ー自分自身の残酷な過去を隠し、14年間身分を変えて、自分の 人生を探そうと新しい家庭を築き、愛する妻さえ騙して生きていく、愛さえ演じる男、ペク・ヒソンとして生きていくト・ヒョンス役です。16話の間、緊張感やスリルなど、ト・ヒョンスのストーリーを観ながら皆さんにもありとあらゆる感情が生まれるのでは ないかと思いますし、そういうところに重きを置いて演じました。
●出演を決めた理由は?
ー簡単には決められませんでしたね。僕には合わない人物なのではないか、その人物の物語を描くにあたって、僕の人生や俳優としてのキャリアを考えた時に、まだこういう深い演技をするには若すぎるのではないか(笑) という気持ちもあってかなり悩みましたし、負担も大きかったです。もちろん監督と制作陣が提案をしてくださったのですが、本当に悩みましたね。多くの方々が説得してくださいました。新たな挑戦ですし、俳優人生において、また違った転換点になるでしょうし。 また、ムン・チェウォンさんも、応援の気持ちを込めた提案をしてくれました。ト・ヒョンスというキャラクターは、ドラマの中心となる役どころで、難しいだろうけれど、イ・ジュンギだからこそ可能であり、俳優としての幅も広げられる機会ではないかと。周りの多くの方々がそのような話をしてくださるので、そういった部分でとても悩み、台本も何度も見て長い間勉強しました。そうしている中で、非常に独特な作品でもあり、スリラーと恋愛の 2 つの価値観がぶつかるところのあるとても不思議な作品だと思い、これは挑戦だ、もっと成長できる、と思うようになったんです。俳優としてのキャリアに挑戦したということだと思います。選択というよりは挑戦でした。
● ご自身が演じていて特に印象に残っているシーンやセリフを教えて下さい。
ー1つ1つのシーンが容易ではなく、後のストーリーにつながっていくので・・・。ある特定のシーンを選ぶのはとても難しいですね。 毎回、良いシーンがあったんです。どれもト·ヒョンスの人生を辿るうえで必要なシーンなので。それでも選ぶのなら、何も感じることのできないト·ヒョンスの感情が初めて解き放たれる場面ですかね。劇的な状況に追い込まれた時の、 自分が一番大切に思っているものを失いたくないという切実さから出る感情の解放といいますか、そういったものをどう表現 すればいいかとても悩みました。一歩間違えれば説得力を失うかもしれないなと。視聴者の方が観ていて、ト・ヒョンスの 感情と状況にずっとついてきたはずなのに、急に感情が解放されていく感じを受けるような。すべての関係性が崩壊して、 バランスが崩れていって、ト・ヒョンスすらも描いていたものが崩れるかもしれない。そういった意味で、ヒョンスがジウォンの前で初めて号泣するシーンはすごく難しくて、多くの視聴者の方々が一緒に悲しんで切ない気持ちで見てくださるシーンだっ たと思います。ジウォンの前で、ヒョンスのすべての感情が吐き出されるシーンなのですが、そのシーンがあったからこそ、ジウォンが再びト・ヒョンスに対して、自分が愛する夫への信頼を築けるようになります。リハーサルから大変で、修正に修正を 重ねて、監督もアイディアを出し続けてくださり、僕も準備してきたものを元に話し合い、すごく悩んだシーンでした。ありがたいことに、視聴者の方々が切ない気持ちで観てくださったようなので、印象に残っていますね。
ー二面性は誰もが皆もっている部分だと思います。自分を隠して、むしろ世間に自分の姿がどう映るのか常に考えながら生 きていく人生じゃないですか?この時代は。多分皆そうやって隠しながら生きていくと思うけれど・・・。やはり僕にも二面性は あるでしょう。外から見るよりも、注意深く消極的で、ある時には計算高く、自分だけの考えを持って生きていると思います し、本来のイ・ジュンギに戻った時にはかなりディープな部分があると思います。最近歳をとるにつれて感じるのは、どうすれ ばバランスをとって生きていけるのか?ということ。全ての人の悩みではないでしょうか。多くの人がト・ヒョンスのように演技しながら生きていくように思います。考えてみれば自分のすべての感情を表に出して生きてはいけない時代じゃないですか?
●日本ではイクメンという言葉があるのですが、まさに本作では家事や子育てをこなす家庭的なシーンがありました。とても自然に、そして完璧に演じてましたがもともと家事はお 好きなんですか?
ーそうですね、なんせ一人暮らしが長くて、19 歳で家を出たので(笑)。何事にも興味があって、いまは兄弟と一緒に住んでいるので、家事は兄弟がよくしてくれています。僕は以前よりもしていないですが、昔は、特に料理なんかは一人で作って食 べることが好きでしたし、軍隊でも有名だったのですが、掃除はかなり綺麗にしていた記憶があります。たぶん家庭を築くな ら、子育てや食事、掃除など喜んですると思います。
●コロナ禍で、世界中で思うように外出できず、家で過ごす時間が増えている人も多いと思います。こんな時期だからこそ、新たに始めたことはありますか?
ーまえに僕が新しく初めてからもう 2 年以上経つのですが、ブラジリアン柔術を地道にやっていたんです。けれど、新型コロナウ イルスによって、それも止まりましたね。色々と気を付けなければいけない時なので、元々撮影中は運動をコツコツしていく ほうなのですが、今年は撮影にだけ集中するしかなかったです。万が一でも主演俳優として迷惑をかけてはいけないので。それで今年は趣味を失ったというよりはしばらく止めたというか。その代わり、よく歩くようになったと思います。こうやって体を鍛 えないままでは、何かをする時、疲れがでるのではないかとすごく心配になったんです。なので僕はブラジリアン柔術をするまえは歩くことが好きだったので、また散歩を始めました。感染予防対策ガイドラインを遵守し厚いマスクをつけて漢江 (ハンガン)をまた歩き始め、久しぶりに散歩をしてみたら、なんだか目新しくて。以前通った長いコースを歩きな がら、単純に運動が目的ではなく、歌を聞きながら、何も考えず歌に合わせて楽しんだり、色々なことを考えたり、本当に 無念無想でぼんやり歩いてみたり、そういったことがリフレッシュにつながるんですよね。人生と歩くことってよく似ていていると思うのですが、歩くたびに自分の人生も振り返ってみるような感じがしますし、そういうのがいいと思います。あらゆることにおいて、僕だけでなく、たくさんの方々が制約のある日々を生きていますが、どうか乗り越えて、僕のようにこうやって素朴にひとつひとつやってみることが健康のためにも、精神面においても、良いのではないかとお勧めします。
ー僕がしてきた作品は、アクションや恋愛などのジャンル物が多かったので... 韓国ドラマは恋愛ものがいちばん多くて、とに かく恋愛要素がいつも入っているじゃないですか?(笑) なので僕を好きでいてくださるファンの方々は、恋愛ものをしてくれ たらいいのにとよくおっしゃるのですが、いやいや僕は今まで恋愛のない作品はしてこなかった、アクションやスリラーなどのジャ ンルが多いだけで、その中には恋愛要素があった、と思っていましたが・・・。 やはり今回の作品を終えて感じたことは、避け ていた恋愛ドラマを久しぶりにしてみた気がします。スリラーと恋愛の調和を作り出した作品だったと思いますし、愛というものについてもう一度よく考えるようになりました。愛を描く作品にもともと関心はあって、その愛の基本となる男女の愛を表現 してみたいという思いがあったんです。できれば、男女の愛がメインとなる作品に出たいのですが、今でも多くの方々がアク ションといえばイ・ジュンギだとおっしゃるので、どうやらそういう作品の話がたくさん来ますね。恋愛作品の監督の方々、どう ぞよろしくお願いいたします(笑) あるいは、心の重荷をすべて下ろしたありのままの演技・・・。そういった自由な表現が してみたいです。ジャンルで縛られずに。今回の作品を通して欲が出てきたみたいです。
●最後に「悪の花(原題)」をご覧になる日本のファンの方々にメッセージをお願いします。
ー韓国では多くのファンの方々、視聴者の方々から、ありがたいことに多くの愛をいただきま した。制作陣から監督、脚本家、スタッフ、そして一緒に過ごした俳優たち、皆が一生懸命、最善を尽くして本当に良い ドラマを作りました。皆さん、その情熱を愛してくださったら嬉しいです。「悪の花(原題)」をたくさん視聴していただければ と思います。必ず見てください! 日本にいらっしゃるファンの方々も、新型コロナウイルスで大変辛いと思いますが、どんな時も健康が第一です!感染予防 対策ガイドラインを遵守し、健康を守り、早くお会いできることを祈っています。お元気で、いつも幸せでいてください。ありが とうございます。 “(日本語で)また会いましょう。”