働く40代を応援!新時代のEC連動メディア

口ぐせは「芸人たるもの」。何かと空回りしております。

職業:美術館職員
My favorites:アート鑑賞、宝塚鑑賞、建築鑑賞、K-POP鑑賞、とにかく鑑賞。

昨今はおしゃれ迷子ですがなんとか生きています。
猫、夫、自分の3つの生命体で一つ屋根の下に生息。酒は飲めないが四文屋にいがち。

身長:168cm

私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ @ 東京都現代美術館 分かり合えない他者を排除した結果生まれるものは何か?

いつから、分かり合えないことが、許せなくなったのか。
ごきげんよう、皆様。

秋の気配に乗りうっかり夜ご飯に鍋を囲んだところ、汗だくに。まだまだ油断なりません。9月に騙されない。そんなある日、東京都現代美術館で行われている展覧会「MOTアニュアル2022 私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ」を鑑賞しました。10月16日まで。
MOTアニュアル2022 私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ
この展覧会の骨子は、大久保あり、工藤春香、高川和也、良知暁の4名のアーティストそれぞれが「時代や社会から忘れられた存在にどのように輪郭を与えることができるのか」という問いかけを元に作品を通じて表現することだといいます。

4者、異なるアプローチで導き出す自身の社会への問い、違和感、心の奥底にあるものを掘り起こす作業が見て取れます。彼らが与えてくれる問いかけに向き合うことで、自分自身がどのように「時代や社会から忘れられた存在」である「わかり合えない他者」と関わりながら生きていくのか、考える機会を鑑賞者に与えます。

私が最も印象に残ったのは展覧会のオープニングをかざる工藤春香のインスタレーション《あなたの見ている風景を私は見ることができない。私の見ている風景をあなたは見ることができない。》。

2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件を題材としたインスタレーションは、なぜこの事件は起きたのか、問題はどこにあったのかを私たちに投げかけます。

容疑者は事件の動機を聞かれ「世の中のためにやった」と発言したことは記憶に新しいですが、この発言に対してSNS上で「(犯人の気持ちが)わかる」「責められない」といった発言が少なくなかったことも一部報道されました。この意識はどこから来たのか。なぜ、「生まれてきてくれるだけで良い」と思えなくなったのか。

会場の中心にはS字型の大きな年表が宙を舞います。片面には旧優生保護法を中心とした障害に関する法律などの歴史を、片面には障害者たち当事者運動に関してまとめた年表があり、表裏一体となっていることを感じられます。
年表の中央には、障害者施設の共有スペースが再現されている。工藤春香《あなたの見ている風景をわたしは見ることができない。私の見ている風景をあなたは見ることができない》
年表の中央には、障害者施設の共有スペースが再現されている。工藤春香《あなたの見ている風景をわたしは見ることができない。私の見ている風景をあなたは見ることができない》
工藤春香《あなたの見ている風景をわたしは見ることができない。私の見ている風景をあなたは見ることができない》
工藤春香《あなたの見ている風景をわたしは見ることができない。私の見ている風景をあなたは見ることができない》
旧優生保護法(障害児や成人した精神障害者や知的障害者には、本人の同意が無くても優生手術(強制不妊手術)を認めるとした法律)。当事者に知らせずに行われた不妊手術。当事者たちだけが問題意識を持てばいいわけではないはずです。では誰が声をあげるべきだったのか?

生まれていい命と、生まれてはいけない命があるのか。
生んでいい人と、生んではいけない人がいるのか。

旧優生保護法は改正され、今は母体保護法と名称が変わりました。しかしこの法律にもまだ課題は山積しています。今の社会を生きる私たちすべてにこの歴史への責任があるのだと、感じずにはいられない展示でした。
工藤春香《あなたの見ている風景をわたしは見ることができない。私の見ている風景をあなたは見ることができない》
工藤春香《あなたの見ている風景をわたしは見ることができない。私の見ている風景をあなたは見ることができない》
他、大久保あり、高川和也、良知暁という3名のアーティストのインスタレーションもかなり鋭い切り口が感じられ、どうにも書きたいのですがここでご紹介するとスクロール何回させることになってしまうのかわからないので、ひとまずこれにて……。
私の偏った見方に惑わされず、マリソル世代の皆さんそれぞれの視点でみていただきたい、素晴らしい展示でした!
会期:7月16日〜10月16日
休館日:月(7月18日、9月19日、10月10日は開館)、7月19日、9月20日、10月11日 
開館時間:10:00~18:00(展示室入場は閉館30分前まで)※最新情報は公式ウェブサイトにて要確認 
会場:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1
電話番号:050-5541-8600
料金:一般 1300円 / 65歳以上・大学生・専門学校生 900円 / 中高生 500円 / 小学生以下無料

Shopping News トレンドがわかる、買える!

AND MORE

What's New 新着記事

AND MORE

Feature 編集部のおすすめ記事

×

この記事をクリップしました!