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「中庸でその人らしさが香る余白を大事にしたい」 YLĒVE デザイナー 田口令子さん 【私のおしゃれフィロソフィ Vol.3】

多くの人たちに支持されるブランドには理由がある。それはデザインだけにとどまらず、作り手の思いが息づいているかどうか。6月から始まった新連載では、ブランドを牽引するデザイナーやディレクターにその思いをインタビュー。連載3回目は、YLĒVEの田口さんに話を伺った。
YLĒVE デザイナー 田口令子さん
服の基本を大切にしつつ、素材と質感、シルエット、仕立てへのこだわりを徹底しながら、今の気分を軽やかに表現するYLĒVE。ブランドの立ち上げからデザインを担う田口令子さんに、物づくりに向き合う姿勢を取材した。
______デザイナーとしてのキャリアを教えてください。
仕事を続けていると趣味嗜好ややりたいことが自分の中で変化していくことを知っていたので、転職を経験して「やりたいこと」と「チャレンジしたいこと」を探ってきました。YLĒVEにかかわる前はトラディショナルなアイテムを扱うセレクトショップでオリジナルのデザインを担当していました。ここで培ったベーシックな物づくりに対する真摯な姿勢に加えて、バイイングされた世界の名品、さまざまな服の基本やルーツに触れることができたのは大きな経験でした。
______新ブランドの立ち上げはどのように進んだのでしょうか?
小さなころから自分で作ったものを自分で着たいと思っていましたが、ブランドを立ち上げるなんて考えたこともなかったですね(笑)。縁あって弊社に転職して約1年間、自分の服づくりに対する考え方や価値観を掘り下げることをひたすら繰り返し、コンセプトを立ち上げるという初めての作業に没頭しました。普段から何かを見たり触れたりしてはこれが好きとか、いいなと思うわけですが、それが「なぜ好きなのか」、「なぜいいと思うのか」まではなかなか考えませんよね。そこを論理的に考えて突きつめるということを徹底してやってみたんです。
______哲学的な問答ですね。そこから見えたものは?
洋服にはシンプル、ベーシック、オーセンティックといった「用の美」があるのに対して、トレンドや「破の美」といった真逆な顔も持っています。そしてロジカルになりすぎて凝り固まってしまっても、トレンドを追いかけ続けても疲れてしまいますよね。どちらかに偏りすぎるのではなくちょうどいいバランスの真ん中にあって、ベーシックだけれどもそのときの気分のようなものと自分らしさが表現されていることが私にとっての理想。「中庸であってその人らしさが感じられる、余白のある服」という考え方に行きつきました。

アーティストや建築、何でもいいのですが、「好き」なものを並べてみるとそれぞれは別のジャンルに属していても、マインドというか根っこの部分は案外イコールだったり近しいのだと気づけたのも貴重な体験でした。
______ YLĒVEへの落とし込みで大事にしたことは?
今までもいい素材で素敵な服をつくる機会に恵まれてきましたが、自分が実際に着るのは日常の服。こだわり抜いて製作したフォーマルウェアなどの非日常の服は、ほとんど手元に残っていないことに気がついたんです。であるならYLĒVEでは、きちんとつくられた背景の見える日常の服を作りたいと思い、私の中にあるトラディショナルというベースをもとに、「テーラリング」「ワーク」「ベーシック」「シーズン」という4つの要素で構成することに。
「テーラリング」に代表されるのは、ゆとりを大事にしたジャケットやシャツ、トラウザーなどで、メンズのパタンナーに依頼してメンズ服のファクトリーで作っています。ミリタリーやワークウェアをベースにした「ワーク」は、少しデザインをプラスしたり色や素材や女性らしさを吹き込むように意識しています。「ベーシック」は、素材やパターンにこだわって。「シーズン」では今の気分を表現するとともに、手仕事や服の構造を再認識する服づくりを心がけています。
女性はその日の気分できれいめに決めたい日もあれば、カジュアルでいたい日もあります。それぞれ成り立ちが異なる4つの要素をミックスすることで、皆さんのおしゃれに寄り添うことができたら嬉しいですね。
YLĒVE デザイナー 田口令子さん
______物づくりのために続けていることは?
不思議なことに目の前のシーズンの仕事をしながら、これがあったらいいな、というものを考えているようで(笑)。春夏を手がけながら「これは次の秋冬に取っておこう」ということもよくあって。先を見ているというより、無意識のうちに並行して考えているのかもしれませんね。
気になることがらを写真やメモに残したり、いいなと感じた色や素材のかけらを貯めておくようにしています。携帯や箱の中に貯まった「好き」や「かわいい」をときどきのぞいてみると、いつの間にかそこからムードが立ち上がったり、ポイントが見えてきたり。最初は小さな断片でも、集まることで私の中のモヤッとしていた輪郭が見えてくるんです。これは昔から続けていて、仕事の中で一番好きな作業かもしれません。まだ私の中だけにしかない、スタッフと共有する前の密かな楽しみというか、醍醐味でしょうか(笑)。
______スランプの乗り越え方は?
とにかくしっかり考え抜きます。周りに相談することもありますが、違う視点を知ることで自分の中の感覚的なところがあぶり出されたり、結局、答えは自分の中にあるのかと納得したり。まぁまぁ、という着地はしないので、いつも試行錯誤しています。
______ 今後のYLĒVEに思うことは?
今の時代、おしゃれを一番楽しんでいるなと感じるのがマリソル世代の人たち。若い頃からいろいろな服を着て、ベーシックの良さも知っていれば時代の空気感の取り入れ方もよくご存じですよね。それは歳を重ねるにつれ、おしゃれのチューニングが上手にできるようになったからだと思うんです。YLĒVEも継続することで大人の方たちに信頼いただけるブランドに成長していけたら嬉しいですね。
2022年の春夏からメンズアイテムが加わったことで、田口さんの世界観が広がりを見せるYLĒVE。9月1日(木)には、初の旗艦店もオープン。ますます目が離せないMy Dear Brandになりそうだ。
<今日のスタイル>
YLĒVE デザイナー 田口令子さん
そろそろ夏服に飽きてくるこの時期は、構築的なワンピースで着こなしにカツを。「肌離れのいいサラッとした素材は、起毛をかけたコットン。袖のフォルムを強調しましたがカジュアルにも着られるようデザインしました。ニュアンスのある黒は、小物次第でさまざまなシーンで活躍してくれます」。
<推しアイテムをCHECK>
  • スリーブレスジャケットと白シャツ、トラウザーのセットアップ

  • 透け感ニットとキャミワンピース

(左)袖のないジャケットとパンツは、ハリと上品な光沢のあるニュージーランドウールを使用。セットアップで白シャツと合わせてマニッシュに着こなしたい。スリーブレスジャケット¥75,900・シャツ¥33,000・パンツ¥41,800

(右)秋一番のおすすめは、透け感のあるアルパカ混のニットとナイロンストレッチのキャミワンピースの重ね着。素材やテイストの違いをあえてレイヤードすることで、着こなしにニュアンスが生まれる。ニット/¥31,900・キャミワンピース/¥28,600
  • ラップ風ストレートスカート

  • 球体モチーフのリング、ネックレス、ピアス

(左)起毛をかけてヴィンテージ感を表現したとろみ素材のラップ風スカート。甘さを抑えつつ素材やリボン使いで動きが出るIラインは、冬はモヘアのニット、夏はTシャツなどと合わせてオールシーズン活躍させて。¥30,800
(右) 2022年春夏からオリジナルジュエリーも仲間入り。オリジナルで開発したフィニッシュ加工で、シルバーもゴールドも長年愛用していたような風合いに。シンプルなデザインが素敵。ネックレス(チェーン/70cm)¥14,300・ペンダントトップ¥24,200・リング(シルバー)¥27,500・リング(ゴールド)¥29,700・ピアス(シルバー)¥12,100・ピアス(ゴールド)¥14,300
9月●日にオープンする旗艦店のイメージ画像
YLĒVE NEWoMan SHINJUKU

東京都新宿区新宿4-1-6 NEWoMan新宿店 4F
☎03-6384-1580( 9月1日より開通)

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