ーヨングンは、幼いころから父が母を殺したと思って生きてきた人物です。あまり人を信用できないのですが、情熱と気合いを持ち合わせた熱血刑事でもあります。人生になんの目的もなく生きているように見えますが、心の中では父と母の事件に対し疑問を抱いており、深い傷を抱えています。また、根は誰よりも温かく正義感のある人間です。
ハン・ソッキュさんが演じたト・チグァンは、正義のためならどんな手を使ってでも不正を暴く、表面上は残酷な人物です。でも誰よりも情に厚く優しい人です。キム・ヒョンジュさんの演じたハン・テジュは、過去のトラウマのせいで正義感など持っていない弁護士として生きている人物。この3人が、過去に関わったある事件に疑惑を持ち、共に事件を解決していく過程でそれぞれが成長していくドラマです。
●スピード感があり予想できない展開、最後まで視聴者の注目を集めたドラマでした。最初に台本を読んだ時の印象、感想をお聞かせください。
ー最初は少し難しく感じましたが、警察が警察を監視する“監察”という題材が新鮮でした。推理ドラマなので簡単に理解できる内容ではなく、僕が最もこの作品に惹きつけられたのは、「ウォッチャー」という作品が伝えたいことでした。ドラマに出てくる、現実の世界に蔓延する腐敗した政治的要素や、“何のために突き進んでいるのか、目的が分からなくなる時もある”というところですね。「なぜ、何のために生きるべきか」。訳も理由もないように思える時もあるけれど、それでも何かに向かって突き進み生きていき、成長する姿がまさに私たちの人生とも重なる気がしました。
●最初からドラマの結末はご存じでしたか?
ー最終話まで台本が完成するまえでしたので、結末は知りませんでした。僕は先の台本がまだできていない時は、続きを想像したり期待したりはしません。それより出来上がった台本の中で考え、悩むことが重要だと思っています。先々の台本を想像することは、今ある台本部分を演じる時に邪魔になることもある、というのが僕の考えです。
●「ウォッチャー」の出演を決めたいちばん大きな理由は何ですか?
ーアクションの多い推理ドラマは初めてで、今までアプローチしてきたやり方とは違うジャンルの作品なので是非挑戦してみたいと思いました。台本の構成や役が抱えている傷を掘り起こし、癒えていく過程が魅力的だったのでやってみたいと感じました。
ーとても素晴らしい先輩俳優の方々がいらっしゃるからじゃないでしょうか…!また、「ウォッチャー」が僕にとっても大変興味深く楽しみなドラマだったように、このドラマの物語や事件の絡み合いが、多くの皆さんに興味を持っていただけることに繋がったのではないかと思います。
●「ウォッチャー」の見どころは?
ー心の内が分からない登場人物間の友情とチームワーク。誰が犯人なのか分からない、張りつめた緊張感!同じチームのメンバー同士が協力し合っているように見えたのに、ある時は“あれ!?チームなのに!?そんなことするの!?”と思わせる、そんな複雑な心理描写!すべてが見どころです!
●ヨングンは、チグァンにもテジュにも100%の信頼を寄せることが難しい状況にもかかわらず、彼らとチームを組んで、不正を暴いていきます。誰が敵で誰が味方なのか分からない状況での内面的な葛藤、感情の変化など、演じるのが容易ではないキャラクターだったと思います。演じるにあたり、ヨングンというキャラクターを、どんな風に分析されましたか?
ーおそらくヨングンは、チームのために動いていたというより、ヨングンの目標のために突き進んでいたんだと思います。その中でチグァンはチーム長であり父としての役割もしてくれ、テジュは同僚の弁護士であり母のような役割でいてくれました。ヨングンは、二人への気持ちが常に揺れ動きながらも、彼らが犯人ではないと、彼らが信用できる人であると、信じられる人であることを願っていたように思います。
●「ウォッチャー」の中でヨングンはアクションシーンも多く、ケガを負うシーンも多かったです。ヨングンを演じるために特に意識して準備・研究したことはありますか?参考にされたドラマや映画のキャラクターがあれば教えてください。
ー参考にした作品は特にありません。この作品を研究して気づいたのは、僕が今までやってきたのと同じ方法で台本を読み解き、キャラクターを構築をしていくやり方はうまくいかないかもしれない、ということでした。だからどういう視点でシーンを見るかをたくさん悩みました。心の動きを繊細に描きながらもアクションが多いドラマなので、単純に感情だけに集中して演じてもダメだと思いました。まずは動きを頭の中で綿密に計算して作りこみ、それから感情を見せなければいけないシーンでは気持ちを作ることに集中しました。
ーネタバレにならないように話すので伝わりづらいかもしれないですが、エンディングのチグァンとヨングンのツーショットが一番記憶に残っています。監察は、警察でありながら警察を監視する仕事です。なのに、その監察の仕事が「法の死角エリア」に置かれることが多いんです。これからも、正義のために立ち止まらず突き進んでいくチグァンとヨングン、そしてテジュ…。彼らにとって大切なことは、絶えず自分たちの過去を振り返り、過去と向き合うことで、「正義」という監察者としても目的を忘れないことです。最後のチグァンとヨングンのシーンは、そんな不正捜査チームの「未来」が描かれているようで印象的でした。
●ヨングンの台詞の中で記憶に残っている台詞と、その理由は?
ー葬式場でチグァンと交わした「父を巡る事件の黒幕を突き止め僕の手で捕まえます」という台詞が記憶に残っています。犯人を捕まえても、父が生きて帰ってくるわけでもなく、自分の怒りや悲しみが消えるわけでもなく、むしろ虚しさだけが残るだろうに、それでも何かのために突き進み走り続けるヨングンの人生が、悲しいけど価値があるように見えました。
●ハン・ソッキュさんと共演した感想をお聞かせください。撮影まえ、初めて会った時の印象と撮影を進めていくうちにハン・ソッキュさんの印象は変わりましたか?
ー撮影まえは、とにかく大スター・大先輩というイメージで緊張しましたが、実はとても優しい方で、後輩の面倒をよく見てくださいました。撮影中もシーンについての悩みや演技に対する悩みをよく相談していました。
●キム・ヒョンジュさんとは2014年の「家族なのにどうして〜ボクらの恋日記〜」以来、「ウォッチャー」が2回目の共演となるドラマですが、久しぶりに共演された感想をお聞かせください。
ーやはりシーンや演技についてたくさんお話しましたし、キム・ヒョンジュさんとは作品を見る視点や意見が一致する点が多かったです。ついつい頼ることが多かったと思います。ヒョンジュさんも後輩の面倒をよく見てくださる優しい先輩です。
●「ウォッチャー」のキャラクターの中で男女を問わず、ヨングン以外に演じてみたいキャラクターは?
ーテジュをやってみたいです。すごく冷徹なのに温かみもあり、傷を抱えたまま突き進んでいく役はとても魅力的でした。また弁護士としての天才的な面も魅力的なので、演じてみたかったです。
ー待ち時間は台本を見たり睡眠不足を満たしていました。ムードメーカーはハン・ソッキュさん。とても愉快でユーモラスでいらっしゃって、笑いが絶えませんでした。
●DVD-BOXに収録されたメイキング映像を見ると、バイクに乗り急カーブを切って止まるシーンを練習されている場面があります。とても上手に乗られているようでしたが、もともとお上手だったんですか?それとも今回の撮影のために特別に練習されたんですか?
ーもともとはアクションチームの方がやってくださるはずのシーンでしたが、欲が出てきて何度か挑戦して成功しました。隠れた才能が見つかったようです(笑)。
●ハードなアクションシーンがかなり多く大変だったと思いますが、撮影期間中どのように疲労回復していましたか?
ー労働時間に関する法律が強化されてきているので、徹夜をするなどのハードな撮影はありませんでした。時間ができると睡眠をとって、ビタミンのサプリの力も借りながらアクションシーンをこなしました。
ー日本の映画『誰も知らない』という作品があるんです。子役たちが出ている是枝裕和監督の作品で、観ている間、この俳優たちはどうやってあんな演技ができたんだろう…!監督はあらゆる部分に力を注いでこの映画を作られたんだなぁ…!と驚きっぱなしで観た作品です。実際に“長い期間撮影をし、子役たちには芝居をつけずに状況だけ与えて意図的な演技はせず、その状況の中で自然に存在することができるように作った”という監督のインタビューを読みました。
●日本で行ってみたいところや食べてみたいものは?
ー札幌へ行ってみたいです。一度も行ったことがありません。あと、食べ物は冷たい蕎麦を食べたいです。麻布十番駅の近くにある、100年以上続いている蕎麦屋の蕎麦を時々思い出します。
●最後に、日本の視聴者の皆さんへ一言お願いします。
ー皆さん、こんにちは。ソ・ガンジュンです。「ウォッチャー 不正捜査官たちの真実」をぜひ見ていただきたいです!複雑に絡み合う不正捜査チームメンバーの心の動きと、過去の事件を紐解いていくスリル満点の見応えのある作品です。たくさん応援してくださいね!