もともと活字中毒気味で、常に本が手放せないくらい本好きなんですが、読むのは日本文学が中心でした。翻訳は年に十数冊読むかどうかくらいの私が、韓国文学に手を出したのは、この本がきっかけでした。
「82年生まれ、キム・ジヨン」
(チョ・ナムジュ著、斎藤真理子訳)
韓国では100万部突破、日本でも、昨年末の発売から既に8万部を突破しているベストセラーです。
82年生まれと言えば、まさにマリソル世代。そして、「キム・ジヨン」とは、韓国のこの世代で一番多い名前だそうです。
同年代を生きる韓国人女性が、ごく普通に生きてきただけなのに、様々な場面で直面せざるを得なかった女性差別に疲弊し、精神のバランスを崩してしまう・・・。
決して韓国特有の問題が扱われているわけではなく、舞台を日本に移し替えても、何ら違和感のない作品です。
私たちが無意識に、仕方のないこと、と受け止めてしまっている女性差別を鮮烈に意識させてくれます。
そして、ラストの一文が、背筋を凍り付かせるほど怖い・・・!こんなに恐ろしいラストは、どんなホラー小説でも味わったことがありませんでした。人が無自覚に行っている差別の非情さが、簡素な一文から浮き彫りになる、この手腕の鮮やかさ、ぜひ読んで味わっていただきたい!
まさに、今の時代のフェミニズム小説最前線といえるでしょう!
こちらは、人間ドラマに満ちた、切なくも楽しく読める連作短編集です。
エンターテイメント要素も強く、文章もとても読みやすいので、翻訳小説の独特な言い回しが苦手な人も気軽に読めます。
一つ一つの短編は非常に短いので、毎日少しずつ読み進めるのもおすすめ。
今の韓国社会の日常を知りたい方にもぴったりだと思います。
副題に、「韓国フェミニズム小説集」とあるように、テーマはフェミニズム。
といっても、堅い話ではなく、恋愛小説風、ノワール風など、作風は違えど読みやすい7作。通底しているのは、女性であることによる生きづらさだと感じました。
私も、まだまだ読みたい本がたくさんあります!
世界的な潮流となってるフェミニズム文学についても、日本と同じかそれ以上に盛り上がっていますし、楽しく読めるエンタメ小説も次々と翻訳されて、手に取りやすくなっています。
ぜひ皆さんも、韓国文学の世界を味わってみてください!