アカデミー賞候補!穏やかな余韻の残る『ミナリ』
ウィットに富んだ台詞に笑え、そこここでじんわり泣ける、決して派手なドラマではないけれど、私好みど真ん中だった最近のドラマ「(知っていることはあまりないけれど)家族です(原題)」。「恋愛ワードを検索してください:WWW」の監督、主人公を演じるのが演技派ハン・イェリさんというだけでも魅力的で、虜に。そして、いま話題のアメリカ映画『ミナリ』でも、このイェリさんの演技に世界の注目が集まってます。『ミナリ』はゴールデングローブ賞で外国語映画賞を受賞、世界で78冠を記録。4月に予定されているアカデミー賞にも、作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞、脚本賞、作曲賞にノミネートされています。この映画もまた、”家族”を描いた温かな作品。彼女は、音楽を担当したエミール・モッセリ作の「Rain Song」も歌っていて、これがまた印象的。穏やかな余韻を残し、とっても素敵です。イェリさんのコメントとともに、日本で3月19日に公開される映画『ミナリ』を紹介します!
『ミナリ』は、『ムーンライト』『レディ・バード』などのスタジオA24と、『それでも夜が明ける』のブラッド・ピットさんが率いるPLAN Bエンターテインメントがタッグを組んで製作。物語の舞台は80年代のアメリカ南部アーカンソー。韓国からカリフォルニアに移住した夫婦が、二人の子供たちと心機一転、引っ越した先は、50エーカー(東京ドームは約11エーカー)の土地に打ち捨てられたかのようなトレーラーハウス。夫ジェイコブは、毎年3万人増とも言われる韓国人移民を見込み、韓国野菜を育てることに賭けてみようと必死だが、妻モニカは子供達のためにも穏やかな生活を願うばかり。違う形で家族を守ろうと葛藤するふたりが、子供達の世話役にとモニカの母を呼び寄せるが、、、。韓国系アメリカ人、リー・アイザック・チョン監督の半自叙伝的なストーリーで、彼が脚本も手がけています。
ミナリ(セリ)には、たくましく地に根を張り、2度目の旬が美味しいことから、子の世代のために親の世代が懸命に生きるという意味が込められているそう。水際でたくましく育ち、どんな料理にも合うセリ。煮えても焼いても生でも美味しく、旬の頃、釜山のサムギョプサルの店で、大量のセリが出て来て肉と一緒に焼いて楽しむのを知り感激したこともあります。イェリさんも、「どんなに一生懸命に頑張っても、うまくいかないことはあります。そうかと思えば、無心に何かをやっていたら、そのほうがうまくいくこともあったりして。誰の人生にも、似たことが起きると思います。ちゃんと生きようとすれば、自分に合った場所を選んで定着しなければならないでしょうね。この映画に登場する家族も、何とか生活を成り立たせたくて、移民した土地であのように必死に暮らしているわけです。それがセリと似ている部分だと思います。すべての人々の人生と、とても似通っていると思います」とコメントしています。『ミナリ』のテーマは愛だと言い、「自分の家族や、自分が過ごしてきた時間を少し振り返ることができる話なので、そこがいいと思います。それにそのような時代を経験していなくても、誰かが、家族の中の誰かが、そういう過去を経てきたんだなあと感じられると思います。だから私が今ここで、困難に負けることなくちゃんと生きていられるのは、そういう人々の力があったからであり、そういう人々の愛のおかげで可能になったと、この映画を見れば知ることができます」と続けます。また、この映画を通して、「個人的な願いとしては、モニカがどうとか、映画の内容がどうとかいうことから離れて、ただ自分と自分の祖母、あるいは自分と自分の母親や父親のことについて、ちょっと考えてみる機会になればいいですね」とも。
ジェイコブ役には「ウォーキング・デッド」のスティーヴン・ユァンさん、姉弟を演じたのは新人の子役ネイル・ケイト・チョーちゃんとアラン・キムくん。美しく心奪われる映像は「ストレンジャー・シングス 未知の世界」なども手掛けるラクラン・ミルン撮影監督が担当したと知り納得。
劇中、イェリさんの母を演じたユン・ヨジョンさんが、すでに32の助演女優賞に輝き、その勢いはとどまるところを知りません。ヨジョンさん自身も、夫の学生ビザで70年代にフロリダに渡り、ふたりの子供を産み10年近く暮らしたそうで、この映画に共感できる部分が多々あったそうです。ユン・ヨジョンさんといえば、「私の心が聞こえる?」「棚ぼたのあなた」「本当にいい時代」「ディア・マイ・フレンズ」『それだけが、僕の世界』などドラマや映画でお馴染み。私の推しドラマ「まぶしくて 私たちの輝く時間」「優しくない女たち」などのキム・へジャさんとともに国民的女優と称されるベテラン女優。最近は「ユン食堂」や、「ユン・ステイ」というバラエティ番組でも「梨泰院クラス」のパク・ソジュンさんや『パラサイト 半地下の家族』のチェ・ウシクさんらと出演して、飾らない素顔も魅力的です。
桂まり●かつらまり 韓流予報士(?)。温泉保養士。「SPUR」や「eclat」などで、トラベル、フード記事など担当するライター。趣味は各国で料理教室に行くこと。「専門外ではありますが、泣いて笑って癒される韓流ドラマのお勧めを不定期で紹介します!」
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