坪田あさみ エディター・ライター
@asamit1201
@sundownertokyoomuretsu
▲今年の春、引越しをした我が家。そしてちょうど今月発売のマリソル9月号で取材をしていただきました。もしかしたらまだ書店にあるかもしれないので、よかったらご覧ください。
以前インテリアをテーマに連載コラムを書いていたこともあり、時々フォロワーさんやお友達から家具の揃え方やおすすめについてご質問をいただくことがあります。
また先日、これから引越しをする知人から「家具や家電を全て新しいものに買い換えたいけど何を買えばいい?」と聞かれたこともあり、インテリアについてちょっと考える機会がありましたので、こちらに共有したいと思います。
「家具のおすすめはありますか?」。これは本当によく聞かれる質問ですが、「おいしいお店を教えてください」と同じぐらい回答しにくい質問です。
というのもその方のライフスタイルや趣味、家族構成や今、どんな気分なのかが一切わからない中で(場合によってはその方を直接知らないこともあります)何かをおすすめするのはとっても難しいからです。
そしてインテリアは洋服のようにトレンドを軸にも、職業的なくくりでも回答もできません(インテリアのトレンドは世界的な最新のものと一般にまで浸透しているものは多少違いますし、多くの方はインテリアにトレンドを求めることはあまりなく、個人の趣味的要素が大きいですよね)。だから余計に難しい!
▲引っ越し直後の部屋の様子。家具はほとんど前の家で使っていたものを持ち込みました。ベストポジションがまだ定まりきっていない時期。今は物がもう少し増えています。
それでも「何かアドバイスを!」ということだったので、私は「インテリアは決して急いではだめ」「まずは古い家具を持ち込んで生活がある程度整ってから少しずつ買い替えるといいよ」と伝えしました。
知人は新しい家と同時に新しい家具と家電で生活をスタートしたいということでしたので、私の答えには不満だったと思いますが、それはインテリアに対する考え方の違いによるところが大きいと思います。
まず私は自分で買った家具や雑貨のひとつひとつに思い入れがあるので、全てを一気に買い直すということはありません(金銭的にも大変だし!)。ただこういう方はそんなに珍しくなく、割とよくいらっしゃいます。
例えば「婚礼一式セット」や「新生活応援セット」みたいなものの広告を今でも見かけますし、プロのコーディネーターさんにインテリア一式をお任せする人もいるかもしれません。
大人はさすがに「◯◯セット」みたいなものを買う人は少ないとは思いますが、まとめて買う、一気にチェンジすること自体は、日本では珍しくないことだと思います。
ある地点で全てをリセットして、まっさらな状態からスタートし直すというのは、日本人が昔から大好きな考え方ですよね。
インテリアに関して私はそれとは真逆。新しいものにも興味はあるけれど、古いものも同じレベルで好きですし、それらを共存させつつ進化させていきたいタイプ。
例えば家具や家電は気に入ったものがなければずっと買わずに不便な暮らしを数年続けても全く構わないし、すごく欲しいものがあっても、住んでいる家に似合わないなら、いつかグッドタイミングが来るまで買わない。いつかがやってきた時買えなければ中古でも構わないし、それでも買えなければただ縁がなかったと思うだけです。またぴったりくるものがなく不便な時は自分で作る、オーダーして作ってもらうという選択もあります。
▲仕事デスクの下にあるプリンターを置いているボックスは昔作った自作。以前はウッドの木目を生かしたブラウンでしたが、引越し先の床の色に合わせてブラックに近いチャコールグレーに塗り替えました。プリンターを置く台などのワークスペース周りは、今も昔も納得できるデザインが少ないので、そういったものは作ってしまいます。プリンターも以前は白でしたが、引っ越しする直前に壊れたので台の色に合わせて黒に買い換えました。
また家具や家電は実際に暮らしてみて、何をよく使うのか、何が本当に必要なのかがわかってからその場所やサイズ、色の合ったものを買った方がいいのでしばらく様子を見ます。家具や家電はどんなに素敵なデザインでも実用性が求められるのでそこはしっかりと吟味したいです。
そこで家具・家電を買う時のアドバイスとして「インテリアは決して急いではいけない」という冒頭の言葉につながります。年齢や家族構成によってもライフスタイルは少しずつ変わっていくと思うので「一生をかけて自分らしく味わい深い家に育てていく」ぐらいが私の理想。少しずつ楽しみながら時間をかけて仕上げていきます。
私は友人知人のお宅を訪問するのもとても好きなのですが、中でもその人らしさが出ているインテリアが大好き。インテリア雑誌やモデルルームなどでは絶対に作れないオンリーワンな部屋。そんな部屋が作られる理由は、住まう人のセンスの良さはもちろんのこと、歴史(時間)があるからだと思います。
旅した記憶が詰まった雑貨や、好きなアーティストの絵や写真、ヴィンテージのデザイナーズ家具が今の家具とミックスされているなど、住まう人の興味や考え方が透けて見えるような部屋。
お金さえあれば手に入るものは多いかもしれないけれど、醸し出す雰囲気を一朝一夕に作ることは難しいし、そこに漂う物語に惹かれてしまうのです。
▲旅先で買ったものや撮影で訪れた場所で買ったもの、蚤の市で買ったもの、頂きものなどを並べて。その時に気分や季節に合わせて組み合わせを変えるので、ディスプレイしないものは引き出しにしまっています。
もちろん物がほとんどないようなすっきりした部屋もその方の考え方が表れていて興味深いですし、そこに住まう方の個性が強く出ていると思います。
個人的に一番すごいと思うのは隠しきれないはずのリアルな生活感さえも味わい深いものにしている人の部屋。そんなインテリアを見ると最強だなと感じます(おそらくそういう方はお手入れがとても丁寧で、一つ一つを大切にしているからだと思います。使い込んだ鍋が美しいのは手入れが行き届いているから。きっと物への愛情が醸し出されているのでしょう)
冒頭に書いたように一気に新しい家具家電を揃えてしまうと、その方の個性や歴史や考え方が出にくく、きれいだけど興味深い部屋にはなりにくい気がするのです。「インテリアは時間とともに熟成する」のだと私は思います。
ちなみに我が家も引越し前には新しい家具を何も買いませんでしたが、3か月を過ぎた今、古い家具と共存する新しい家具や雑貨が少しずつ加わり始めています。
例えば最近購入したのはリビングのコーヒーテーブル。実は引越し直後はリビングテーブルは買わないつもりでした。というのも広々としたリビングの空間をそのままキープしたいのでテーブルは諦めようと思ったのです(掃除する時に面倒くさいというのも大きな理由でした)。
でも生活しているとやはりソファに座った時に飲み物や本などを置きたいと思うことが多くなり、しばらくは別のもので代用しながらサイズ感の目安をつけ(大きすぎるのは邪魔だし小さすぎるのも使いづらい)、新しくテーブルを購入しました。
▲私は家具を買う時に汎用性を気にします。今はリビングに置いているけれど、模様替えした時にはベッドルームに置くかもしれない。なのでできるだけシンプルなものを。また我が家のリビングはウッドの家具や雑貨が多いので、テーブルトップはガラスにして変化をつけました。透明のガラスだと指紋などが気になるので磨りガラスをチョイス。結果、広々としたリビングはキープしつつ、テーブルの便利さも手に入りました。
ステイホーム期からお家の環境を気にされる方が増えていると思います。一気に変えることは大変だけど、少しずつ変えていくだけでもお家はもっと楽しく心地よい空間になっていくと思います。これまではインテリアに興味がなかったという方も目を向けてみてはいかがでしょうか?
今回も気づくと長くなってしましたが読んでくださりありがとうございました。次回の更新は9/12となります。