「いつ?」
「真木の小話中に」
え……。でもなんで? 私の離婚報告のため? まあ久々に会えるならそれはそれでいいか。かなり会ってないな。
「せっかくだから、今日はみんなで無様な迷走報告会をしようかと思って」
「え? ああ、さっきのマスターの名言?」
「そう。 真木だけじゃ不公平だから、私からも報告して、道連れに結花もって思ったの」
結花こと畠山結花も、同じ女子校で6年間一緒メイツだ。大手ゼネコン勤務の一級建築士。旦那は大学時代の建築学科同級生でこちらも一級建築士。二人で早々に土地を買い、二人で設計した素晴らしい豪邸をどどーんと建てて、お子が二人。一姫二太郎。キャリアと共に絵に描いたような順風満帆な暮らしを突き進んでいる女である。
「理沙はまだしも結花は無様な迷走なんてしないんじゃない?」
「してるって。40過ぎの女は誰でも少なからず迷走してる。不惑なんて言葉、あれ絶対嘘。元気に惑いまくりだって」
不敵な笑みを浮かべながら、すでに本日何杯めかわからなくなったロゼシャンパンのグラスを揺らす理沙の指先に美しく光るネイルは、あたかも人を殺しそうなくらいキラキラと光っていた。
(小説・じゃない側の女~Side1結婚してない側の女 完)
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植田真木(うえだ まき)43歳 金融会社勤続20年の管理職。「アラフォー独身女」でいることに疲れ、39歳で「可もなく不可もない男」と駆け込み結婚をしてみたものの…。
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谷原理沙(たにはら りさ)43歳 某有名ブランドのバイヤーとして、月の半分近くを海外で過ごす。後輩が次々と妊娠して産休に入るたび、「快く」送り出しているつもり、だけれど。
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畠山結花(はたけやま ゆか)43歳 ゼネコン勤務の一級建築士。同業のハイスペック夫と2人の子供、瀟洒な一軒家。「すべてを手に入れて」順風満帆な人生を突き進んでいるように思われるが…。
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