「無事に千秋楽を終えた夜。 充実感と安堵感で ふわっと幸せな時間です」
責任が大きくなるほど、やりとげた時の幸福感も大きくなりました
そんな早霧さんの幸福時間は、ひとつの公演の最終日・千秋楽の夜。
「体は疲れているのだけど、やりとげた充実感でふわっと浮くような心地よさがあるんです。いい小説を読み終えた後や、いい映画を観た後の満たされた気持ちに似ている気がします。公演ごとに幸福感の色合いや濃度は違っていて。例えば、刀を使う立ち回りの多かった『るろうに剣心』の時は、人にも自分にも怪我をさせず無事にやり終えた安堵感と、緊張から解放される喜びが重なった幸福感でした。主演を務めることは責任も大変さも大きいですが、責任が大きくなるほど千秋楽の幸福感も大きくなったので、よかったです(笑)」
その千秋楽の幸福時間も、宝塚を退団する今年の7月が最後となる。
「退団したら、みんなと一緒に作品を作れなくなると思うと本当に寂しいです。かなうことなら、大好きな宝塚の男役を永遠にやっていたい。でも、肉体も精神も今のまま時間を止めるのは無理なことなので。すばらしい下級生たちがいますから、上級生から受け取ったバトンを彼女たちにしっかり渡したいと思います」
“平成のゴールデンコンビ”と言われる雪組のトップ娘役・咲妃みゆさんも一緒の退団となった。
「トップコンビになった最初の時から咲妃は心強いパートナーでした。大変なことほど楽しみながらついてきてくれた彼女の“宝塚の娘役魂”に、感服しています」
最後の公演『幕末太陽傳』では、早霧さんは古典落語の登場人物として知られる居残り佐平次を演じる。
「佐平次は典型的な二枚目ではなくて、抜けた感じの裏に男のかっこよさがあるような、ユニークなキャラクターです。宝塚の男役に完成形や正解はなく、私にとってずっと“未知”で“追究”するものでした。最後のこの作品でも、お客さまに楽しんでいただけるよう、より魅力的で愛される佐平次を日々追究していこうと思います。そして、宝塚の舞台を私自身が楽しんで、味わいつくしたいと思います」
さぎり・せいな
●長崎県出身。2001年、宝塚歌劇団入団、宙組に配属。09年に雪組に組替え。14年、雪組トップスターに就任。主な主演作に『ルパン三世―王妃の首飾りを追え!―』『星逢一夜』『るろうに剣心』『ローマの休日』『私立探偵ケイレブ・ハント』など