上演すると聞いて
慌ててチケットを取って、初日に出かけてきました!
(公演期間は、東京の新国立劇場で6月12日まで、
その後、6月18・19日に群馬・高崎芸術劇場)
オリジナル全幕作品で、
ロイヤルバレエのYouTubeに大量にアップされている
抜粋シーンやリハーサルを観るかぎり
めちゃくちゃ面白そうで、
いつか絶対生で観たいと思っていた作品。
本当はロンドンで観るのが夢だったけど
そんなのいつになるか分からないうえに、
上演許可をもらっているバレエ団が世界で6つだけ、
しかもアジアではこの新国立劇場バレエ団だけという
希少な作品。
このチャンスを逃したら、
一生観られない可能性も充分あるので
奮発してS席を買いました!
今世紀もっとも脂が乗っている、英国人の振付家。
やべえバレエオタクの私は、
30年前から動向を追い続けていて
というのは、この人、
1991年にあの若手ダンサーの登竜門とされる
「ローザンヌ国際バレエコンクール」で
ぶっちぎりの金賞を獲っているのですね。
ローザンヌは今でもクラシックバレエ部門と
コンテンポラリーダンス部門の
両方で評価されるのですが、
そのときウィールドンは、コンテンポラリー部門で
既に自分で振り付けした作品を踊っていて、
「将来は振付家になりたい」と言っていたんです。
17歳にして!
だから、その後プロのバレエダンサーになったものの、
振付に集中するために早々にダンサーを辞めたと聞いて、
あ~あの子、前から振付家になりたいっつってたもんね、
と、親戚のおばちゃんのような気分になったのでした。
(↑誰?)
『ラ・シルフィード』という作品を踊ったのですが、
それも本当に素晴らしくて、
私は、同じ作品で、
この時のウィールドンを超える踊りを
今のところ観たことがありません。
YouTubeにも載っていないレア動画ですが、
ストーカー根性で見つけてきたので、
ぜひご覧ください↓↓↓
英国ロイヤルバレエに依頼されて創ったのが
この『不思議の国のアリス』。
英国人振付家が、英国最高のバレエ団と創る新作として
『不思議の国のアリス』以上の題材があるでしょうか。
あれに匹敵する新たなものを創るのは
至難の業だと思うのですが、
映画によって定着している世界観を壊すのではなく、
むしろその世界観を増幅させるような演出をしていて、
それがまず凄いと思いました。
模倣でもパロディでもなく、
逆にオリジナリティや斬新さを追求しすぎて
昔からのファンを置き去りにするでもない、
そのさじ加減が絶妙。
ウサギ穴に落ちたり、自分の涙で溺れたり、
という荒唐無稽な展開が多いけど、
巨大な舞台装置と映像を駆使することで
不思議の世界を、自然に(本当に自然に!)
表現しちゃってるのにもビックリ。
知らない音楽って、けっこう聴きづらかったりするけど
作曲家のジョビー・タルボットは
映画やテレビの音楽を多く手掛けている人らしく、
ストーリーを表現したり、
観客の高揚を煽るような音楽の作り方は
お手のものみたい。
これ以外の音楽は考えられない、というほど
『アリス』の世界にピッタリでした。
中でもすぐに首を斬りたがる「ハートの女王」が最高。
クラシック・バレエの傑作『眠れる森の美女』の
名場面をパロったシーンがあるのだけど、
もともと初演でハートの女王に抜擢されたダンサーは
英国ロイヤルバレエのプリマバレリーナなのに
(たぶん背が高すぎて)
一度も『眠れる森の美女』の主役オーロラ姫に
キャスティングされたことがなかったらしい。
「だからこのシーンを踊れて夢が叶った」
と前にインタビューで応えていて
やることがニクいぞ、俺のウィールドン!ってなった。
荒唐無稽な不思議の国を旅したような達成感。
たいていの芸術作品がオンラインで観られる
便利な世の中だけれど、
舞台の上で、生身の人間たちが生み出す
作品の凄みを存分に体感できた公演でした。
東京・新国立劇場では6月12日まで、
その後は群馬・高崎芸術劇場で18・19日の二日間と
期間がだいぶ限られているうえに、
すでにチケット完売日もありますが、
チャンスがあれば本当にオススメ!
目の前で繰り広げられる踊りと色彩を
観ているだけでも楽しいし、
イギリスらしく笑いを誘うシーンも多くて
バレエを見慣れない人でも絶対楽しめると思います。
抜粋シーンやリハーサルのリンクも載せておきますね。
ウィールドン自ら指導している動画もあって、
興味深いです。