私が解説します!
北京中医薬大学 医学博士 尹 生花先生
〝五臓〞の声を聞き体調不良を改善
体や肌や心に不調が起きやす いのは、〝五臓のどこかが弱っているサインです〟と話すのが、尹生花先生。
「東洋医学では、生きるのに必要な働きを、肝・心・脾・肺・腎の五臓に分類します。これは西洋医学の臓器の概念とは異なります。例えば東洋医学の〝腎〟は、西洋でいう腎臓の生理機能ではなく、発育や生殖などの基本的な生理機能をさし、〝生命力の精を蓄える場所〟のことです。腎の働きが低下すると、むくみや冷えを招くだけでなく、ホルモンにもかかわり、生理痛や不妊の原因にも。また、〝心〟が弱ると、血を全身にめぐらせにくくなくなり、顔のツヤが失われたり、動悸や息切れを起こしやすくなります。このように五臓のどこかが弱ると体や肌、心の不調となって表れます。五臓は健康に生きるための要なのです。そこで、自分は五臓のどこが弱っているかを判断し、生活習慣や食事などさまざまな方法で、弱った五臓を元気にしていくメソッドが〝臓活〟です。不定愁訴が出やすいアラフォーには特におすすめなので、ぜひ取り入れて」
①五臓のどこが弱っているのか診断
<<アナタの〝不調〞はどの〝臓〞からのメッセージ?>>
あなたがケアすべきは…
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あなたがケアすべきは…
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あなたがケアすべきは…
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あなたがケアすべきは…
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あなたがケアすべきは…
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②「肝」が弱っているあなたは・・・
肝が弱ると気と血が隅々にめぐらなくなる
「肝の大きな働きのひとつが、気と血の流れを円滑にし、めぐらせることです。
東洋医学では気・血・水の3要素がバランスよく体の中でめぐっている状態を健康とします。気は生命エネルギーを、血は血液やその働きを、水は血以外の体液をさします。肝が正常なら気も血も全身に滞りなくめぐります。また、肝のもうひとつの働きが、血を貯めたり、血量をコントロールする働き。全身に必要な量の血を届けて、滞りなく働くようにし、全身にうるおいを与えます。
肝が弱ると、気や血の流れが滞るので右ページで紹介したような、シミ、クマ、生理痛などの不調が起こるのです。肝の衰えは自律神経にも及び、イライラして怒りっぽくなることも。
肝は、夜ふかしや緊張感の多い生活、目の酷使などで弱りやすくなります。また、春は肝の働きが活発になり、逆にバランスをくずすことがあるので注意。
肝を正常に保つには、気の流れをスムーズにする生活を心がけることがポイントです」
1)肝を整える生活習慣
■昼夜逆転は絶対NG! 夜11時までにベッドに
「血が浄化され、新鮮な血が貯められる、肝とかかわる時間は深夜1 〜3時。また、五臓六腑という言葉がありますが、肝は六腑のうちの"胆"とペアになって働き、胆の時間は午後11時から午前1 時。この時間にきちんと体を休めると血を正しく貯められるので、午後11時には寝ましょう」
■働きすぎず、こだわりすぎず、穏やかに
「肝の働きを弱らせるものにストレス、過労、睡眠不足などがあります。 特に春は、異動や転勤や引っ越しなど、環境が変わることが多く、なにかとストレスが多い季節。だからこそ何事にもこだわりすぎず、慌てず、 できるだけおおらかな気持ちをもって、穏やかに過ごすよう心がけて」
■朝、ゆっくりと散歩をする
「肝が弱りぎみの時におすすめなのが、朝早く起きてゆっくり散歩をすること。新鮮な空気を取り入れると、気のめぐりがよくなり肝が元気になります。おすすめは、樹木や花など植物の多い公園。植物のエネルギ ーは体を元気にするパワーがあるので、緑の中を歩いてリフレッシュを」
2)肝を活かす食生活
肝を活かす食材はコレ!
にら・ちんげん菜・春菊・菜の花・梅干し・ブロッコリー ・ライチ・レモン・キャベツ・よもぎ・トマト・マグロ・ しじみ・アワビ・ピーマン・セロリ・にんじん・ごぼう・ ほうれん草・すもも・びわ・エビ・カニ・イカなど
3)肝を活かす関節たたき&ツボ押し
<<関節たたき>>
<<ツボ>>
③「心」が弱っているあなたは・・・
血脈を司り、血を全身にめぐらせるのが心
「生命にとって最も重要で、五 臓を調和させ、まとめているのが心。心の働きは生理機能だけでなく、人間の感情や思考、意識、判断力や記憶力などの精神活動にも及びます。また、血脈を司り、血を全身にめぐらせる働きも。心の働きが安定していれば脈拍は正常になり、血のめぐりもスムーズになります。
心が弱ると、まず肌の色ツヤが悪くなりがちに。不安感や不眠、うつなど精神的な問題が出たり、もの忘れがひどくなったり、眠りが浅く、夢をよく見たりします。また、心は血脈を司っているので、高血圧や動脈硬化、心筋梗塞など循環器の病気につながる場合もあります。
何事にも真面目で手を抜けない人や、神経質な人は心を消耗しがちです。
心の働きを正常にするには、血のめぐりをよくして心の負担を減らしたり、心を消耗させる ストレスを減らすことがポイント。また、体内に熱がこもって、のぼせたり、汗をかきやすいので、うまく熱を冷ましたり、発散したりすることが大切です」
1)心を整える生活習慣
■体を動かし、余分なエネルギーを発散
「体内にこもりがちな熱を発散させるには、体を動かして適度に汗をかくことが必要です。特に心の働きが活発になる夏は、うまく熱を逃がすことが大事なので、暑いからといって体を動かさずに過ごすのはNG。比較的涼しい時間帯を選んでウォーキングなど軽い運動を取り入れて」
■自分なりの気分転換法を見つけ、心をゆるめる工夫を
「人に気を遣いすぎていたりと、人間関係において神経を遣いすぎていると心を弱らせます。ひとりの時間を設けたり、夜寝る前はパソコンやスマホから離れるなどして、心をゆるめるクセをつけましょう。また、イライラしたら、深呼吸をしたり、ストレッチをするなど、気分転換を」
■できるかぎり、十分な睡眠時間を確保する
「血のめぐりをよくする最も簡単な方法が睡眠。疲れが取れにくかったり、倦怠感があったりするなら、心が疲弊していて血のめぐりも悪くなっているということ。睡眠時間をしっかりと確保して、血のめぐりをよくすれば気のめぐりもよくなり、その結果、疲れが取れて心の働きも回復します」
2)心を活かす食生活
心を活かす食材はコレ!
ゴーヤ・らっきょう・れんこん・あずき・キビ・アロエ・牡蠣・鶏のハツ・ごぼう・メロン・スイカ・きゅうり・アーモンド・ココナッツ・緑豆もやし・冬瓜・大根・かんぴょう・くわい・唐辛子・ゆりね・はすの実・なまこ・リュウガン
3)心を活かす関節たたき&ツボ押し
<<関節たたき>>
<<ツボ>>
左右の乳頭を結んだ線上の中央にあるツボが膻中。ここを両手の親指以外の指で強めに20回押す。
④「脾」が弱っているあなたは・・・
栄養を吸収し、 全身に運ぶのが脾
「脾は、胃とペアになって消化吸収を司り、飲食物から栄養を取り出し、気や血、水に作り変えて運び出す働きがあります。 この時必要なものと不要なものを仕分けて、必要なものはエネルギーに変え、不要なものは体外に排出する働きも担います。 内臓を正しい位置に収めて、脂肪が垂れないように引き上げる働きもあるほか、血が血脈から外へ漏れるのを防ぐよう統制する働きもあります。
脾は過度な湿気や熱に弱いので、脾が弱い人は、梅雨の時期や季節の変わり目になると、だ るさや頭重感などの不調が出がち。消化吸収力の低下、不正出 血、顔やおなかのたるみ、痔、むくみ、下痢、ニキビ、やる気の低下なども起きやすくなります。
朝食をとらなかったり、座っている時間が長かったり、あれこれと考え込むクセがあったり すると脾を弱らせます。 脾や胃は、食事の影響を受けやすいので、負担をかけるような食べ物は控えましょう。ストレスや過労、睡眠不足も脾の負担になるので改善を」
1)脾を整える生活習慣
■朝食を必ず食べる習慣をつける
「脾の働きを高めるのになにより重要なのが朝食です。脾が活発に働くのは午前9〜11時で、胃は午前7〜9時。この時間帯に、朝食をしっかりとってエネルギーやうるおいのもとになる飲食物をとらないと、脾がきち んと働くことができません。遅くとも午前9時までには朝食をとること」
■冷たいもの、油っぽいもの、水分をとりすぎない
「脾の働きを弱める一番の要因が、冷たいもののとりすぎ。夏場など暑くて冷たいものが欲しくなる時期でも、冷えたものでなく、できるだけ 常温のものをとって。また、油っこいものや甘いもの、味の濃いもの、 水分のとりすぎなども、脾や胃の負担になるので控えましょう」
■胃をいたわる食生活を心がける
「脾が弱っている人は胃腸が弱いことがほとんどで、梅雨どきなど、季節の変わり目に体調をくずしがち。胃は脾とセットで働くので、脾の働 きをよくするには胃の調子を整えることが大事。ふだんから消化にあまり負担がかからない食事を心がけて。一番のおすすめはおかゆです」
2)脾を活かす食生活
脾を活かす食材はコレ!
とうもろこし・大豆・かぼちゃ・大根・粟・ごま・豆類(いん げん、枝豆、えんどう、そら豆など)・かぶ・アスパラガス ・昆布・かつお・白菜・キャベツ・落花生・小松菜・カリ フラワー・ぜんまい・なす・レタス・たけのこ・にんにく
3)脾を活かす関節たたき&ツボ押し
<<関節たたき>>
<<ツボ>>
⑤「肺」が弱っているあなたは・・・
呼吸を通じて、気をめぐらせるのが肺
「肺には、体にとって重要な気を司る働きがあります。呼吸を通じて、古い気を吐き出し、新鮮な気を取り入れて、体の中の気を入れ替えます。この時、肺は取り込んだ気の中の異物を取り除くフィルターの役目も果たします。また、肺には、体内の水を動かす働きもあり、体液をめぐらせる作用によって余分な水分を汗として体外に排出したり、不要になった体液を腎に引き下ろし、流れが滞らないようにする働きもあります。
肺が弱ると、咳や喘息など呼吸器系の不調が起きやすくなります。肺は六腑の大腸と相関し、免疫力も司るので、弱ると免疫力が落ち、花粉症などアレルギーの原因にも。また、肌や鼻、のどなどの体のうるおいを保つのも肺なので、弱るとこれらが乾燥しやすくなるうえ、便の水分が不足し、便秘にもなりがちに。
肺が弱っていると、秋に体調を壊しやすいので、秋が近づいたら生活を見直しましょう。また、肺は乾燥や冷えに弱いので、外気や外敵から肌や体を守ることもポイントです」
1)肺を整える生活習慣
■毎朝、窓を開けて、空気を入れ換えることを習慣づける
「睡眠中は、体内に古くなった気がたまるだけでなく、部屋の空気もよどみがちなので、朝起きたらすぐに窓を開けて空気の入れ換えをしましょう。これを毎日の習慣にすると、季節の移り変わりにも敏感になり、秋になると肺が弱って風邪をひきがちになるのも防ぎやすくなります」
■深呼吸をクセづける
「肺を整えるには、自然界から新鮮な気というエネルギーをたっぷり吸い込むことが大切なので、深呼吸することをクセにしましょう。ストレスなどで呼吸が浅くなっている人は、花の匂いをかぐのがおすすめ。花の精気で自然にスーッと深呼吸ができるようになります」
■乾いた空気から肺を守る工夫をする
「肺が弱っている人は、秋になって空気が乾燥してくると、咳や喘息などの症状が出やすくなります。乾いた空気から肺を守るために、うがいをしたり、マスクをつけましょう。家では加湿器をかけるのも効果的。もちろん、喫煙は肺を弱らせるので論外です」
2)肺を活かす食生活
肺を活かす食材はコレ!
やまいも・白菜・大根・しそ・みょうが・きくらげ・パクチー・わさび・白豆・こんにゃく・モモ・イチジク・柿・梨・バジル・らっきょう・ぎんなん・アスパラガス・ごぼう・玉ねぎ・ザクロ・黒糖
3)肺を活かす関節たたき&ツボ押し
<<関節たたき>>
<<ツボ>>
⑥「腎」が弱っているあなたは・・・
腎は生きるエネルギーを貯める場所
「腎は、成長や発育、生殖など、人間の活動に必要なエネルギーを貯めておく場所。また、全身の水分代謝も行い、体内で使われた水は腎に運ばれ、そこで利用できるものは再吸収し、不要なものは膀胱に運んで尿として排泄する調整役を担います。
そのほか腎は、肺で吸い込んだ気を、丹田(おへその下にある気が一番貯まる場所)にしっかりと納める働きも。これによって五臓は正常に働くようになります。さらに、体や臓腑を温める働きもあります。
腎が弱ると成長や生殖に支障が出て、生理不順や不妊などを招いたり、老化が進んだり、知力の低下、髪のパサつき、薄毛、白髪、骨や歯がもろくなるといったトラブルも起きやすくなります。水分代謝も悪くなるので、むくみや冷え、頻尿、顔のくすみなども生じがちに。
体の冷えや、睡眠不足などは腎を弱めるので、冷やさないようにし、十分な睡眠を心がけましょう。特に腎は冬に衰えがちなので、冬は特に無理をせず、意識して休むようにしましょう」
■とにかく体を冷やさない
「冷えはとにかく腎の大敵。寒い時期はもちろん、夏は冷房で冷えやすいので、職場でもはおりものなどを常備して、足腰を冷えから守りましょう。体を冷やす食べ物や飲み物も控えめに。また、寒い時期に太陽の暖かい光を浴びることは腎を養うので、意識して浴びるようにしましょう」
■足腰の筋力を鍛える
「腎の働きが弱ると足腰が弱くなります。逆に足腰の筋力が衰えると、腎が弱ります。これを防ぐため、エスカレーターやエレベーターを使わず階段を使うようにしたり、ひと駅分歩くようにしたりして、足腰を鍛えましょう。寒い時期に滞りがちな血流を促すためにも有効です」
■体内の水分バランスを意識した生活を
「水分代謝を担う腎の機能を整えるには、水分のバランスを調節することは大切。特に乾燥しやすい季節や、汗をかきやすい季節には、水分をしっかり補給すること。また、トイレを我慢しない、疲労をため込まない、しっかり寝るなど、腎を弱らせない生活習慣を心がけましょう」
2)腎を活かす食生活
腎を活かす食材はコレ!
くるみ・昆布・黒豆・黒ごま・栗・ワカメ・エビ・帆立貝・白菜・牛肉・ラム肉・牛・豚の腎臓・ハマグリ・さめ・くらげ・とんぶり・やまいも・餅・米
3)腎を活かす関節たたき&ツボ押し
<<関節たたき>>
片脚立ちをして足でたたくのがむずかしい人は、手でたたいてもOK。上体を軽く倒し、軽く握った手で、膝裏をたたいて。
<<ツボ>>