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「リハビリと退院」【ケビ子の乳がん・ニューライフ vol.14】

第14回目 「リハビリと退院」近所のコメダ珈琲にはナポリタンがなかったよ。

病院生活にも慣れてきて、食事の不満も少し出てきたり個室ライフをエンジョイしようと思っても人が絶えずやってきて当てがはずれたケビ子。

乳がん・ニューライフ (第13回はこちらから)

第14回はリハビリといよいよ退院。

【三つ編みが左右ほぼ同じに編めるようになった】
先生は手術前に言っていた。
「自分は整形外科の先生にしこたま指導され、乳がん手術でへこんだところを可能な限り自然な形に戻せるよう注意しているんだぜ~」と。
その為に私のふくよかさは今回とても良かったねと妙な褒め方をされた。
要するに補填しやすいように材料があるよね、平たく言うと余った肉がけっこうあるよね、と言われた。普段であればムキーーーとなるところだが「あら、そう?まあ!」とこのわがままボディに初めて感謝した。


部分的に切除されてへこんだ胸の欠損部分を脇の肉で補填までしたので、しこりの場所とセンチネルリンパ生検で切った箇所(このあたりから胸に補填したらしい)の計2か所切ったのだが、数日経ってみると切った痛みこそあるがそれ以外のしびれや不快感、吐き気や内部からの痛みは感じない。
要するに包丁で指を切ったような知っている傷みを感じている、という程度である。


病院の消灯時間は21時半と早い。個室なので多少緩くてもOKと言われてはいたが不思議なもので21時半を待たずに寝ている。したがって朝も早くに目が覚める。今日は6時少し前に目が覚めて頭上のモニターは6時に電源が入ることを確認した。


早朝、起きてカーテンを開けてから歯磨きや洗顔、体をふくなど身支度をしてからドライシャンプーをして髪を三つ編みにする。手術翌日は左の三つ編みがローゲージで不格好だったが今日はもうかなりのハイゲージでしっかりと編めている。左腕が動くようになってきている証である。


「リハビリと退院」【ケビ子の乳がん・ニューライフ vol.14】_1_1
【リハビリで知る先生のすごさ】
朝食を済ませ、お盆を下げに来るのを待つ間に主治医が来た。今日は外来があるからと外来前に顔を出してくれた。マメな先生である。
「今日はあとでドレーンを抜くからね、それを抜いたら明日退院だよ。いいかな?」と予定を告げた。


いよいよ明日は退院か。
手術後は午前中が忙しい。度々の検温と血圧、血中酸素測定の他にリハビリの先生がやってくるからだ。手術翌日に渡されたリハビリメニュー表を律儀に予習復習している優等生なもんで、退院まではこれができるようになりましょうと指定された腕を上げ下げする6つの動きを完全ではないにせよできるようになった。


「すごいですね!もうこんなに腕が上がって!」これは私が優秀というよりは先生の手術が上手だったためにダメージが少なかったに過ぎないのだが、褒められることに飢えていたのか「すごいですね」と言われるとその気になって腕を上げる。
「すごいですね」と言われて酒を一気飲みするお調子者のようだ。


リハビリの先生は教えてくれた。
「あの先生は手術が上手だから術後にすんなりと腕が上がる患者さんが多いです」
「と言うと他の先生は違う状況ってことですか?」ケビ子刑事はたたみかける。
「うーん、前の先生はそうですね、しびれが長引く方もいましたし、そういうこともありましたね」
へ~!手術する=同じクオリティが担保されるわけではないのか。リハビリにもこうして影響があるのかと驚くばかりのケビ子である。


【ドレーンを抜いていよいよ退院】
リハビリをして気分が良くなっていたところ、主治医が再び登場。リハビリの先生に声をかけながら「ドレーンを抜くからね」という流れとなった。


ベッドに横になり「痛いよ、いい?いくよ?」とデコピンを待ち受ける気分で覚悟を決めるが大して傷みや管が抜ける衝撃がない。看護師に「もう抜けましたか?」と聞いたところ「はい」というのでもしかしたら私という戦うボディは割と痛みに強い方なのかもしれない。


「ドレーンを抜いたけど、穴は明日には塞がると思うよ。退院しても入浴はしばらく我慢でシャワーね」と言われてがっかりしたが毎日シャワーを浴びられる環境でさえありがたいのだ。
「管を抜いたけど体液が出るようだったら絆創膏を貼ってね」と主治医。そんなライトな感じで良いのかと不安になるほどだ。
滞在時間5分程。「退院の時間はあとで看護師が伝えにくるから」と言いながら主治医は部屋を出て行った。


退院か。明日の朝早い方がいいなと希望は伝えたがどうなるか。
献立表を見てみると明日の昼はカレーの予定。
手術日にすき焼き、退院直後にカレーとは希望が通った代償としてはなかなか意地が悪いではないか。
気にはするまい。退院したらナポリタンを食べに行きたいのだと夫に毎日訴えていた。


【いざ退院!】
前日に退院の希望時間を聞かれたので早ければ早いほど助かります。と回答した。
助かります、というのは迎えにくる夫の仕事の妨げを最小限にしたいとの気持ちからだったが、幸い10時に退院が決まった。


9時半にはナースステーションの前に来てくれた夫。
入院中も一日も欠かさずビデオ電話をしていたので毎日顔を見ていたのだが、やはり実物は暖かい。授業参観日に毎日見ているはずの家族が見たくて何度も振り返るようなああいう気持ちで夫のところに向かった。


退院日の早朝はいつもと変わらず検温、血圧、血中酸素を図り、6時半ごろにほうじ茶のサービス、7時に朝食、外科医の回診、主治医の回診、リハビリがあった。最後の日は薬剤師が初日以来再登場し、薬をくれた。


退院時間の10時直前に事務担当者が書類を持ってきて支払い準備が完了しているので受付で支払い可能であることと、最後に名前と血液型を書いたリストバンドをカットして娑婆に釈放された。お勤めご苦労さんである。


夫と受付に行き、支払いを済ませた。
初日に頭金を入れていたので残りの額を払う。
個室だったので、差額が出るがそれでもあの快適さを思うと満足いく滞在だったと言えよう。保険給付申請に必要な書類はどこで頼めばよいのか確認し、駐車券を貰って病院を出た。


私の車はアバルト595コンペティツォーネという小型ながらスポーツカーである。
見た目はチョロQのようなかわいらしさがあるのに、エンジンをかけると爆音いななき、走りもワイルドで、普通の道路がオフロードかと思うようなワイルドな走りを楽しめる。街中がパリ・ダカールラリーになるようなそういう車である。
夫が「君の車で迎えにいくよ」と気を利かせてくれたのはうれしかったが、些細な揺れや振動が傷口に響き、娑婆の洗礼を受けた。
シートベルトも胸元を通すため、車はしばらくご用心である。


向かうは自宅と病院の間に位置するコメダ珈琲。
入院してからずっと食べたくて食べたくて震えていたナポリタン。
コメダ珈琲のナポリタンが美味しいのだという情報を得て、夫に伝えていた。伝えた翌早朝にコメダ珈琲に行きメニューの下見をしてきたという用意周到な夫である。
下見した夫は「あそこのコメダにはナポリがなかったよ」と残酷な結果を伝えてきたのだが、いやいや貴様が行ったのは早朝だから昼のメニューにはあるだろうと駄々をこねて来たわけなのだが、やはりナポリタンは取り扱っていない店であった。


そうなると途端に頭がかゆくなる。家に帰りたくなってしまった。ナポリタンがないのなら早く帰ってシャワーを浴びたい。髪を洗いたい。そう思うのも仕方がない食い意地の女である。
仕方なく、しかしこれはこれでおいしそうだとミックスサンドを平らげて自宅に戻った。モーニングサービスでトーストもセットだったので退院直後からフルカーボ、フルグルテン祭りを楽しんだ。
娑婆は最高である。



つづく

*次回【Vol.15】は7/8公開予定です
※この記事はケビ子さんの体験に基づいて書かれており、2021年12月現在の情報をもとにしています。
治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありません
カモチ ケビ子
43歳で結婚、47歳で乳がん。
心配性の夫、奴さん(やっこさん)はなぜか嬉しそうに妻の世話を焼いている
Instagram(@kbandkbandkb)ピンクリボンアドバイザー(初級)資格保有

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