知らず知らずのうちに蓋をしていた心が少しずつ自由になっている
抜擢に次ぐ抜擢でスター街道を突き進み、早くから注目を集めてきた、花組の男役スター柚香光さん。新しい作品や役に出会うたびに、責任ある立場の重みを感じるのはもちろんのこと、舞台と向き合う中でさまざまな心境の変化も経験したそうだ。
「この一年は舞台の真ん中に立たせていただく機会に恵まれ、下級生たちとふれあう時間もグッと増えました。その中で、自分の魅力をうまく表現できないもどかしさと戦いながらも、真摯に舞台と向き合う、純粋でまっすぐな下級生の姿に出会うことも多くて。舞台の裏側では楽しいだけでなく苦しいことも、それこそ、皆と一緒に涙を流したこともあったのですが。私自身、仲間たちのそんな姿に支えられ、たくさんの刺激や勇気をもらうことができたんです」
そして「以前はとにかく必死で。あらゆる矛先が自分に向いていましたが、今はそれがまわりに向いています。私の助言を受け止め何倍もの大きさで返してくれる姿に驚き、誰もいないと思った稽古場に下級生の姿を見つけ胸が熱くなることも。今も仲間から刺激と勇気をもらう日々なんです」と微笑む。
「振り返ると、今までの私はまわりを見渡し立ち位置を確認しながら“自分はどうあるべきか”を考えていた気がします。そして知らず知らず、自分の気持ちや感情に蓋をしてしまっていた。でも、最近は少しずつ、自分の心を大事にできるようになりました」
飄々としている、天真爛漫、そんなイメージを抱かれることが多い彼女だが「実は気にしいで弱い部分も。ダメな自分に流されないように、あえて飄々と構えるようにしている自分もいるのかも」。そんな言葉を語ったことも。
「この春、咲き誇る桜を見て、今までにないほどキレイだなと思えた。心がちゃんと動いているのがうれしかった」
そう微笑み「心の蓋がはずれつつある今、改めて感じる “やっぱり芸事が好き”という思い。舞台へのワクワクは衰えるどころか高まるばかり」と語る。スターゆえのプレッシャーや重責、もがき苦しむ時期を乗り越え、たどりついた柚香光の男役11年目。
「今年はトップスターの明日海(りお)さん、仙名(彩世)さんが退団され、花組は変化の時期を迎えます。これからたくさんの課題にぶつかると思いますが、ひとりで戦っているわけではないので。信頼できる仲間と舞台への誠実な思いがあれば、きっと乗り越えることができる。今はそう信じています!」
【この記事はMarisol 2019年6月号より掲載されたものです】
Profile
ゆずか・れい●2009年、宝塚歌劇団に入団し、花組に配属。新人公演の主演を3 度務め、入団6 年目でバウホール公演の主演も経験。舞台の上で放つ華やかな存在感と実力で早くから注目を集めてきた。作品を重ねるたびにその輝きは増すばかり。花組が大きく変わろうとしている今、その活躍に期待が高まっている
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TAKARAZUKA MUSICAL ROMANCE
『花より男子』
~原作 神尾葉子「花より男子」(集英社マーガレットコミックス刊)~