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苦くて切ない青春を『かくかくしかじか』でしみじみと振り返る【パクチー先輩のマンガ日記#36】         

「自分は絵の天才!」と自惚れていた高3の明子が出会ったのは、スパルタ絵画教師・日高先生。少女マンガ家を夢みたあの頃を描いた著者の自伝的ストーリーに号泣!
マンガや本に夢中になって電車を乗り過ごしたこと、みなさんはありますか? パクチー先輩はたまにあります。小田急線で通っているんですが、代々木上原駅で千代田線に乗り換えないといけないのに、気がつくと新宿~新宿~という車掌さんの声。「うわ~っ、遅刻だ!」と思いながら、あわてて電車を飛び降りながらも物語の余韻がいつまでも心に残っていて、しばらく夢見心地だったりするんですよね。

今週紹介する東村アキコ先生の珠玉の名作『かくかくしかじか』は、そんな作品のひとつ。東村先生の自伝的ストーリーということでも話題となりました。

主人公は、高校3年生の林明子。温暖な宮崎県で伸び伸びと育ったノー天気な女子高生。自分は絵の天才だと自惚れていて、将来は少女マンガ家になって成功すると信じています。そんな彼女が美大受験のために海辺の絵画教室に通うことに。ところがそこの教室の日高先生は超スパルタ式。生徒に罵声を浴びせ、竹刀でビシバシと叩きながら、生徒たちの技術と根性を鍛え上げていくという変わり者でした。

そんな日高先生に最初は反感を持つ明子ですが、先生の絵に対する純粋な思いに触れるうちに、次第に打ち解け、信頼を寄せるようになっていきます。実際、明子の絵の技術は猛スピードで上達し、金沢の美大になんとか合格。でも、明子は大学では恋や遊びに夢中で、絵を描かなくなっていきます。さらに少女マンガ家になる夢を捨てきれず、次第に日高先生からも心が離れていくのでした……。

本作は、マンガ家として成功した東村先生が、過去の記憶を振り返る形で描かれていて、「私はどうやってマンガ家になったか」という女版『まんが道』的な作品ですが、話の核になっているのは、やはり明子と日高先生の師弟関係。「絵は毎日描かんとダメや」「絵を描き続けろ」と明子に言い続け、自らも全身全霊で絵と向き合っていた日高先生。一方、しんどいことから逃げて、絵画から遠ざかっていく明子。

先生の教えのひとつひとつが、「今だったらわかる」けれど、当時は何もわかっていなかったという後悔と切なさが、明子の胸を去来して、読んでいると胸が苦しくなってきます。若さゆえの愚行は、きっと誰にでも経験があると思いますが、若いって、なんてバカで、浅はかで、そして残酷なんだろう!! そんな自分自身の青春の苦い記憶が鮮明に思い出され、我が身の“至らなさ”を恥じると同時に、アホな自分を許してくれた大人たちに、感謝の気持ちでいっぱいになるのでした……。読者をこんな気持ちにさせるなんて、本当にすごい名作です!

でも、絵の才能があるって、本当に羨ましい! じつはパクチー先輩も小学生のとき、近所の油絵教室に通ってたんです。静物画ばっかり描かされていて、当時は犬とか猫とか描きたいなぁと思っていたのですが、『かくかくしかじか』を読んでたら、日高先生にティッシュの箱しか描かせてもらえないおじいさんが出てきて大爆笑。「これだったか!」と。パクチー先輩、やっぱ才能なかったなだなー。

それでは、試し読み、どうぞ~!
かくかくしかじか 漫画試し読み1 

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かくかくしかじか 漫画試し読み2 

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かくかくしかじか 漫画試し読み3 

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かくかくしかじか 漫画試し読み4 

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かくかくしかじか 漫画試し読み5 

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かくかくしかじか 漫画試し読み6 

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かくかくしかじか 漫画試し読み7

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かくかくしかじか 漫画試し読み8 

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かくかくしかじか 漫画試し読9 

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かくかくしかじか 漫画試し読み10 

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かくかくしかじか 漫画試し読み11

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かくかくしかじか 漫画試し読み12 

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かくかくしかじか 漫画試し読み13 

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かくかくしかじか 漫画試し読み16 

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かくかくしかじか 漫画試し読み24 

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パクチー先輩
漫画大好きライター。女性誌や男性誌でインタビューやカルチャー企画を担当。手塚治虫の「W3」でマンガ愛に目覚める。「パクチーが持つ効能のように、みなさんの体内の毒素を排出してくれるような漫画を紹介していきたいと思います」

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