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ヤン ヨンヒ監督が描く運命に抗う愛の力、『スープとイデオロギー』

ヤン ヨンヒ監督の国内外で数々の賞に輝いた『かぞくのくに』を映画館で観たときの衝撃は、いまでも薄れることはありません。あんなに涙腺崩壊したのは久しぶりだったのと、監督の胸をつく演出の力に圧倒された作品でした。監督の約10年ぶりとなる待望の新作『スープとイデオロギー』が6月11日に公開されます。タイトルを見ただけでもハッとするのに、SNSで撮影・編集中の監督のエピソードに触れるたび期待の高まったドキュメンタリー。予想をはるかに超える、じっくりと味わい噛み砕きたい家族の愛を描く映画です。
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『かぞくのくに』の公開まえに、軽井沢の知人宅で休暇中のヤン ヨンヒ監督とヤン・イクチュンさん(『息もできない』監督・出演、Netflix「地獄が呼んでいる」出演など)とご一緒する機会があり、遅ればせながら才能の塊のおふたりの作品を知ることとなりました。作家の平松洋子さんの『スープとイデオロギー』のレビューに「本作は、過去二作の映画『ディア・ピョンヤン』『かぞくのくに』にたいする渾身の返歌であり、謎解き」とあり、激しく共感してしまいました。

私にとってチェジュ(済州)島は、20年ほどまえに初めて訪れた韓国。女性誌の旅取材で、新羅ホテルに滞在し、日本語の堪能なタクシーの運転手さんにあちこち案内されすっかり魅了された島です。美しい海、石垣、雄大な景色と馬、柑橘ハルラボン、アマダイの干物にアワビのお粥、焼きタチウオ、黒豚、カラフルな五日市、、、。宝物のように美しい島に、その後も旅取材やプライベートで幾度も通い、2019年秋には路線バスと徒歩で一周したことも。2018年、2019年に、ヤン監督が『スープとイデオロギー』のチェジュ島での撮影中に行ったという、地元出身のスタッフのお勧めの巻き貝の鍋の店を監督のSNSで知り、あまりにも気に入って2度足を運んだほど親しみのある島。大阪で暮らしてきた監督のオモニ(母)が18歳の頃に体験した、済州四・三事件のことは、うっすらと聞いたことがあったけれど、いまでは若者の集うカフェやレストランで賑わうエウォルが、まさに最も犠牲の多かった村だったことを知り衝撃でした。人間の憎悪は、いつになったら無くなるのでしょう。愛に満ち、愛に気づく、人の温かさが愛おしくなる作品です。監督も、このタイトルに「思想や価値観が違っても一緒にご飯を食べよう、殺し合わずに共に生きよう」という思いを込めたといいます。「映画が世界に対する理解や人同士の和解に繋がると信じたい、私の作品がポジティブな触媒になることを願っている。」とも。

撮影監督は、加藤孝信さん、編集はベクホ・ジェイジェイさん、音楽監督は、『タクシー運転手 約束は海を越えて』『KCIA 南山の部長たち』などで知られるチョ・ヨンウクさん。チェジュ訛りなど吹き替えや衣装といった細部まで、こだわりの賜物というアニメーションも素晴らしいです。そしてエグゼクティブ・プロデューサーは、出演もしている監督の夫である荒井カオルさん。「兄 かぞくのくに」(ヤン ヨンヒ著・小学館)も是非合わせて読んでみてください。
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監督・脚本・ナレーション:ヤン ヨンヒ  撮影監督:加藤孝信  編集・プロデューサー:ベクホ・ジェイジェイ 音楽監督:チョ・ヨンウク アニメーション原画:こしだミカ アニメーション衣装デザイン:美馬佐安子  エグゼクティブ・プロデューサー:荒井カオル 製作:PLACE TO BE 共同制作:navi on air 配給:東風 韓国・日本/2021/日本語・韓国語/カラー/DCP/118分  6/11㊏より[東京]ユーロスペース、ポレポレ東中野、[大阪]シネマート心斎橋、第七藝術劇場にて ほか全国の映画館で順次公開!
ヤン ヨンヒ監督が描く運命に抗う愛の力、『スープとイデオロギー』_1_7
桂まり●かつらまり 韓流予報士(?)。温泉保養士。「SPUR」や「eclat」などで、トラベル、フード記事など担当するライター。趣味は各国で料理教室に行くこと。「泣いて笑って癒される韓流ドラマのお勧めを不定期で紹介します!」インスタグラム@marikatsura

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