「劇場が一体になる時。 緞帳が降りる時。 舞台が幸福そのものです」
みんなのエネルギーと 笑顔が結集する舞台が、 最高の幸福の場所です
そんな朝夏さんの幸福時間は“舞台の上の時間”。その幸福時間はいろいろな種類があるのだそう。
「劇場が一体となって、舞台と客席の境界がなくなる時があるんです。宙組トップスターとしての初めての作品『TOP HAT』で、その幸福感を感じて、〝私、やっていけるかも〟と思ったことを覚えています。『エリザベート』の時は、やりとげた幸福感。日本上演20周年という節目の公演の重責もありましたので、千秋楽の日、無事に全公演を終え、緞帳が降りた時の安堵感と充実感はとても大きかったです」
そして、舞台で組のみんなと高揚感を共有する時もまた幸福な時。
「今日の公演でも感じたところです。ショーの組のほぼ全員が出る場面で、コーラスもダンスもみんなのエネルギーがいっせいに舞台の中央の私に向かってきて、その迫力に感動します。そして、ショーの終盤のパレードでは、みんながすごい笑顔で待っていてくれる。こんなにも幸せなことはないと思います」
“宙組の太陽”と呼ばれ、リーダーとしても慕われてきた朝夏さんだが、今年11月で退団する。
「太陽は明るく照らすだけでなく、止まらずに動いて、周囲にエネルギーを伝えるというイメージがあります。私も動き続ける自分の姿で下級生に何かを渡せればと思います。
宝塚歌劇のモットー、“清く・正しく・美しく”の前に、あまり知られていないのですが“朗(ほが)らかに”がついていて、私はそこが好きなんです。今の時代、朗らかにいるのはむずかしいことかもしれませんが、だからこそ、大事なことだと思います」
退団公演は、ロシア革命前夜を舞台にした物語、『神々の土地~ロマノフたちの黄昏~』。
「これまで目ざしてきた、“あるべきものがすべてあって、むだなものがない”というところを、千秋楽の日まで追究していきたいと思います。
朝夏まなとの集大成として、最高の舞台をお届けしたいと思いますので、ご期待ください」
あさか・まなと
●佐賀県出身。2002年花組に配属。12年、宙組に組替え。15年、宙組トップスターに就任。主な出演作に『Shakespeare~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』『エリザベート』『王妃の館』など