テストジャンパーを演じて見ることができた新しい景色
新作のニュースが続々と届くたびに、次はどんな顔を見せてくれるのかと期待を抱かせてくれる俳優、山田裕貴さん。長野オリンピックを舞台にした映画『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』では、スキージャンプ団体の金メダルを支えたテストジャンパーを演じている。
「試写を観て、すごくいい映画だなと思いました。小学生のころにテレビで見た感動的な金メダルの裏に、選手が安全に飛べるように奮闘していたテストジャンパーのかたたちがいたことを初めて知って。競技が中断するくらいの吹雪の中で飛ぶのは本当に大変なことだったと思うし、きっといろいろな思いがあったはずなので、この映画を通してそれが少しでも伝えられたらうれしいです」
山田さんが演じたのは、聴覚障害があり、明るい性格でムードメーカーの高橋竜二選手。陸上トレーニングなどたくさんの事前準備が必要だったことについて、「やらなきゃいけないことがあるから大変だとは全然思わなくて、ただその人を生きるという感覚でした」と語る。
「小学校で硬式野球をやっていた時、聴覚に障害がある先輩のお父さんがいたんです。一生懸命声を出して伝えようとしている時の音を覚えていたし、撮影に入る前に高橋さんにお会いして、声の出し方やテンポなどを教えていただきました。陸上トレーニングに関しては、実際に選手のかたたちが何年もかけることを何日かでできるようになるって、無理なことですよね。でもだからこそ、とにかく集中して本気でやるのみでした。なんとかやり遂げられたのは、一人ひとりのがんばりとチームワークのおかげです。初めてスタートゲートに着いた時に、誰が飛ぶ? って聞かれて、は〜い! って一番に手をあげたんですよ(笑)。新しい景色が見たいっていう興味のほうが勝って、怖さは感じなかったですね」
お芝居の仕事の醍醐味はたくさんの人生を生きること
現在、 30歳で芸歴は10年。デビュー以来、ひとつひとつの作品にひたむきに取り組みながら、30歳が俳優としての節目になるはずという予感があった。
「30歳まで俳優をやれていたら、その先もなんとかなるだろう、ってずっと思っていました。でも誕生日を迎えた瞬間は特別なことは何もなくて、時計を見て“あ、30歳になったな”って思っただけでした。30歳になる日にひとりでいるってかっこよくない? って気持ちもあったかもしれないです(笑)。これまでの10年間はまわりの意見をすべて受け止めてきたけど、これからは自分が違うと思ったことにはノーと言ってみようと試みてみたのも、30歳になってから。まわりの人たちは困ったと思うけど、いったん自分の意見を言ってから受け入れることも必要かなと考えています」
いい俳優である前に、いい人間でいたい。だから「年齢とともにいろんな経験をして、その感情をお芝居に還元していきたいです」と語ってくれた山田さん。
「人間・山田裕貴と俳優・山田裕貴のバランスを取るのはむずかしいと感じることもあるけど、僕のお芝居を見て心を動 かされたと言ってもらえることが、自分にとって最高の幸せ。人気者になりたいからじゃなくて、いろいろな人生を生きられるからこの仕事を始めたので、これから何歳になってもずっとお芝居を突き詰めていくところは変わらないかな、と思っています」
最後に、素敵だと思う年上女性はどんな人ですか? と尋ねると……。
「年上の女性に言い寄られないんですけど、どうしたらいいですか。読者の皆さんは僕のこと知ってますか? 好きですか? って聞きたいです(笑)。真面目に熱く語ってしまうところもあるので、年齢に関係なく素の僕の話を真剣に聞いてくれる人は素敵だなって思います」
Profile
やまだ・ゆうき●1990年、愛知県生まれ。2011年に『海賊戦隊ゴーカイジャー』で俳優デビュー。主な出演作に『なつぞら』、『特捜9 』シリーズ、『ここは今から倫理です。』『青のSP|学校内警察・嶋田隆平|』、映画『あの頃、君を追いかけた』など。公開待機作に『東京リベンジャーズ』( 7月9日公開予定)『燃えよ剣』(10月公開予定)などがある