「私は本来はベージュとか、おとなしい色が好きなんだけど、最近、ときどききれい色を着るようにしているの。どんなふうに気分が変わるか、“実験”だと思って」とのこと。
“実験”! そうかぁ。
そう考えると、トライしやすい服っていろいろあるかもしれないなと、即座に思いました。
その日先生が着ていたのは、スカートこそベージュですが、トップスは鮮やかめの赤レンガ色のニットでした。
色には温度というものがあるらしいので、着ていると実際に「どんな気分になるか」というのを感じることも出来ると思います。
または、実際にこのヴォイトレの教室ならば大きな鏡がバーンと貼ってありますし、そうでなくても、お手洗いなどで自分を目にしたときに、いつもと違う気分になれる、というのもあるでしょう。
そうか、“実験”だと思えば!
きれい色に限らず、何をするにも背中を押してくれそうな言葉です。
それからは写真に挙げたようなイエローのニットワンピースも「今日,私は実験もしているので」という気持ちで、躊躇なく着て出かけているこの頃の私です。
しかし私はそもそも、陽光さす九州出身ということもあり? きれい色にはさほど抵抗がなかったのです。特に若い頃はピンクが好きで、堂々とそのようにプロフィールにも書いていました。
ところが東京に出てきてから、ある人に「そもそも東京ってコンクリートとかビルが多くて、街に似合うのは黒とかグレーなんだよ。君のはちょっと違う」と言われ、がーん,と思うとともに、目からウロコが落ちました。
そうか・・森ではカーキやベージュのアウトドア系ウエアが素敵に見えるように。
海辺ではブルーや白のパラソルが似合うように。
東京のコンクリートジャングルでは、黒やグレーなのね・・。
だからグレーの壁の多い街に住むパリジェンヌも,モノトーンが制服なのね・・と、だんだんと”その場にそぐう色”というのに敏感になっていったのでした。
集英社に入社してからは、そもそもフレンチ系のおしゃれがDNAのファッション誌ばかり。その環境の中で毎日を過ごすわけです。
私の服はどんどんベーシックカラー化していき、今となっては一番大、大好きな色は「グレー」と「ネイビー」です。
その次が黒と白。時々ベージュ、そして年齢を重ねてからは大人のグレージュも大好きに。
ところがやっぱり、人間の本能としてなのか。
西日本出身の明るいブライトカラー好きが蘇るのか。常に「きれい色」には惹かれているのです。
人が着ているのを見ると嬉しくなるし、
誌面などでも、暗くなりすぎないように、必ずポイント的に数点入れるようにしています。
でもいざ自分が購入しようとしたり、着用しようとする時はやはり、日々ベーシックカラーに手が伸びることが多く・・・。
安心感がとてつもないですし、それこそ、都会のジャングルに身を隠しながらも「さりげなくおしゃれ」が体現できる(ような気がする)からですね。
でも、久しぶりに「きれい色」の服が手元に届きましたよ。
そして、ヴォイトレの先生の何気なく放った、「実験だと思って」という、素晴らしくきっかけになる言葉が刺さったり・・で、
最近、「私は研究しているんだから、いいのよ」という思いで、きれい色を堂々と身につけて出かける日が週一以上のペースで出現しています。
“実験”、いいですよね。
チャレンジ精神なんて大げさな言葉ではなくて、「ちょっと今日はね」くらいの気持ちでトライできる言葉。
それでいて非常に前向きで冷静さもある言葉です。
まだまだ“実験”していないもの、たくさんあります。“実験”をこれからも楽しみたいと思います! (ウフフ)