そこで今回、セレクトしたのは、宮脇明子先生のサイコスリラー『ヤヌスの鏡 メタモルフォセス』です。「タイトルに聞き覚えがあるわ!」って思ったマリソル世代も多いはず。そうです。1980年代に『週刊セブンティーン』で連載されて大ヒットし、ドラマ化もされた作品の続編となる作品です。
その元祖『ヤヌスの鏡』は、二重人格の女子高生・小沢裕美(ユミ)をヒロインに描いたストーリーでした。支配的で厳格な祖母に育てられ、暴力や折檻など、日常的に虐待されて育ったユミは、あるとき、祖母に閉じ込められた檻の中で、古い鏡を発見。鏡に写る自分を見て以来、もうひとりの人格ヒロミを心に宿すようになります。
気が弱くて、おとなしいユミに対して、ヒロミは派手好きで攻撃的という正反対な性格。嫌なことがあったり、祖母の虐待を想起させるような出来事があったりすると、突如、ユミはヒロミへと変貌し、暴力的に。次第に悪へと手を染めていきます。やがてその狂気はエスカレートしていって……というサイコホラーの要素満点の傑作でした。
続編『ヤヌスの鏡 メタモルフォセス』は、それから30年ほどたってからを描いています。海辺の病院に勤務する美しい未亡人のヒロミは、17歳以前の記憶がありません。そんな彼女の周囲で殺人事件が起き、ヒロミは自分の中のもうひとりの自分に気づき始めます。一方、週刊誌のライター・大木は、昔の事件を追う中で、かつてヒロミという多重人格の少女がいたことを知り、追跡を始めます。そんなとき、ヒロミの面影を残す美人カウンセラーのユミと出会い、迷宮へと迷い込んでいくのでした。
いや~、久しぶりにブルっときましたよー!! すっかり熟年になってしまったものの、相変わらずの美しさで、ミステリアスなムードを漂わせるヒロミ&ユミ。ベールが一枚ずつはがされていくように真実にたどりつくという計算され尽くした構成にも脱帽です!! さらに恐ろしいのは、二重人格の彼女同様、誰の中にも狂気が潜んでいるということ。結局、どんな人にも心の中に悪を飼っているということなんでしょうね……。
私もときどき厳しい締め切りに耐えられず、もうひとり自分に豹変するときがあります。そして深夜、狂ったように韓流ドラマを一気見する……!! かわいいもんです。自分の中の狂気の小ささに、ホッとする今日この頃でした。
ちなみに動画配信サービスFODにて、現在『ヤヌスの鏡』のリメイク版が放映中。ヒロインを演じるのは桜井日奈子。昔の杉浦幸バージョンを懐かしみながら、友達と一緒にリメイク版も観ると盛り上がるかも!?
それでは、試し読み、どうぞ~!!
漫画大好きライター。女性誌や男性誌でインタビューやカルチャー企画を担当。手塚治虫の「W3」でマンガ愛に目覚める。「パクチーが持つ効能のように、みなさんの体内の毒素を排出してくれるような漫画を紹介していきたいと思います」