私はというと、数年前までは年に数回訪れる駅でした。惜しまれつつ閉店したレストランc'est bien(セビアン)が大好きで、時々お邪魔していたからです。
c'est bien閉店以降立ち寄ることのなくなった東長崎。その東長崎に何やら面白いカフェができたらしいと家人が言うもので、休日の朝一にお邪魔しました。
カフェの名前は「MIA MIA(マイアマイア)」。
もともとブティックだった店舗を改装した良い感じにレトロな外観のカフェ。
店内に一歩足を踏み込んだ瞬間、外国人男性から「おはよーございまーす!初めてですか?」と声をかけられました。その外国人男性が店主のヴォーンさん。
ヴォーンさんは音楽プロモーター、日本のコーヒーカルチャーを世界に発信するライター、モデル、など多彩な肩書きを持つお方。
「店内でお過ごしですか?であればちょうどあそこのカップルシートが空いています」と女性店員の方。「ラブラブさんたちどうぞ〜」とヴォーンさん。そこから私たちのあだ名は「ラブラブさん」になったのです。
と、もちろんカフェラテもサンドイッチも美味しいのですが、私の中で圧倒的に特別なカフェになったのはそれが理由なだけではありません。
正味1時間ほどの滞在にもかかわらず、その1時間で体験したことは私に新鮮な衝撃を与えてくれたのです。
それはヴォーンさんが創り上げる「場」の強烈さ。
ヴォーンさんはお客さん一人一人に話しかけ、どこからきたのか、何の仕事をしているのか、などなど会話の中でさらっと聞いて、一人一人に「名札」をつけるのです。「名札」と言っても本当の「名札」ではなくて、「このお客さんはこんな人」、「このお客さんはあんな人」というアウトラインみたいなものをその場にいる皆が共有できるようにするのです。
例えば私たち夫婦のあだ名は「ラブラブさん」、学校の先生をしている男性は「先生」、近所の常連のご婦人は「土屋さん(仮名)」などなど、その場にいる一人一人が皆に認知される、お互いに認知し合う、と言うなんとも不思議な場所・時間なのです。
そしてMIA MIAのさらなる凄さは様々なバックグラウンドの人、年齢の人がお店に入って来ること。近所のおじいちゃん・ご婦人・家族連れから、渋谷や原宿にいそうなオシャレな若者たち、外国人の方・・・。とにかく人に特定のジャンルがないのです。
そしてその様々な人たちがヴォーンさんを介して会話をし始め、繋がっていくのです。私の隣に座っていた女性2人はそれぞれ1人で来店していたのですが、ヴォーンさんを介して会話をし始め仲良くなっていたり、向こうのカウンターでは若い男性の教師とご近所のシニアなご婦人が話し出したり。
「なんなんだ!この空間は!!」。軽い衝撃と、ワクワクと、色々な感情が湧き上がって来る不思議な体験でした。
音楽というのもMIA MIAの大事な要素で、ヴォーンさんはその場のテンションやお客さんの雰囲気を見て次の曲を決めているよう。
「次の曲すごいいい曲、みんな聞いて!」ヴォーンさんの声が上がると自然と皆耳を次の音に寄せて一体感が生まれる・・・。その場にいてそれぞれの人が別のことをしているのですが、良い意味でヴォーンさんの世界に巻き込まれるのです。
他にもスタッフさんのバースデーを祝ったり、Uberの配達員さんを皆で迎えたり(Uberの配達員さんはキョトン顔でしたけれど)。めいいっぱいその瞬間・空間に居合わせた人たちで楽しみ、共有した時間でした。
体験したことへの驚きと、新鮮さと、いい場所を見つけてしまったという嬉しさが入り混じって、お店を出た後もしばらくにやけてしまったのでした。
こんな素敵なヴォーンワールド、皆さんにもぜひ一度体感してみていただきたいです。
(ちなみに・・・ヴォーンさんがかけてくれた曲の中で印象的だったのがLukas Nelsonの"Find Yourself"。その場の空気とテンションにぴったりマッチしていたのですよね。聞いてみたい方は下記リンク先へどうぞ↓)
東京都豊島区長崎4-10-1
西武池袋線「東長崎」駅 北出口から徒歩すぐ