでは試し読み、どうぞ~!