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コクーン歌舞伎『夏祭浪花鑑』(なつまつりなにわかがみ)に出演!! 歌舞伎俳優・中村七之助さんインタビュー

5月に渋谷のBunkamuraシアターコクーンで上演されるコクーン歌舞伎第十七弾『夏祭浪花鑑』に、兄の勘九郎さんとともに出演する中村七之助さん。合同取材会で、舞台への思いを語りました。
コクーン歌舞伎第十七弾『夏祭浪花鑑』に出演する中村七之助さん

■『夏祭浪花鑑』は父との思い出がつまった作品

  

 古典歌舞伎とは違うアプローチと斬新な演出で、毎回大人気のコクーン歌舞伎。1994年に、七之助さんの父・十八世中村勘三郎丈と、演出家の串田和美氏とがタッグを組んで誕生したもので、今年5月に上演されるのは、その第十七弾『夏祭浪花鑑』。大坂の下町を舞台に、義理と人情に生きる男たちとその妻の生き様を描いた人気演目です。コクーン歌舞伎では何度も上演されてきたほか、平成中村座としてはニューヨーク公演、ヨーロッパ公演でも成功を収めてきた本作に、中村勘九郎さん、中村七之助さん、尾上松也さんほか、新しいキャストで挑みます。

  

  

「『夏祭浪花鑑』という作品は、主人公の団七九郎兵衛が祭りの最中に義理の父親を斬るなどショッキングな場面もありますし、悲劇的なお芝居なんですけれど、その反面、とても華やかで熱気がある舞台です。これまで出演したときのことを思い出すと、みんなが笑顔で、毎日がそれこそお祭りだったという思い出があります」。

  

何より「父との思い出がいっぱいつまった作品」と言います。

  

2004年には、平成中村座のニューヨーク公演でも『夏祭浪花鑑』をやりました。平成中村座がリンカーンセンターの広場に立ったときの父の横顔は忘れられないですね。そして『ニューヨークタイムズ』に絶賛の劇評が載りまして、みんなで喜んでみんなで泣いて。帰ってきてから大阪の松竹座で凱旋公演をしましたが、毎日がお祭りみたいでした。あとにも先にもあんなフェスティバルみたいな気持ちで、1か月演った公演はないですね。終演後にはみんなが街に繰り出していて、どこかの店に行けば、かならず誰かいるという感じで()。本当にすごかったです」。

  

201011月、大阪平成中村座で、最後に勘三郎さんが団七を演ったときも、思い出深いそう。

  

「その前月の10月は大阪平成中村座で『封印切』に出ていて、父は忠兵衛を、僕は遊女・梅川をやらせていただいていました。あんなにがっつりの恋人役というのは初めてで、毎日、二人でタクシーに乗って劇場に向かっていました。そして翌月が『法界坊』と『夏祭浪花鑑』。じつは『法界坊』は、うちの祖父が床にゴザを敷いて寝てたくらい疲れるそうです。疲れないように見える演目なんですけれど、本当に疲れるんですって。そんな『法界坊』と『夏祭浪花鑑』の両方を同じ日にやるというは、相当な体力が必要だったと思います。ただ、舞台に立っているときの父は、疲れている様子も見せず、客席も大盛り上がりでそれもすごいなと思いました」。

 

中村七之助さん

■お梶は、ちゃんと生きているように演じたい

 

  そんな思い入れのある『夏祭浪花鑑』。今回は、これまで勘三郎さんが演じてきた主人公の団七九郎兵衛を兄の勘九郎さんが、七之助さんはその妻・お梶を勤めます。

  

「今回、僕は初めてお梶を演じますが、正直、『僕がお梶か!』って感じです。父が団七を演じていたときは、いつも(中村)扇雀さんがお梶だったので、扇雀さんのイメージしかないんですよ。扇雀さんのお梶は、まさに『そこにいる』という感じで、芝居なのか現実なのかわからないんですよね。お梶というお役は、その存在感がバチッと出ていると、団七との関係性もよくわかるし、悲劇性も増して、いい芝居につながるお役。だから、僕も扇雀さんのように、ちゃんと生きているように見えるといいなと思います」。

  

上演されるシアターコクーンは、打ちっぱなしのコンクリートやグリーンの客席など、歌舞伎の小屋とは、まったく違う異空間。そこで1から原作を読み解き、新しいアプローチで古典歌舞伎に挑むのは、楽しみでもあり、難しさもあり。

  

2014年の『三人吉三』のときは、本当に苦しかった。黙阿弥の作品で、下座音楽をとって、七五調のセリフのまんま、節をなくすという演出で、ゲネプロの前まで何もできてなかったんです。とくにそのとき初参加だったマッティ(尾上松也)は、初日の挨拶のときに涙ぐんでいて、本当に辛かったんだろうなって思いました。僕たちは、まだ何度かコクーンに出ていて雰囲気もわかっていましたが、マッティはゼロからだったので。でも、あの涙を見たとき、僕たちの代には、この涙があって、『やっとスタートに立てたな』と思いました。

  

今回もこれまでの演出のインパクトが強いので、どう変えるのか不安はあります。とくにコロナ禍ということもあり奇抜な演出は難しい。だから今回、肝となるのは、根っこのところから台本を掘り下げて、感情がどのように移り変わっていくのか、もう一度考えていくことじゃないかと思います。特別な演出より、ハートのほうで勝負したいと。笹野高史さんなど、昔からずっと出演している人もいますので、演出の串田さんを中心に、みんなで、もう1回、頭を柔らかくして、ひとつひとつ話し合いながら新しいものを作っていきたいです」。

  

  

令和に生まれ変わる『夏祭浪花鑑』。きっとまた新鮮な刺激を私たちに届けてくれるに違いありません。

中村七之助さん
コクーン歌舞伎 夏祭り浪浪花鑑

<演目紹介>

  

串田和美 演出・美術

渋谷・コクーン歌舞伎 第十七弾

『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』

 

■日程:202156日(木)~30日(日)

 昼の部 午後1時~/午後2時~

 夜の部 午後5時~/午後6時~

 【休演】13日(木)、24日(月)

 

■劇場:Bumkamuraシアターコクーン  

 

団七九郎兵衛 中村 勘九郎

団七女房お梶 中村 七之助

一寸徳兵衛/徳兵衛女房お辰 尾上 松也

玉島磯之丞 中村 虎之介

団七伜市松 中村 長三郎

傾城琴浦/役人左膳 中村 鶴松

三婦女房おつぎ 中村 歌女之丞

三河屋義平次 笹野 高史

釣船三婦 片岡 亀蔵

  

▶詳細・チケット販売

 

写真/富田 恵 ヘア&メイク/宮藤 誠(Feliz Hair) スタイリスト/寺田 邦子 取材・文/佐藤 裕美
 
衣裳協力/NEWYORKER・BERKLEY/ともに株式会社ダイドーフォワード

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