【今月のお悩み】「仕事で窮地に立たされている夫の役に立ちたいけれど……」
(千葉県・けい・43歳・専業主婦)
☆辛酸なめ子さんの回答
☆みうらじゅんさんの回答
ダンナさんが求めているのは「お疲れさま」のひと言。 言葉担当でお願いします!
でね、けいさんのその優しさでダンナさんを癒したいなら、経済的サポートよりも「お疲れさま」のひと言じゃないですかね。どんな仕事をしてる男でも「お疲れさま」と声をかけられると抜群にうれしいですからね。
男が、わざわざ高いお金を払ってクラブとかスナックに行くのは(あるいは愛人のもとに通うのは)、お姉さんたちが「お疲れさま」と言ってくれるからです。そうやって男を最高の家に帰ったような気分にさせるのが彼女たちの仕事。水商売って、それで成り立っているといっても過言じゃないでしょう。
たぶん、けいさんも言ってらっしゃるとは思いますが、ダンナさんはまだちょっと足りないと思ってるのかもしれません。で、「疲れた」と言って催促しているんじゃないでしょうか。
所詮、夫婦は他人だから、相手をねぎらう気持ちは言葉にして、しかも大げさに言うくらいじゃないと伝わらないんじゃないかな。ですからけいさんは家庭内の言葉担当に徹して、ダンナさんに優しく「お疲れさま」と言ってあげてください。これは、けいさんが無理をして外で働く何十倍ものサポート力がありますよ、きっと。
あと、同じ男としてちょっと思うことがありまして……。ダンナさん、本当にお疲れなんでしょうか。本当に疲れてる時って「疲れた」とも言えないような……すいません。あくまで推測ですが。
ではなぜ、人は「疲れた」と言うのか。実は、外で楽しいことがあった時もね、それが後ろめたくて言う場合もありますから。例えば地方出張に行くとけっこうおいしいものを食べたりすることもあってね。でも、家に帰って「いやあ、昨日、すっごく高級なカニ食べてさあ。うまかったんだ」なんて言ったら、きっと奥さんはムッとして、「あらそう」とか「何、私にはおいしかった話だけ?」と言うんじゃないですかね。とたんに機嫌が悪くなる。
女の人は気づいてるかどうかわかりませんが、世界は女の人の機嫌で回っているんです。男は、奥さんや恋人がご機嫌であってくれたら、それでいい。外で神経すり減らしているのに、家に帰ってまた奥さんのご機嫌を取るなんて、それこそ疲れちゃいますよ。なので、ひょっとするとダンナさんは仕事やその他のことで楽しい思いをしたことがあっても、気を遣って「疲れた」ってことにしてませんかね?
たいていの男は、自分の仕事より家事や子育てのほうが何倍も大変なことを知っています。だから、楽しい気分だったとしても、家の10歩くらい手前から暗い表情をつくって、「疲れた」と言いながら家の中に入っていく……。
まあ、その場合でも、けいさんの優しい「お疲れさま」はダンナさんに効くと思いますよ。申しわけなくて「疲れた」と言えなくなるんじゃないでしょうか。
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●JUN MIURA: イラストレーターなどなど。「マイブーム」「ゆるキャラ」など数々のブームを生み出す。『みうらじゅんと宮籐官九郎の世界全体会議』(集英社)が大好評発売中!
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●NAMEKO SHINSAN: 漫画家、コラムニスト。巫女的な感性でアイドル観察からスピリチュアルまで、あらゆる事象を取材。近著に『辛酸なめ子の世界恋愛文學全集』(祥伝社)などがある
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